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本質の感染症(14)

本質の感染症(14)
[第14回] 非劣性化
岩田健太郎 いわた けんたろう
神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座
感染治療学教授


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 非劣性試験(non—inferior trial)というものがある.臨床試験デザインのひとつだが,なかなか理解は難しい.非劣性,という考え方がそもそもわかりづらい.理解が難しいと言われる(よってベイズ統計学が注目されるのだが)帰無仮説よりもわかりにくい.非劣性ではない(not non—inferior)とか言われると今でも混乱する.二重否定すんな,って昔教わらなかったか.

2

 「非劣性ってなにそれ,食べられるの?」という方には山本舜悟先生の,その名もズバリの「感染症医のための非劣性試験の読み方」という論説がIDATENのKANSEN Journalに掲載されているので,そちらを参照されたい【1】.もちろん,医師のみならず,感染症関係者すべてが読んでも勉強になるし,役に立つと思う.

3

 山本先生がすでに秀逸な解説をされているなかで,ぼくがやりたいのは,非劣性試験の解説などという無謀な試みではない.そういう,危ういことをやるとあちこちの臨床研究のプロたちから集中砲火を浴びて蜂の巣になってしまう,まじで.

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 本稿でやりたいのは,やはり「本質」の話である.つまりは,非劣性試験というデザインの本質.

5

 なんといっても,感染症領域では非劣性試験が多いのである.

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