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微生物検査 危機一髪!(17)

[第17回]培養できない微生物,梅毒の相談

山本 剛 やまもと ごう
神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部

(初出:J-IDEO Vol.4 No.1 2020年1月 刊行)

 微生物検査の大きな特徴は,培地を使って検査を行うことである.つまり微生物検査はミクロを培養という技術で可視化することでその存在を認識してきたからである.微生物検査は一般細菌や抗酸菌が培地上でコロニーを形成し,菌種同定やその感受性を確認しているので,逆に培養ができないものや培養時間がかかる場合は対応していないことがあり,もしそういった原因菌やその菌による感染症を特定したい場合の相談には応じることができないときがある.
 今回は,培養できない微生物について相談した場合のピットフォールについて解説を行う.

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症例
30歳代,女性(妊娠8週).
主訴 TPHA高値持続.
現病歴 妊娠を機に梅毒血清検査を実施したところ,RPR 30 R.U.,TPHA(厳密にはTPRA)3,500 T.U. となり妊娠期梅毒と診断された.AMPC 1.5 g/分3,2週間,MINO 200 mg/分2,p.o. 2週間を繰り返し処方されたがRPRが陰性化しないため紹介受診となった.
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問題点
今回は梅毒なのか?
梅毒であれば結果をどう解釈するのか?
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 通常,微生物検査を用いた診断を考えた場合は,培養陽性となれば診断に近づくことができる.しかし,梅毒はTreponema pallidum(TP)という微生物が感染することで発症する感染症であるが,培養できない微生物であり,相談をもらった微生物検査技師としてどのように返答するのがよいか悩むところである.院内により詳しい人が在籍すればすぐに問題解決すると思うが,院外の専門家に相談するにしても伝手がなければその経路は遮断されることになる.SNSを通じて相談をすることはよいのか? これも悩むところである.
 そもそも,臨床検査技師が梅毒抗体検査の臨床的意義という国家試験レベルの疑問について自己解決できないことが大きな問題点であるが,梅毒血清検査は多くの検査室では生化学か免疫検査室で取り扱いをしているため,「これは自分の範疇ではない」と責任逃れするところも大きな問題点である.
 最も大切なことは,この患者(妊婦)さんが梅毒の治療が必要な状態なのかどうか考えることが重要である.

梅毒抗体検査とその問題点

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