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地銀、相次ぐ持ち株会社化

 経営統合せず単独で持ち株会社をつくる地方銀行が増えています。

 沖縄銀行、十六銀行、北国銀行は10月1日、持ち株会社を新設するということです。

 証券業務やファンド運営といった機能を銀行傘下から切り離し、それぞれの機能を強めるのが狙いです。

 超低金利下で収益源を広げる必要に迫られていると同時に、融資だけでは取引先のニーズに応えられなくなっている実態が背景にあります。

 銀行の持ち株会社化はこれまで、経営統合が絡むことが多かったようです。

 銀行同士は合併せず持ち株会社の下にぶら下げて存続させる手法です。

 今回、金融庁から認可を得た3行は他行との経営統合を絡めず単独で持ち株会社に移行します。

 銀行がすべての子会社を抱える形を改め、持ち株会社の傘下に銀行とその他の子会社を並列させています。

 先駆けとなったのが広島銀行です。

 2020年10月にひろぎんホールディングス(HD)へ移行しました。

 今年4月に街づくりを担う「ひろぎんエリアデザイン」、人材紹介を手がける「ひろぎんヒューマンリソース」をHD傘下に新設。

 計7社が銀行の子会社ではなく兄弟会社としてHDの下に並ぶ。

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 事業変革や人手不足、デジタル化への対応など、多様化する地元企業のニーズに総合的に応えるため、業務範囲規制が厳しい銀行では提供しきれない機能を兄弟会社に担わせるのが狙いである。

 ある地銀関係者は持ち株会社の設立が相次ぐ理由を「銀行傘下では新しい発想が生まれづらい」と指摘しています。

 低金利環境が定着しても、預金と融資の金利差で稼ぐのが本業の銀行にとって融資からの脱却は容易ではない。

 地域商社といった新たな領域を収益化するためのガバナンスや人材育成を持ち株会社が主導する姿を描く。

 北国銀行は「次世代版 地域総合会社」への転身を掲げる。

 融資ではなく事業会社に出資する場合、銀行は上限が原則5%に制限される一方、持ち株会社は15%まで可能だ。

 さらに今年11月に施行する見通しの改正銀行法では、異業種への参入が大幅に緩和される。

 システムやアプリの販売、広告、人材派遣といった事業を銀行の兄弟会社が営む場合、届け出のみで済むようになる。

 個別に列挙されなかった業種でも、認可を得れば「すべての従属業務を収入依存度規制なしに営むことが可能」と明確化した。

 「銀行と切り離された持ち株会社の傘下の方が認可を得やすいだろう」との思惑も、持ち株会社への移行を後押ししている。

 課題は銀行と切り離した効果を高められるかだ。

 大手銀行は約20年前に持ち株会社に移行した。

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)が傘下の証券会社や運用会社トップに生え抜きや外から招いた人材を起用したほか、東京きらぼしFGも外部の人材を子会社トップに登用している。

 ただ、こうした動きは少なく、銀行出身者の事実上の「上がりポスト」になっているケースが多い。

 もっとも、持ち株会社化しても銀行の存在が圧倒的に大きい構図は変わらない。

 合併に伴い持ち株会社をつくった地銀の幹部は「銀行を執行機関の一つに位置づけなければいけないが、進め方は常に悩んでいる」と漏らす。

 急激に制度や業務を見直せば、行員の統率がとれなくなるリスクもある。

 金融庁幹部は「誰かのまねをするのではなく、自分たちの身の丈を考えて進めることが重要だ」と指摘する。

 事業の変革が待ったなしのなか、持ち株会社化はひとつの手段になり得るが、結局はそれで何をするかにかかっている。











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