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世間知らずの転職活動・フリー編 その26

プロジェクトも忙しくなりつつあったそのとき、Z社の木本常務から今後の契約について話したいとの電話があった。川原社長、木本常務への不信感を抱きながら、打ち合わせの約束をしたのだった。

前回はこちら

新しい契約に向けて

「契約の話も早く終わらせないといけないな」と思いながら、Z社との契約について進めていいかどうか悩んでいた。会ってから1時間足らずで事業部長の席が空いているなんて焼肉屋で言われても・・・正直、信用できるものが一つもなかった

確かに営業の上田さんから現金の手渡しで報酬をもらうのではなく、Z社からの支払いに変更してくれたことは助かった。

ただ、単金はそのままだし、川原社長も木本常務も上田さんの文句ばかりで、Z社の営業の上田さんのこととしての責任などは、ほとんど感じてないようだった。

Z社と上田さんの間にいたD社とは、うまく・・・そう、当たり障りのないレベルで話をしてくれたんだと思えた。そして、上田さんのせいにしている部分は、もしかしたら、自分が仕事で失敗したときにも同じように自分のせいにされるのではないか?と感じたのだ。

木本常務の醸し出す怪しさや、具体性のない話などは、不安になる要素であったが、それ以上に、今回の件について、自分たちの会社の責任というのを感じていない部分が見えたところが、一番ひっかかっていたのだ。

私:『大川さんさ、この前のZ社の話覚えてる?』

大川:「あぁ、焼肉やの事業部長の話の?」

私:『そう、さっき電話きてさ、その常務から。』

大川:「え?やめたほうがいいでしょ?Z社は」

私:『やっぱり、そう思うよね。』

大川:「佐藤さがI社に行ったとしても、紹介料も発生しないからさ、なにもない状態で言えるけど、飯田専務もZ社のいい噂聞かないって言ってたよ。まぁその営業の件もあるだろうし。」

私:『そうだよね。ありがとう。』

私からしか、話を聞いていないが、大川さんんも同じように怪しさ?と感じていたようだった。

ただ、現状はまだZ社しか私の行く先は見えていない。
このまま個人事業主をやっていくか?という部分も考えなくてはならないが、今はこのプロジェクトを責任もって進められる状態にはしておきたかった。

結合試験前の憂鬱

前回、山崎PMの元、お客様であるK社向けに実施した結合試験。結果は散々たるもので、情報システム部の平塚様から大きく叱責をうけたのだった。

「あなた達の言っていることは信用できないんですよ!」

実際に言われたのは山崎PMであったが、その横で聞いていて身体が固まった。

そこから林田PMにバトンタッチして、プロジェクトの立て直しが始まり、やっとサブシステムごとで実データを使用した試験を実施し、結合試験に入れる状況になっていた。

お客様に検証してもらう結合試験の前に、前回、失敗したときのデータで事前にプロジェクト内で確認する。そして、さらに、実際にこちら側で用意した試験データを使い、お客様に結果を検証してもらうようになっていた。

正直、残り3週間を切ったこのタイミングでこれらが動かなければ、月末までに納品は難しい。

予備日の1日を含めて、約3日間かけて実施する予定となっていた。

今回は画面からの入力があるため、Tシステムの薩田さんたちも駆り出され、指示書に従って入力をすることになっていた。

我々JCLチームは水原さんと私と、あとから加わったFシステムの広田さんの3人で結合試験に向けて準備をしていた。私が知っているH社のJCLのことを、広田さんに引き継いでいるような状態で仕事を進めていた。

JCLチームで各サブシステムのJCLをつくり、それぞれに提供する。そして、各サブシステムごとで試験を実施するようにしていた。JCLを実行する環境によりライブラリの変更なども必要だから、お客様向けの結合試験で、それぞれJCLを作る必要があった。

いざ試験開始

次の日から、お客様向けの結合試験の前哨戦とも言えるプロジェクト内結合試験がスタートした。

まずは画面からの入力である。
午前中の準備が長引き、午後2時頃からのスタートとなった。

入力サブシステムの江川さんが、各サブシステムの修正を反映して、文句を言いながらも徹夜しながら仕上げた画面。そこから、薩田さんたち3名がデータを入力するのであった。

おおよそ3時間から5時間をめどにデータを入力しデータの検証をする予定だ。そのデータを元に、小森リーダーの経費サブシステムを実行する。

今日はこの経費サブシステムが実行できれば、この日のノルマが達成される。

2日目に課金サブシステムから請求、支払、連携サブシステムをパターンごとに実施し、実行結果のデータを検証する段取りになっていた。

だから今日は私や大川さん、明日、実施予定のメンバーは準備だけのため、データ入力が終わっていれば、定時を目処に帰宅するように言われていた。

大川さんとタバコを吸いに行くと、角川さんが林田PMとタバコを吸っていた。

大川・私:「お疲れ様です!」

角川:「お、おつかれーっす。」

大川:「角川さん、タバコ吸ってて経費サブシステム大丈夫なんですか?」

角川:「大丈夫っす。リーダーが頑張ってますから。」

大川:「リーダーで大丈夫なんですか・・・(笑)」

林田PMは苦笑いをしつつ部屋に戻っていった。

企み

私:「最近、林田さんと仲いいですよね?あんなに林田さんのこと嫌っていたのに(笑)」

角川:「何言ってんすか、佐藤さん。最初から林田さんはいい人だと思ってましたよ(笑)」

林田チームが乗り込んできたとき、一番敵対心を持っていたのが角川さんだったけど・・・

角川:「また、来週から一人、うちからテスト要員追加することになったから。林田さんは神ですね。」

現金なもので、林田PMのもと、角川さんの会社から参画者が増えていたのであった。

角川:「まぁ、今日、とりあえず終われば、うちは安心ですね。来年もまだ開発ありますから。」

大川・私:「あ、納品で終わりじゃないんですね?」

角川:「そりゃそうっすね。まだ、F社のシステムへ移行するまではこのシステム使いますから。お二人は残るように言われるんじゃないですか?」

大川:「林田さんたちは、その後もまだ引き継きプロジェクトやるんですかね?」

角川:「うーん。どうなんですかね?炎上プロジェクト対応チームっぽいから。落ち着いたらいなくなるかもしれないっすね。」

私:「そうしたら、角川さん、人増えなくて困るじゃなないですか?(笑)」

角川:「佐藤さん、そんなこと言わないでください(笑)」

データ入力の完了

たしかに、以前、田中さんが、タバコを吸いながら、この前の前のプロジェクトは、今よりも忙しかったとか、一昨年のプロジェクトは同じくらいだったとか、炎上プロジェクト自慢?をしていた。

林田チームは、炎上したプロジェクトを消火するために、3ヶ月〜半年でプロジェクトを渡り歩いているようだった。

たしかに、整理整頓されて、プロジェクトもうまく進み始めた。

だったら、林田チームを最初からプロジェクトをしっかり持たせて、炎上しないようにしたらいいのにと思うのだが、それくらい炎上するプロジェクトが多いのだろうと、推測できた。

しばらくて、データ入力が完了した。
定時を少しすぎたところだった。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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