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割引よりも利便性?読者630人が望むPASPY廃止後の支払い方は

 「割引」よりも「便利さ」を支持する声が強いようです。広島県内の交通機関で使えるICカードPASPYの廃止後、どんな運賃支払い方法を望むのでしょう。編集局がLINEやメールなどで声を募ったところ、6割がJRのICOCAやSuicaがいいと回答しました。広島電鉄(広島市中区)が新たに導入するQRコードなどのシステムを望むのは2割未満でした。どうしてなのか。寄せられた意見をご紹介します。(馬場洋太、服部良祐)

4つの選択肢でアンケート

 編集局は10日付の朝刊の記事で呼び掛け、14日までの5日間、アンケートをしました。PASPY廃止後の支払い方法としてあげたのは、4つの選択肢です。

①QRコード決済
②新ICカード
③ICOCAやSuica
(③はまだ、使えるかどうかは決まっていません)
④現金

61.6%がICOCAやSuica

 回答は計630人から寄せられました。最多の388人(61・6%)が選んだのは、ICOCAやSuica。全国の交通機関やコンビニで使える「便利さ」が支持されました。
 東広島市の自営業男性(62)は「(2025年に)広電が広島駅ビルに直結するのだから、JRと共通のカードがいい」。福山市の主婦(47)は「旅行や出張で訪れる人への配慮も必要」と投げ掛けます。「多少の割引より利便性」(廿日市市の50代主婦ほか)を求める声も目立ちました。「新たなカードを持ちたくない」「財布が膨らむのは嫌」との心理が働くようです。
 スマホ決済に慣れた若者だからこそ、逆にICOCAやSuicaを支持するケースも。岡山市の男子学生(22)は「QRコードはスマホの電池切れや読み取り速度の遅さがネック」、府中町の男性(23)は「現在2つのQRコード決済を利用しておりこれ以上増やしたくない。使うICカードも1枚にしたい」と訴えます。


新ICカード9・5%、QRコード決済7・1%

 広電の新システムの「新ICカード」を選んだのは60人(9・5%)でした。スマホの使用が必須のQRコードに比べ、高齢者や子どもでも使いやすい点が好まれたようです。
 スマホによる「QRコード決済」を選んだのは45人(7・1%)。広島市西区の無職女性(59)は「カードは忘れることがあるがスマホはいつも持ち歩いていて便利」、東広島市の会社員女性(51)は「割引がありそう」と期待します。

スマホ操作の不安、口座ひも付けに抵抗感

 ただ、スマホに慣れた人ばかりではありません。広島市中区の無職河村憲二さん(68)は「揺れるバスの中で、スマホを操作できるのは若者だけでは」と首をかしげます。西区の主婦(73)は「バスが来たときに、さっとQRを表示できるか」と気をもんでいます。若い世代でも「荷物や傘持ってスマホとか無理」「電池が残量不足の時に不安」「電波の悪いところもある」などの心配から、ほかの選択肢を選んだ人がいました。

 新ICカード、QRコード決済が前提とする銀行口座やクレジットカード登録にも、「少額決済で口座ひも付けは抵抗がある」「情報を管理されたくない」などと敬遠する声が相次ぎました。一方で「降車時に現金をチャージするより、事前の口座引き落としの方が時間のロスがない」と評価する意見もありました。

 また、「現金」支持は24人(3・8%)。呉市の臨時保育士の女性(59)は「便利な時代についていけず、PayPayなどのQRコード決済は苦手。割引を横目で見ながらも結局現金が一番わかりやすい」。新しい決済システムに違和感のある人も少なくないようです。回答を一つに絞れなかった人も113人(17・9%)いました。

専門家はどうみる?

 都市交通に詳しい野村総合研究所(東京)上級コンサルタントの新谷幸太郎さんは「口座やクレジットカードへのひも付けの拒否感は全国共通の傾向。ただ、新システムによる割引などがあれば、安さを重視する人は手間を受け入れるかもしれない」とみています。
 広電は「ホームページなどにさまざまな意見や反響が寄せられている。よりよいサービスの提供に向けて検討したい」としています。

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