見出し画像

永遠のこどもたち

身体が動かない。
薄暗い部屋に一人きり。
横たわる私の身体を縛るものは特にない。
ただ…動かない、動く気力が無い。

鐘の音がうるさい。
これは鳴っているのか、鳴っていないのか。
恒常的に鳴り続ける鐘の音。
現実が分からない。

ここは何処だ。
何処でもいい。
ただ、ここは神聖な場所。
何処でもない。
壁の向こうは死んでいる。
世界はきっと終わっている、そうでしょ。

目を閉じると開けたくなる。
目を開けると閉じたくなる。
身体を這うささくれ立った指の感触。
男は言ったな。
「あたたかいね。ありがとう。」

じっとり濡れた身体が今は乾いて痛い。
子どものようにはしゃぐあの声が今は遠い。
微かに漏れる息が声にならない。
虚空を見上げ流れる涙を私は拭えない。
二人きりの世界は一人きりに成れ果てた。

どうしてこうなったのか。
しかしこの思考に意味が見出せない。
「思い出すのは、忘れたからでしょ」
そうなのかもしれない。

無情に残されたこの惨状。
全てを受け入れた結果がこれだ。
耳に詰め込んだ戯言が招いた愛憎。
救いなど求めなければ良かったのだ。

部屋を風が抜ける。
うるさい鐘の音はきっと心の臓の断末魔。
理解した。私は全てを理解した。
動かぬ身体は霧に包まれて浮遊感を増していく。

そこに祝福などない。
新しい世界など訪れない。
ここにいたからここにいる。
まる、さんかく、しかく。
全てが型に嵌っては通り抜けていく。
あぁ永遠とは…

おやすみ世界。
どうか醒めない夢を私に下さい。

〈終〉


※“お茶代” 12月課題 by.脱輪氏
『脱輪の楽曲からインスピレーションした何かを書け』に参加する過程で生まれた散文詩です。

規定の1000字に足りなかったのでおまけという型での投稿にしましたが、本当はこちらが本投稿にしたかった作品です。
因みに“Dear”の方との内容の繋がりはありそうでありませんが、繋がりをもった解釈でも良い感じです。お好きな方でよろしくお願いします(ぺこり)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?