日本三大奇書を読んで

つい先日、『ドグラ・マグラ』を読了した。これで日本三大奇書と呼ばれるものを制覇したことになる。本を知っているわけでも文章が上手いわけでもないが、書評ともつかぬ感想をつらつらと書いていきたい。

ご存知の方も多いかと思うが、『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』、そして先述した『ドグラ・マグラ』が三大奇書である。それぞれが奇書と呼ばれるだけある。

『黒死館』は、何よりも作者小栗虫太郎の蘊蓄の真骨頂とでもいえる作品である。核となる殺人事件そのものはそう複雑なものではない。しかしそこに関わる様々な事項が、激流の如く私たちを圧倒し、幻惑させるのだ。結果として、「わけがわからない」という読後感が残る。専門外の学術書じゃあるまいし、小説でこのような感覚を抱くことがあるとは夢にも思わなかった。しかしそれが癖になってしまうのだから、小栗虫太郎の筆力には感服せざるを得ない。

『虚無への供物』は、人間の本質と戦後間もない日本の雰囲気を巧妙に絡めた作品である。密室に続く密室が、読んでいる私たちの頭脳を翻弄する。殺人が起こりすぎるが故に、終盤ではなんとなく犯人が分かってくる。しかしそれでも最後の謎解きには目を見張るものがある。私の人生において、出会えてよかったと思える一冊である。

『ドグラ・マグラ』は、読んだ者の精神に異常をきたすとも言われている。実際に読んでみてその意味が分かったような気がした。二つの殺人事件とそれに関わる三人の生者。人間の精神・心理の複雑さが犯人の比定を阻む。否、そもそも何の犯人なのか、どの点を持って犯人とするのか。二人の博士の思惑が更に交錯し、読めそうで読めない展開に弄ばれること必至である。

というようなことを、それぞれの本を読み終わった後に思った。だが元来私は底の浅い人間なので、書物が生きがいの諸氏にとっては憤激物の感想かもしれない。その点はご容赦願いたい。

このような感じで、思ったことを気まぐれに書き連ねていきたいと考えている。気まぐれ故にいつ書くかは分からない。また私の拙文を読みたいと思う物好きがいれば、気長にお待ちいただけると嬉しい。

梅雨の始まりを告げる雨音と共に

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