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世間知らずの起業物語 その16

突然、川上会長に呼ばれ、足を踏み入れた社長室。
そこには、川上会長と共に、村上さんがいた。

もう一つの会社?

管理部の村上さんがいるのはなんでだろう?と僕は不安を抱きつつ、もしかしたら、支払いに関する何か問題でもあったのかな?と考えていた。

川上:「あ、佐藤さん、悪いね。新会社のことなんだけど。」

僕:『はい。』

新会社のことだった。しかし、ではなんで村上さんがいるんだろう?

これまで、グループに何かあったとき、グループの行く末を考えてきたのは、10年前に僕が入社した時の管理部の責任者であった北条と、川上会長と僕の3人であった。

グループの重要な決定はこの3人に行うのは暗黙の了解であった。

川上:「村上さんとも話したんだけど、新会社には村上さんと桜田さんにも入ってもらおうと思ってるんですよ。」

僕:『え?』

思いもよらない話であった。

川上:「実はうちの息子にも社長になってもらって、もう一つ会社を作るんですよ。」

僕:『はい。それは問題ないと思います。』

すでに、CROSS ONEの株主である会長の長男である。

川上:「そこで、私の最新の発電所の実験をしたいんですよね。」

僕:『はい。それも良いと思います。しかし、工事は誰かやるんですか?グループで請け負うのでしょうか?』

川上:「いや、そこは上野くんに、グループで業務委託でやってもらおうと思うんですよ。」

僕:『なるほど。であれば、発電所は作れますね。』

工事ができるメンバーは限られている。
しかし、所属する会社が異なると、作れる発電所に制限がでてきてしまうから、業務委託で両方の発電所を作れば問題ないだろうと思えたのだ。

3体制

僕:『それと、新会社を3名で進める、というのはどのような関連が・・・?』

会長が最新の発電所の実験をするのはいい。
しかし、新会社のメンバーを増やすのとは、どのような関連があるのか?僕には想像がつかなかったのだ。

川上:「やはり、将来的にリソースを移していくので、新会社もしっかりと体制を作っておいた方が良いと思うんですよ。だから、管理部の村上さんと、販売の桜田さん。工事を含めたそれ以外は、佐藤さんができるから」

確かに、分担としてはそうだろう。

山田に霹靂していた桜田もうれしいかもしれない。
しかし、新会社で、管理職を2人追加して、3人体制とすることで会社が回るイメージはすぐにはつかなかった。

川上:「桜田さんにも、ちょっと前に話して、了承は得ているから。」

僕:『え、あ、そうなんですか』

僕には一番最後に話をしたようだった。

川上:「村上さんにも相談して、その方が、いろいろと将来的に進めやすいと思うので。」

僕:『え、えぇ』

不安という感覚よりも、突然の話に、頭がついていっていないような感触であった。

僕:『しかし、管理職が3名となると、1年目が重い感じがするんですが・・・』

と言うことで精一杯だった。
2人にはこれまでと同じ年収を保証しなければならないだろう。

川上:「太陽光だから、10基も売れれば十分ですよ。下手すれば、5、6基。変に利益が出過ぎてももったいないから、最小の利益で銀行から融資が受けれるくらいであればいいですから。」

川上:「それに、グループではなくなるけど、グループと一緒に動ける共同体を作って、そこで機器を安く流通させて、グループの権利を3社で分担して作ったほうが、早く作り上げることができると思いますよ?息子の会社で、私が最先端の太陽光を考えて、共有できれば、さらに発展するでしょう?」

僕:『はぁ・・・』

これは、すでに決定事項であった。

いま思い返すと、このときに気づくべきだった。
僕の知らないところで、色々なことが、色んな人の思惑で、動き始めていることを。

つづく

※この物語はフィクションです。

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