世間知らずの起業物語 その8
新体制発表の中、思っていた通り新会社の話を発端に、議論は紛糾した。
ふと僕の頭の中に突飛なアイデアが思い浮かんだのだった。
※この物語はフィクションです。
アイデア
『こういうのはどうだろう?』
突然の僕の発言に、皆が耳を傾けてくれた。
雰囲気を感じつつ、僕は話を続けた。
『人がカワミーからいなくなるのがネックなら、まずは僕ひとりで1、2年新しい会社で発電所を必要なだけ作ったらどうだろう?それだったら、現事業に大きな影響は出ないんじゃないか?』
皆:「え?」
と、驚いて全員が僕の方を向いた。
それほど驚くことか?とは思ったが、もしかしたら、僕が自分自身で新しい会社を作りたい、と川上会長に頼んだんだと思っていた人もいたのかもしれない。
株主が僕という会社は、今回が初めてだったし、川上会長が僕に会社を作ることを指示した、というよりも僕が会社を作りたいと言った、と思われていても仕方ない状況ではあった。
僕がひとりの会社を作る。
多くの人に迷惑をかけることはないと確信していた。O&Mも今あるCROSS ONEで請負いつつ、僕がこのまま責任者を兼任すれば良い。
販売部分だけ、カワミー社を頼りお客様を紹介してくれれば、それ以外の部分、発電所を作るには、O&Mを兼務しながら、年間10基程度の発電所は問題なく作れる。
今までは、それ以上作っていたのだから、間違いない。
むしろ、これまで責任者として携わっていたグループ全体の経営や人事採用、システム全般の業務には携わらなくて良くなるのだから、これまでよりも負担は減るだろう。
そして、1〜3年の間に、作る発電所を増やしつつ、人も少しずつ移動してくれば良い。という進め方は現実的であると思えた。
僕:『どうでしょう?』
僕:『これだったら、真愛グループ自体の人員は僕1人だけ減っただけで、O&Mも今まで通りの体制を続けられるし、それ以外の担当もこれまでと変わらない。』
僕:『僕1人の発電所工事分だけなら、今のメンバーで全然カバーできるんじゃないか?』
山田:「いやいや、そんな簡単なことじゃないと思いますよ」
と、やはり山田が反論を始めた。
山田:「O&Mやりながら、新しい会社を進めるなんて、簡単じゃないと思いますよ?」
僕:『じゃぁ、さっきの社長案で進めた方がいい感じ?』
山田:「いえ、そういうわけでないですが・・・」
まぁ、そりゃそうだろう。
今さっき、新会社を作ることを聞いたばかりだ。
反対という気持ちが先にあり、理由なんて簡単には思いつかないだろう。
こういう時に反論するのは、山田がほとんどだが・・・
文句を返されるのは、いい気分ではないが、それだけちゃんと(?)考えているんだろうな、とは感じることではあった。
良くも悪くもだ。
そして、相変わらず、上野はニヤニヤしながら聞き流し、北条はいつも通り体調が悪い雰囲気を醸し出し、何も言葉を発しなかった。
お調子者の東野は、「そんな簡単に会社作れるんですね」と目を大きく見開き驚いていたが、他のメンバーからの発言はほとんどなかった。
川上会長は「面白いねぇ」と一言いいながら、「ま、また来週続きをやりましょう」の一言で、会議は終了した。
会議の続きの何?
会議室を出ようとした時に、川上会長に呼び止められた。
他の皆が会議室から出たその瞬間であった。
川上:「とりあえず、会社作る事務手続きを進めておいてください。」
あ、来週また検討するのでは・・・と言いかけたが、飲み込んだ。
そうか、もう決定事項なんだな。
川上:「事務的なところは、村上くんに言って、やらせればいいよ」
そして、僕は『分かりました』と静かに答え、川上会長の後から、会議室の電気を消して、騒がしい執務室に歩いて向かった。
つづく
※この物語はフィクションです。
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