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【中学受験 算数】4年生の内容の重要さ

かつては4年生までは学習習慣さえ持てていれば後からでも何とかなると私は考えておりました。
しかし、一人塾を行っていた頃には全く感じなかった違和感をSAPIXに所属してから何だかモヤモヤと感じ、コロナ禍を経て感じた理由をハッキリと理解致しました。中学受験の結末は6年生2月です、しかしそこまでにはほぼ結末は決まってしまいます。最後まで望みを持ち受験をなさるために、ぜひ4年生から意識して頂きたいことをお伝えさせて頂きます。


感じてしまう違和感

私が感じていた違和感が何なのかというと、
シンプルに4年生の単元の理解が出来ていない
というものです。
ここで重要なことは解けるではなく、理解だということです。

4年生での単元でやった問題は解けるのです。しかし何故そう出来るのかはほとんど理解が出来ていない、つまり覚えただけの内容を当てはめて答えのようなものを押し出しているだけなのです。

何が原因か

こういう内容に関して保護者と話していた際や学習相談などで、子供のせいと言われることがありますが、子供のせいとも言いきれない状況が昨今の中学受験業界の現状です。

それはどういうことかと言うと、授業中に意味を説明されているのであればその内容を理解していない子供のせいと言えるかもしれませんが、そもそも説明すらされていないという状況が現在は在り得るということです。

結局は講師のレベルが一番の原因なのでしょう。

何故4年生の内容を大半の講師が必要なレベルにまで教えられないのか

理由は明確に言えることですが、4年生だけではなく5年生まででも(現実は6年生でもある程度の人は同じです)教えている人間が入試を知らないからです。

ウソだろと思われるかもしれませんが、これが現実です。4・5年生ぐらいまでの講師の大半は大学生アルバイトになってしまいます。まずこの人たちが6年生を最終的に受験の様子が分かるまで担当することはほとんどありません。あるとしてSAPIXなら土特やSS単科です、平常を担当する大学生はかなり稀です。さらに、それも大学1年生から始めて4年生になったぐらいでがようやくです。そんな人がそもそも多くいるのでしょうか。そしてやるべき事の内容というものも考えられます。

例えば、私が中学受験の指導を始めた初年度は事情があり最上位コースの雑用係りのようなことも行っていたため、四谷大塚の偏差60以上の学校は全て5年度分解きました。平日はいつも夜中2時ぐらいまで予習をしていました、今考えるともうそれはやりたくないと思ってしまいますがあの頃は自分を変えようと必死だったためやれたのだと思います。もう一つ理由があり、突然塾長が体調不良になることがあるため代わりの授業をやらされることもあるためでした。最終的に開成や豊島・早慶に合格していくレベルの子供たちだったため、こちらが内容の本当に隅の隅まで調べ把握していないとそもそも授業に立つのが怖かったです。それだけやっても、自分で6年生の受験を通さなければ受験というものがどうなのかの実感は得られなかったです。

ここまでのことを大学生のアルバイトがやってくれるのでしょうか?
また社員であったとしてもここまでやらない人も多くいます、そういう人が6年生の担当に社員だから担当することもあるわけです。
こういった人たちは授業で子供たちの前に立つことを怖いと思ったことはあるのだろうかと思ってしまいます。

解決方法

じゃあ解決策は入試を知っている人間が授業を行うようにすれば良いんだ、ということになるのでしょうが現実的に難しいでしょう。

理由の一つは、人材不足です。結局入試を知っているというレベルまで積み上げている講師は数少ないわけです。それはアルバイトが意味の中心ではありますが、では社員だから社会人だから大丈夫というわけではありません。

証拠として、講師が全員社員であることを一つのウリにしている中学受験塾がありますが実績はそれほどパッとはしていません。これでプロとして社員で働いていることがそのまま実力のある講師になるわけではないとお分かり頂けると思います。
また、こういったことは一般社会(私は塾業界は一般的な業界とは思っていません)の中で働かれている方々のほうが実感されるのではないでしょうか。学歴や立場よりもその人の人間性などの方がどう働くかに影響を及ぼすということです。
一つの例として、SAPIX時代に私よりも長く10年以上SAPIXで算数を担当している講師の中にただクビにならないだけで、本当にコンビニバイト(今はコンビニも大変ですが象徴的な意味としてです)のようなその場にいるだけの人もいました。彼らは別に教え子を少しでも上に押し上げたり、少しでも志望校への可能性を高めるなどは考えず、自分の食い扶持が得られれば良いということでその場にいました。そうやって、10年以上SAPIXで授業をしているのです。

もう一つは、コスト面です。前述の通り人材は数少なく限られます。
そうなるとその少ない人材を多く配置するにはコストが掛かるわけです。そのコストが掛かる人たちを会社が期待できない所にまで用意をするのでしょうか、これは経済合理性から考えると悪いやり方だと否定が出来ない考え方です。
その結果、先程のSAPIX時代に見た人のようなレベルの講師が子供たちの前に立ってしまうわけです。

ちなみにこういった問題はSAPIXに限らず業界全体の問題点と言えますから、どこに移っても同じ問題が付き纏います。

そのため、上記の内容から考えられる解決方法は
まともな講師のいるコースに子供が上がる
ということでしょう。

負のループ

それが出来たら問題なんて無い、と言われてしまうような解決方法を提示しましたが状況的に仕方ありません。

現在は負のループに陥ると抜け出すことが非常に難しいと言える状況が出来上がっているからです。
その負のループとは下記のようなものです。


横道に逸れますが、私は中学受験だけでなく人生そのものがこの状況と似ているように思えてしまいます。
『人はいつでもやり直せる』こういった言葉がありますがそれは上記の負のループから考えれば、自力で負のループから抜け出せることが出来れば、だと私は思います。人生においての負のループは中学受験など比べ物にならないくらいに頑強で強力に構築されています、さらに手を変え品を変えループ内に残るように誘惑をしてきます。それらを振り切り、さらに何年ももしくは何十年も遅れを取っているものを埋めるどころか他の人よりも優れているところまで持って行く、それが出来るのであればやり直せるのでしょう。
もちろん、それが出来ればなのですが。


話しを戻すと、この負のループを自然に抜け出す方法は本人の能力が非常に高くないと難しいでしょう。他の方法で言えば家庭が非常に強く協力することでも一旦の抜け出しは可能でしょうが、最後まで続けていけるかは中々難しいと思ってしまいます。家庭が疲弊してしまうことと、内容が難しくなっていくにつれ協力が出来なくなってしまうからです、これは特に算数に言えることとは思いますが。

さらに可哀想なことは、最後の受験に必要な内容を教わっているか教わっていないかでその後の差がドンドン広がっていくことです。
これは教材に載っている内容ではなく、講師自身が入試問題を知っているから話せる伝えられる内容なわけです。これを4年生段階から伝えてもらっているか、最後に直前に知るかでは同じ能力の子でも理解度が大きく異なります。
場合によっては、コースの自分以外全員知っているなどの内容は説明もされず共通認識として流されることもあります。そうなるとそれを補うためには本人の能力の高さかさらに強力に家庭の協力が必要になります。

これが私が現在の中学受験は『元々出来る子が上手くいく受験』と説明している理由です。

保護者側の問題点

現在の中学受験がこのような状況になってしまった理由の一つは社会の変化によるものです。
しかし、それだけではなく保護者側にも問題があると私は考えています。

①4年生の内容の重要度を分かっていない

色々な問題点が言えますが、今回の内容に沿った観点で言えば『4年生の内容を侮っている』ということが言えます。

これは4年生というタイミングが6年生から言えば2年も前の時期なので、とても簡単な入門編的な内容と思われている節があります。

しかしそんなことはありません、4年生の内容は非常に重要な内容を扱います。
4年生の内容はスポーツで言えば、足腰の強さなどの基本的な能力に関わることだと言えます。6年生などで高度なテクニックを習い身に付けたとして、基本的な足腰が弱い子がそのテクニックを試合で活かせるでしょうか?

さらに具体的に説明すれば、4年生で習う代表的な特殊算である和差算・消去算・つるかめ算・過不足算は入試問題でガンガンに使います。もちろん4年生時の問いのようなことではなく、問題の中で計算方法として非常に多用していきます。ある意味+ー✕÷に加えつるかめ算という計算方法があるようなニュアンスです。
そして、それ以外にも様々な内容が5・6年生の内容の土台となるように触れていきます。
こういった土台がおろそかになっている子供が、この先でどうやって好転出来るのでしょうか?

特に過不足算は4年時の内容のまま、かなり難しく問題を作ることが出来ます。

開智中2020年度
白百合学園中2019年度

こういった観点から最後の入試を知っている講師は4年生だからなどと侮らずに、入試に必要な内容を伝えていくのです。
だからこそ、4年時にこういった事を分かっていないレベルの講師が教えていると後々困った事態になることが多いわけです。

②後で何とかなると保留する

①の内容の延長線だと思いますが『まだ4年生だから』と考え、後々良くなっていると保留する、こういう保護者は少なからずいると思います。
中学受験をよく分かっていないからそういう判断をしてしまう、もっと根本的に子供の受験に関わると面倒だから保留をする、どういった理由でも結果は同じことになってしまいます。

前者の理由であれば全ては子供の能力次第になってしまいます。後者であれば、身近な保護者が本気で取り組まない内容に何故子供が自然に本気で取り組むのでしょうか。

残念ながら現在の受験はこういった保留という選択を選んだとしても事態が好転するどころか、『時間』という資源を失い可能性をただ減らしているだけに過ぎません。
私も10年前は4年生で学習習慣をしっかり構築さえしてくれていれば、その後で何とかなる自信は持っていました。けれども、SAPIXにて指導を行い感じたことは10年前とは授業のクオリティが変わってしまい、後から修整を行うことがとても大変であるという現実です。

子供にとって一番害になる保護者の考え方は『保留』です。
どこかで・いつかは・最後には、こういった考えは本当の意味での考えではなくただの現実から目を逸らした甘えでしかありません。
現実と向き合うことのみが今のお子様の状況を好転することに繋がり、そして皆様が行った礎が集まり未来の中学受験の状況も好転することに繋がっていけると思います。

まとめ

実はこの記事は先日お伝えした記事よりも前から作成していた内容になります。

作成途中にこの記事内でお伝えした2024年2月からの改変についての情報を耳にしたため、先にお伝えしたほうが良いと思い作った次第です。

改変の具体的な内容に関しては記事にすることは諸事情あり出来ませんが、学習相談で尋ねられた方や下の子がいる生徒のご家庭にはお伝えをしております。その際には総じて皆様驚かれ呆れられ、どうしようかと思案されます。

上記までにお伝えした通り、4年生の内容は最終的な受験の内容を支える足腰のようなものです。もちろん、後からでも鍛えることは出来ると言えば出来ますが、そういった二度手間が遅れを生んでしまいます。
4年生で習うのです、それならばその時に身につけて定着させる方が良いに決まっています。それが現状出来ていないどころか、出来るわけがないと言えることが現実です。しかも、子供のせいだけとは言えない現実に一番憤りを覚えます。
これは今まででも非常に頭を悩まし見ててイライラする現実だったわけですが、それが今回の改変により更に悪化することは正直誰が考えたとしても思えるようになりました。

保護者の皆様には必ず考えて頂きたいことは、塾に通っているだけで何とかなるという考えは本当に危険である、ということです。また、算数的には4年生の内容は重要な内容である、ということもです。確かに後からでも修整は出来ます、しかしそうなった時点ですでに遅れを取っているということが言えるわけです。
さらに今後は今まで以上に4年生までの環境の重要さは大きく差になると思います。
『まだ4年生だから』、そう思われることが後々大きく尾を引いてしまう原因にならぬよう今起きている現実を調べ検討し、どう対処するかを考えられることをオススメ致します。

算数の家庭教師を行っております。無料相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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