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安倍首相辞意表明 角栄元首相辞任と酷似

〇2020年8月28日、安倍首相が辞意を表明しました。28日時点での辞意表明に、国民の大多数はびっくりしたと思います。しかし安倍首相が辞めること自体には、意外性が少なかったのではないでしょうか。

〇安倍首相はしきりに潰瘍性大腸炎の再発を言い、病苦で首相の任に堪えずとしています。しかし辞任するきっかけはどうであれ、辞任の本当の理由は、コロナ対策の失敗、検察対応の理不尽による国民の不信任、つまり政策の失敗からだからです。

〇この退陣のきっかけと、真の理由のずれは、46年前、1974年11月の田中角栄元首相退陣のケースと酷似しています。田中退陣の理由はよく、1974年10月発売の文芸春秋11月号に掲載された、立花隆による田中金脈のスキャンダルを追及した記事とされます。優れた記事で、田中退陣のとどめとなったと言えますが、実は最大の理由は政策の失敗──列島改造政策による超インフレが国民の怒りを買ったためです。あくまで政策の失敗が、田中内閣発足後の衆院選、参院選での(自民党の)大敗を引き起こしたのです。

〇この昭和と令和の2つの退陣劇は、当事者の首相自身は、政策の失敗を失敗と自覚していない点までそっくりです。そしてこの相似から、何が言えるか。1つは後継内閣について、辞めていく首相には発言権がないということです。田中元首相も辞任当時、自民党内において、今の安倍首相よりはるかに力を持っていましたが、いわゆる椎名裁定で三木さんが指名されると、意中の大平さんを推すことができませんでした。

〇後継首相に誰が適任かという議論の中では現状、自民党の岸田政調会長、石破元幹事長、菅官房長官らの名前が挙がっています。しかし、安倍首相が政策の失敗で辞める以上、岸田政調会長、菅官房長官が後を継ぐのはおかしいのではありませんか。2人は安倍首相の政策を支えた中心人物であり、安倍首相の政策が失敗なら、連帯責任を負う立場なのですから。

〇新型コロナウイルスの、執拗な感染力とそれがもたらす社会のひずみに立ち向かい、それを正していくのに今、日本の政治で最も足らないのは「論」です。何が問題で、それに対しどういう道筋でどう立ち向かうか。安部内閣はそうした議論をして、国民に理解してもらう姿勢が決定的に不足していました。だから、こうした国難の時に平気で国会を閉じられるわけです。

〇こういう時に自民党の総裁選挙が行われるのは、大きなチャンスです。コロナ対策いかにあるべきか、候補者同士が「論」をぶつけ合い、その中で新しいリーダーを選ぶべきです。
両院議員総会で選ぶという簡略形でなく、候補者が「論」を尽くしたうえで、党員全体の選挙で選べるか。その点について大いに注目したいと思います。

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