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抗菌薬選択チェックメイトへの道(17)

[第17回]二度目の正直

山田和範 やまだ かずのり
中村記念南病院薬剤部係長

(初出:J-IDEO Vol.3 No.6 2019年11月 刊行)

医師 「昨日,意識消失で入院になった患者さん,尿路感染症も疑っています.入院時に38.8℃の発熱もあり救急担当の医師がすでにピペラシリン(PIPC)を処方してくれていますが,培養が提出されていなかったので,本日,血培も含め各種培養を提出しました.おすすめの抗菌薬はありますか?」

Point!

抗菌薬開始に伴い,菌血症を疑ったら血液培養は忘れずに!

薬剤師 「痙攣もあるんですか?」
医師 「痙攣はなかったようです.入院時の血圧は,131/81 mmHg,脈拍は130 bpmでした.昨日,ロキソプロフェンを頓服で使用し,夜間には解熱して,今朝は36.4℃です.ただ,血圧は98/60 mmHg,脈拍は85 bpmと少し血圧が低下しています.酸素飽和度は室内気で98%と酸素化は問題なさそうです」
薬剤師 「そうですか.それでは,尿,喀痰のグラム染色所見が判明次第連絡いたします」
医師 「連絡お待ちしています」

 早速,当該患者が入院している病棟で,診療録および検査結果を確認しました.

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コンサルト時現症
72歳,男性,身長157 cm,体重60 kg.
主訴 意識消失,発熱
入院時現病歴 宅配業者が自宅を訪れたところ,急に玄関先で意識消失し転倒した.痙攣のような症状はなかったとのこと.救急要請となり当院救急部に搬送となる.搬送後,意識は回復するも発熱があり,ふらふらしている.
既往歴 高血圧(指摘のみ),糖尿病(指摘のみ),左脳梗塞(5~6年前:J病院入院),症候性てんかん(20歳代:当院内服),膀胱炎(2年前),膀胱憩室(2年前),胆石(2年前),陳旧性脳梗塞(2年前:当院入院).
アレルギー歴・副作用歴 なし
飲酒歴 ほとんど飲まない
喫煙歴 なし

検査結果(入院時)
血液検査 WBC 10,900/μL, Hb 14.0 g/dL, Hct 39.3%,
Plt 15.9×104/μL, AST 14 U/L, ALT 14 U/L,
LDH 268 U/L, γ-GTP 18 U/L, T-bil 1.2 mg/dL,
BUN 15.8 mg/dL, Cre 0.96 mg/dL, Na 136 mEq/L,
K 3.6 mEq/L, Cl 102 mEq/L, Ca 7.7 mg/dL,
CRP 8.43 mg/dL
胸部単純X線 明らかな浸潤影を認めず[図1] .

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