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世間知らずの起業物語 その12

O&Mチームとして太陽光発電所を安定な発電を継続させることが、契約していただいているお客様のためになる。
そのためにも、O&Mチームが日々の業務をしっかりと着実に対応する必要があると僕は考えていた。

管理職会議 その2

O&Mチームのドタバタを対応しつつ、やはり新会社設立の話は進んでいく。

先週に引き続き、今週の管理職会議でも新会社のことが議題にあがるのだ。

川上会長は、もう新会社は作るつもり。
他の管理職は、新会社を作るかどうか会議で検討するつもり。

このあやふやな状態を、現時点で理解している人は管理職の中にはいないだろう。

そんな前提の中、管理職会議はスタートし、一通りの普段の議題を処理した後、会議の一番最後に川上会長が口を開けた。

川上:「みなさん、どうでしょう?新会社は?」

山田:「本当に作る必要はあるんでしょうか?皆の手が回らない状況なのに・・・」

確かに、手が回っている、とは言えない状況ではあった。
発電所の工事は進むのだが、販売が追いつかなかったり、これまでとは逆のケースが多くなってきていたのだ。

それは一つに、発電所としての価格が高い高圧の発電所を販売しようとしていたからではある。低圧の発電所は1基、2500〜3000万円。高圧の発電所は安いものでも3億円以上する。

今年に入ってから、カワミーで所有している高圧の発電所を中古販売することを中心に進めていたのだ。

これまでのビジネスモデルは、低圧の発電所を同じ場所に大量に作ってそれを販売する、ということの繰り返しであった。しかし、FIT制度の改正などに伴い、そのようなことが難しくなっていた。

一方で、グループで所有している高圧の発電所はその10基分以上の価格であり、販売できれば大きな売り上げが一気に経つ。ただ、ランニングコストも低圧の発電所と比較しても割高であり、価格自体も高価で購入できる人が限られていたのだった。

低圧のように、あればすぐ売れる、という状況でもなかった。

だから、山田が気にしていたのは、自分と一緒に販売をしていた桜田が自分の部下から離れることだったのだ。

自分が自由に使っていた『手』がなくなる、という表現が彼女の気持ちに近いかもしれない。

『しかし、な・・・』

と、僕は心の中で呟きつつ『でも、桜田さんは山田の下は嫌だからなぁ』と彼の心の奥底の想いを気遣った。

桜田は僕よりも3つ年上。山田は僕の9つ年下。

年齢の問題ではないが、山田は桜田が太陽光発電所事業については未経験で知識が足りないことをいいことにアゴで使っていたから、桜田はたまったもんじゃなかった。それは、普段の2人の業務のやりとりを見ていても明らかで、1年も経っていなかったが桜田の顔がどんどん暗くなり、やつれていく様子は誰が見ても明らかであった。

だから、桜田や他の何人かは、新会社を作るというよりも、昔からいるメンバー、山田、北条、上野あたりのメンバーと一緒に仕事をすることが嫌で、体制を大きく変えて欲しいという思いがあったのだった。

そんな、それぞれの複雑な思惑が水面下で錯綜しつつ、今日もまた全員一致の答えには到達できないようだった。
川上会長の中では答えは出てるのだが、管理職会議としては結論づけるところまでいかなかったのだ。

川上:「今日は、また時間が来たから、次回に続きを話しましょう」

皆は、次回に話を先延ばされることにも疲れた様子であった。

川上:「あ、佐藤さん。とりあえず、次回までに、会社名だけ考えておいてください。その方が、皆、イメージがつきやすいだろうから。」

僕:『あ、はい。名前ですね・・・』

これも当然のように、議論は進まずとも、決定事項のようにことは進んでいく。

いつもの電話

会議が終わり、部屋を出たところで、電話がなった。

スマホの画面を見ると、SolarTech社の冨岡さんからであった。

冨岡さんは、カワミーが太陽光発電所を作り始めた当初から、太陽光発電パネルやパワコン、その他の部材を卸してくれている商社の方だ。

カワミー社では珍しく、もう、7年くらいの付き合いのある方だ。

冨岡:「あ、佐藤さん。会社作るんですって?」

僕:『え?冨岡さん、また会長が何か言っていました?』

そう、毎度のごとく、社内の決定事項は、ちゃんと決定する前に社外のステークホルダーが先に知っていたりするのだ。

おいおい。

つづく

※この物語はフィクションです。

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