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微生物検査 危機一髪!(22)

[第22回]Candidaの同定をどこまでこだわるか?

(初出:J-IDEO Vol.4 No.6 2020年11月 刊行)

山本 剛 やまもと ごう
神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部

 Candida属は酵母様真菌のなかで最も検出頻度が高い菌種である.健常者の皮膚や消化器,泌尿器・生殖器の粘膜にも存在するが,何らかの原因によりホルモンバランスの乱れや免疫力低下が起こることで,異常増殖し皮膚粘膜真菌症から真菌血症,深在性真菌症などを引き起こすことが知られている.今回は微生物検査技師としてCandidaの菌種同定について考える.

1.Candidaを正確な菌種同定する必要性

1)微生物検査室のこだわり
 現場の診断治療の中でCandida属の菌種鑑別がどれほど役に立っているのか自分でもあまりピンときていない.それは,菌種が変われば病原性が変わるのか? という疑問が解消されていないためである.単純に不勉強であることは否めない事実であるが,少し前にCandida aurisについて大きな話題となった以外では,微生物検査の中でCandida属の菌種同定についてこだわりをもって考えている施設は少ないと感じる.

2)Candida albicansとnon-albicans Candida
 Candida属のうちCandida albicansは臨床材料の分離頻度も高く,深在性真菌症の病態も多彩であり,顕微鏡学的な特徴において仮性菌糸の形態を取ることからCandida属のなかでも病原性が高いと言われている.一方,C. albicans以外のCandidaは一般的にnon-albicans Candidaと称されているが300以上もあり,『Manual of Clinical Microbiology(第12版)』では18菌種の記載がある.
 C. albicansのほとんどはアゾール系抗真菌薬が感受性となるため,C. albicans=FLCZまたはVRCZが選択される.Candida glabrataやCandida kruseiなどアゾール系抗真菌薬に高度耐性となる菌種が含まれるnon-albicans Candidaでは,感受性試験の結果次第ではあるが,MCFGやLAMBといったアゾール系以外の抗真菌薬が選択される機会が多くなる.

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