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微生物検査 危機一髪!(37)

[第37回]グラム染色のよもやま話~喀痰の採取について~


山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.7 No.3 2023年5月 刊行)

 新型コロナウイルス感染症も2023年5月から5類感染症へ移行となります.新型コロナウイルス感染症が駆け抜けた4年でしたが,流行前との大きな違いは,現地に行かなくても学会や研究会に参加できることではないでしょうか.最近では,WebinarやYouTube Liveなどで取り留めもない話(四方山話)をする機会が多くなり,質疑応答がリアルタイムに行えるなど演者と視聴者の距離が一段と近くなったように思います.主に,微生物検査に関する質問を多く寄せていただき,塗抹検査から同定・感受性結果の解釈まで教科書に載りそうで載らないようなニッチな内容を答えています.今回はそのようななかからグラム染色にまつわる“よもやま話”についてご紹介します.

1.検体採取と運搬,保管上の注意点

1)喀痰は洗浄した方が良いでしょうか?

 喀痰は下気道で産生される気道分泌物のことで,線毛の働きで気道を逆行し,口から体外へ排泄される生体物質です.下気道は基本的に無菌状態であるため,喀痰で確認される微生物はすべて下気道由来となり,肺炎の原因微生物として考えることができます.つまり,喀痰グラム染色を行う場合に上気道に存在する常在菌の混入を最小限にすることが大切なミッションになります.
 喀痰を生理食塩水で洗浄を行うことで唾液成分を上手く取り除くことができます.外観上で膿性痰であったとしても唾液は少量混入するため,洗浄をかけることでさらに見やすくなるので喀痰は全検体で洗浄操作をすることをお勧めします[図1].

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