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世間知らずの転職活動・フリー編 その25

プロジェクトも年末の納品に向け忙しい中、町田さんとの忘年会も楽しく終えることができた。もしかしたら違うところで一緒に仕事ができるかも・・・と思いつつ、次の日、薩田さんの口から驚きの言葉を耳にしたのだった。

前回はこちら

同じ会社で

朝、出社して早々、薩田さんから聞いた「来月からI社でお世話になることにしたから」という言葉が頭から離れなかった。

私:『薩田さん、あれ?大川さんが飯田専務に紹介したの?』

大川:「そうそう。薩田さん、来月から仕事ないって言うからさ。この業界で続けていきたいって言うからどうかな?と思って。」

私:『そうなんだ。でも、薩田さん、まだプログラムもまともに組めないけど、大丈夫なのかな?』

薩田さんは、Tシステムに入社して、プログラミングを学びつつ、仕事をする予定だった。しかし、このプロジェクトに参画し、「学ぶ」という環境には程遠い状況だったのだ。そのため、プログラムの経験はゼロに近い。

大川:「人柄はいいからさ。たぶん飯田専務もそういうところをかって、採用?契約社員なのかな?したんじゃないかな?」

私:『まぁ、人柄はいいからね。フットワークも軽いし。』

大川:「だよね。」

正直言って、飯田専務の話を聞く限り、I社は経験者の契約社員ばかり、ということだったので、薩田さんがやっていけるのか?心配であった。とはいえ、自分自身も個人事業主を始めたばかりだったので、人のことを言ってる場合でもなかったのだが。。。

大川:「まぁ、人紹介したら、I社から紹介料ももらえるし、飯田専務がダメだったら断ると思うから、いい人いたら佐藤さんも飯田専務に紹介したらいいと思うよ。」

私:『なるほど。』

少し違和感もあったが、薩田さんの人柄やフットワークの軽さは、どこかで生きる部分もあるのかなぁ?と思いつつ、仕事を始めた。

ちなみに、薩田さんはこの後10年以上、I社に勤め、課長までになるのだから出会いは面白い。大川さんでなく、私しかいなければ、そういったこともなかっただろうから、間口は広く、チェックは厳しく、というも大事なのだと思う。

サブシステムの検証

プロジェクトは年末・・・、そう、もう1ヶ月を切った納品に向けて、少しずつ忙しくなっていた。各サブシステム単位で実データを用いた検証作業がスタートしていたのだった。

結合試験に向けて、各サブシステムの正常系、異常系ともに、問題がないことを確認しておくために、お客様から個人情報などが分からないようにした実データを提供してもらい、より本番に近い状態で試験を進めていた。

開発側でテストケースを用意するのは当然であるが、ベースとして実データを利用できるのはとてもありがたい。新規機能であれば、自分たちでテストデータを用意せざるを得ないが、既存機能のアップデートということもあり、実データでの確認が可能であったのだ。

前回、山崎PMのときは、お客様立ち会いの結合試験で初めて実データを元にしたデータで試験を行った。お客様に事前に依頼をしていれば、テストデータとして提供していただけていたと思うが、それができていなかった。

山崎さんなりに、プロジェクトの進捗状況から実データを提供を受けて結合試験を事前にできていたとしても、修正する時間さえない、ということで、あえて提供を受けていなかったのかもしれないが、この差は大きい。

各サブシステムで実データを元に試験を実施し、プログラムがうまくうごかなかったり、結果に異常があったときは、仕様を確認し、すぐプログラムに反映できるようになっていた。

画面担当の憂鬱

各サブシステムの結合試験レベルの確認は、実データを元に実施することで精度があがったのだが、その割りを食っていたのが、入力サブシステムの江川さんであった。

入力サブシステムは、画面からの入力機能を作るサブシステムであった。

入力サブシステム以外のサブシステムは全てCOBOLで作られていたが、この入力サブシステムだけは、別の言語で作られていた。

VB(VisualBasic)で作られたパソコンの画面からデータを入力するのだ。

その入力サブシステムの画面に表示される項目は、その他のサブシステムから提供される。提供されると言っても、それぞれのサブシステムが使用するデータベースの値を使用することになるのだが、精度があがったテストのおかげで、入力サブシステムへの影響が大きくなっていた。

江川:「石山さん、この項目は上限値が100って言ってたじゃないですか?」

石山:「あ、ゴメンゴメン。実データ使ったら200まで必要だったよ。」

江川:「この項目は画面で表示できなくなったんですか?」

石山:「あ、このデータはユーザが修正しなくなったから、画面での表示は不要になったよ。」

江川:「石山さん、本当に頼みますよ!!!」

と言う具合に、サブシステムの試験結果によって、細かな修正がところどころで必要となり、江川さんはFシステムの社員の方々と同じように忙しい日々を送っていたのだった。

江川さんはホテルには泊まっていなかったが、机に突っ伏して眠っていたり、椅子を3脚並べて寝ていたり、床の上に寝ていたり、と、様々な寝姿でみんなに笑いを提供してくれていた。

一方で修正があるごとに、その鬱憤をはらすかのように、石山さんに怒鳴り散らし、周りに緊張感をもたらすこともあった。最後の最後で、みんなの修正を受けて、一番最後に時間のない状況で修正をするのだから、相当のプレッシャーがあったに違いない。

気になる電話

そんなプロジェクトの佳境の最中、私の電話に着信があった。
あのZ社の木本常務からだった。

木本:「佐藤さん。調子はどう?プロジェクトも忙しいかな?」

私:「はい。もう納品まで1ヶ月切ったので、だんだん忙しくなってきています。」

木本:「そうだよね。そんな忙しいところ申し訳ないんだけど、そろそろ例の契約の件、年明けからどうするか話をしたいんだけどさ。」

以前、焼肉を食べながら打ち合わせをした話の続きをしたいと言うのだった。

あの時のことを思い出す。川原社長、木本常務の初めて会ったその日に、事業部長をまかせたい・・・と言われ、その不信感はMAXになったのだった。

私:「わかりました。」

木本:「じゃ、今週どこかで会おうか。」

私:「今週は忙しいので、来週なら・・・」

そんな不信感を思い出しながら、木本常務と打ち合わせの約束をするのであった。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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