2023年3月下旬。汗ばんだ右手でマウスを掴みながら、私は自分で自分の行動にドン引きしていた。
アメリカ行きの航空券を買ってしまったのである！

それはWBCで日本が優勝してから、わずか数日後のことだったと記憶している。

「私はこのまま、大谷翔平を生で見ずに人生を終えて後悔しないのか？」
この思いがふつふつと湧いてしまったのだ。

厳密に言うと私は大谷を見たことはある。
日ハム時代に札幌ドームまで見に行っていたし、空港ですれ違ったこともある（周りに誰一人いなかったから、「大谷翔平と二人きりになった」と言い張っている）。
それでも海を渡った後の彼は別人だと、今大会で思い知らされた。見に行かなくて本当に後悔しないのか？

「行かない」という選択肢を採った場合、後悔することは目に見えている。
こう考えてしまった時点でアメリカ行きは決まったも同然であった。良くも悪くも私はバカだ。

ここまで読んだ人は、「まあ、いいんじゃない？」と思うかもしれない。だが私は既婚者なのである！
私は在宅フリーランスで休みの融通も効くが、夫は会社員。急に長期休暇など取れるわけもない。
つまり、必然的に1人でアメリカへ飛ぶことになる。
私はダメ元で夫に聞いてみた。

「いや〜、WBC凄すぎてロサンゼルスまで見に行きたくなっちゃったな！」
「どうせそう決めたら行くんでしょ」
よくわかっていらっしゃる。

後日談だが、私はこれがアメリカ行きの許可だと捉えたものの、夫は許可した覚えはなかったらしい。よく考えたらそうですよね。申し訳ない。

さて、いつ行こうか。とにかく早く行きたかった。
大谷はここ2年ほど大きな怪我なくプレーできていたが、どうしても怪我しやすいというイメージが拭いきれない。
そのため、疲れが出ていないシーズン始めが一番怪我のリスクが低く、プレーを見れる可能性が高いと踏んだ。
結果としてこの判断が正解となるシーズンとなってしまった……。

ここまで話を進めたものの、私はまだ自分がアメリカに行くとは思っていなかった。特典航空券（マイル）を使う場合、ロサンゼルス行きは人気便のため空席はないと考えていたからだ。
流石に満席だったら諦める。飛行機代にウン十万は払えない……。

空いてるじゃんか。

しかもしっかり帰りの空席もあり、無理しない旅程が組めそうだったのだ。
手汗だらけのマウスを操作しながら、アメリカ行きのチケットを確保してしまった……。

一番懸念したのは治安……ではなく、夫のことだった。流石に申し訳ないし、夫の関係者にはヤバい嫁だと思われるであろう。
当たり前だがドン引きされた。それでもこの衝動は止められねぇ……！
ドン引きされたことについては時間が解決してくれることを祈るばかりであるが、夫には今でも本当に申し訳なく思っている。次は一緒に行きたい。

出発までの猶予は1ヶ月だった。パスポートを取得したりホテルや試合のチケットを取ったり、夢だったグランドキャニオンの現地ツアーも予約した。

1人でデカい荷物を持ち歩くのも面倒なので、すべて手荷物に収めた。服は現地で洗濯すればいいし、リュックサックも詰めたから帰りの荷物が多少増えても問題ない。

さて、準備は整った。行くぞ！

よくある質問

Q. 海外旅行慣れてるんでしょ？
A. 台湾に一度行ったきりです。

Q. 英語話せるんでしょ？
A. 読めない聞けない話せない。DMM英会話で突貫工事を企画するも1週間で飽きてしまいました。
大切なのは勇気。スピーキングは中学英語でも伝わるし、リスニングも意外となんとかなります。受験リスニングが意地悪すぎるんや。ただ、トラブルがあるとマジでヤバいから筆談の準備はしました。

Q. 安全対策どうなってるんや
A. パスポート、財布、スマホはウエストポーチに入れて文字通り肌身離さず持ち歩きました。現金はスーツケースにも。
治安の悪いところはなるべく旅程に入れず、移動は極力Uberを使いました。アナハイムだけはめちゃくちゃ徒歩移動しましたが。よって、ロサンゼルスエンゼルスの試合を見に行ったにもかかわらず、ロサンゼルスは通過しかしていません（※）。ドジャースタジアム近郊は治安悪いみたいだし、マジで今年行って正解でした。
※エンゼルスの本拠地はロサンゼルスではなくアナハイム。東京ディズニーランドが東京にないようなもんです。
また、家族の不安解消として位置情報共有アプリを入れて夫が私の現在地を知れるようにしておきました。が、全然見てくれなかった。心配じゃないんか。

誰かの参考になると思って書き始めたけど、よい子は真似しない方がいいな……。