No.30 父を探してなんとやら

詳しくは書かないが、私は少々複雑な事情のもと出生している。
さらに、壮絶とまでは行かないが、平穏とも言い難い子供時代を送っている。

そんなわけで両親の離婚により父と疎遠になった私は、「何かあっても絶対に父を助けることはないし、骨も拾わない」と固く決心していた。

今ならわかるが、そう決心できたのは私の思慮が浅かったからだ。

私は半年ほど前からひっそりと父の居所の調査を開始した。
あまりにも単純すぎる動機だが、自分自身が親になって、急に父の顔が見たくなったのだ。
調査と言っても素人が個人でできる範囲のレベルでしかないので、そこまで本格的なものではない。

父と疎遠になって記憶の上では15年ほど。
居所調査の基本中の基本、まずは戸籍の附票を取得した。
最終住所は「職権消除」。いわゆる住所不定というやつである。
この時点でもうほぼ絶望的だ。職権消除になったのが近年であればまだ希望があったが、なんと13年も前だった。

現在も父が生きているならば、2023年の11月で77歳。
77歳!? もう喜寿迎えてるのあの人!?
繰り返すが、「生きているのならば」の話だ。

住所不定の高齢者がどのような生活を送っているのか。
意外と住所不定でも困らないという話は聞くので、普通に生活しているのかもしれない。
それとも、遺体が見つかっていないか、身元不明な状態で亡くなっているのか。

戸籍の附票を取得したときに、窓口の女性は「ご健在です」と私に言った。
私はただ戸籍の附票が欲しいと依頼しただけなので、聞いてもいないのに突然言われたこの言葉にとても驚いた。それと同時に、安堵した。

しかし今思えば、なぜわざわざ「ご健在です」と私に伝えたのだろうか。私の胸の内を察して「戸籍上の事実」をあえて言葉にしてくれただけかもしれない。
もしくは、ひょっとしたら、私には目にすることのできない父の情報が窓口の女性には見えていたのか。(実情は知る由もないので、これは希望的観測でしかない)

戸籍で住所が追えないなら、あとは自力で探すしかない。
母の最後の記憶を頼りに、父が働いていた可能性が高い場所、関連しそうな団体や地域の広報誌、官報など、インターネットで得られる情報を徹底的に調べた。結局、何も見つからなかったけど。

今さら後悔しても遅いが、手紙でもなんでも、定期的に連絡を取り続けていればよかったな。
弟も気にしているようだったので、これからも合間で情報収集は続けたい。

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