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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(25)

[第25回]日本における感染症へのひとつの形―感染症コンサルタントによるプログラム介入による戦略④―

岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授

(初出:J-IDEO Vol.5 No.3 2021年5月 刊行)

はじめに

 前回は,「感染症コンサルタントによるプログラム介入による戦略 ③」として,介入する「アウトカムとデータ収集の方法」,そして「統計解析の手法」について解説しました.私が行った介入の主要アウトカムは,「介入病院の抗菌薬の感受性を観察し,介入の効果としてその改善を評価すること」にあります.介入の効果を比較する対照群を置く必要があるのですが,それはJANISのデータを使用し,この国内データと比較して改善していることを示そうとした手法をとった流れを説明しました.また,そのために準実験的研究デザインである因果推論のDID(different-in-differences)デザインアプローチを採用したことを解説しました.介入プログラム導入前と導入後の2つの異なる期間を比較し,介入プログラム導入前は,JANISのデータにみられるのと同じような薬剤耐性菌の減少率であったと仮定し,「私が介入するプログラムを導入することで,耐性菌の減少率が加速することを想定した」という手法になります.
 さて,今回は,その具体的な介入の結果について解説しようと思います.
コンサルト4病院の介入による耐性菌減少結果
 介入病院と日本全体の黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合の時間的推移を比較しました[図1].介入プログラム前は4病院と日本全体で同じ減少傾向だったと仮定し,介入プログラムを開始してからMRSA率の減少が加速したことがDIDデザインで示されました.4つの病院すべてが減少加速傾向を示し,そのうち3つの病院では有意な加速がみられました.たとえば,介入プログラム前の病院1の減少率は年間1.42%であり,2014年以降はさらに年間1.50%加速しているという結果になります.

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