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抗菌薬選択チェックメイトへの道(11)

抗菌薬選択チェックメイトへの道(11)
[第11回]治療に対して全然フレンドリーじゃない菌
山田和範 やまだ かずのり
中村記念南病院薬剤部係長


医師 「4日前に回復期リハビリテーション病棟に転院してきた患者さんが昨日38.9℃の発熱があり,本日14:00の検温でも38℃の発熱を認めています.尿路感染症を疑っていますがおすすめの抗菌薬ありますか?」
薬剤師 「尿路感染症疑いですか.各種検査値や臨床症状を確認させてください.後ほど推奨抗菌薬を含めて連絡いたします」
医師 「ありがとうございます.患者さんのバイタルは安定していて,発熱だけがみられる状態なんです」
薬剤師 「そうですか.発熱だけだと鑑別が絞りきれませんね」
医師 「一応,尿培養と血算,生化学,尿一般検査はオーダーしています.呼吸器症状の悪化は特にみられないので痰培養は実施していません」

 早速,当該患者が入院している病棟で,診療録および検査結果を確認しました.

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コンサルト時現症
53歳,女性,身長162cm,体重85kg
主訴 発熱
入院からの病歴 2ヵ月前に肺炎,CO2ナルコーシスにてA病院に入院.一時挿管,人工呼吸器の管理を行うためB病院へ転院後,経過良好のため人工呼吸器離脱.下肢エコーにて左大腿に血栓を認めたため,アピキサバンが投与開始となった.4日前に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院となる.
既往歴 高血圧症,糖尿病,統合失調症(32年前,C病院通院中)
アレルギー歴・副作用歴 なし
飲酒歴 機会飲酒
喫煙歴 あり

検査結果(コンサルト時)
血液検査
WBC 12,600/μL, Hb 14.9 g/dL, Hct 45.8%, Plt 13.8×104/μL, Na 140 mEq/L, K 2.8 mEq/L, Cl 102 mEq/L, BUN 9.1 mg/dL, Cr 0.75 mg/dL, T—bil 0.8 mg/dL, AST 19 U/L, ALT 24 U/L, γ—GTP 25 U/L, CRP 9.68 mg/dL
胸部単純X線 明らかな浸潤影なし[図1]

[図1]胸部単純X線写真(立位)

尿一般検査
pH 6.5,WBC 10—19/HPF,潜血(±),
蛋白(±),尿糖(-),細菌(+)
尿グラム染色所見
白血球をわずかに認め,グラム陰性桿菌中型(GNR—M)が散見された[図2,3]

[図2]尿グラム染色所見(起因菌推定) 100倍鏡検


[図3]尿グラム染色所見(起因菌推定)1,000倍鏡検

内服薬服用歴
・スボレキサント錠(20 mg)
 1回1錠 1日1回就寝前
・リスペリドン錠(1 mg)
 1回2錠 1日1回就寝前
・ジアゼパム錠(2 mg)
 1回1錠 1日2回朝夕食後
・ビペリデン塩酸塩錠(1 mg)
 1回1錠 1日2回朝夕食後
・アピキサバン錠(5 mg)
 1回1錠 1日2回朝夕食後
・L—カルボシステイン錠(500 mg)
 1回1錠 1日3回毎食後
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