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自分史 自業自得と時々外されちゃう梯子⑬

この記事は続編です。ここに至る経緯はこちら
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社会人時代編ダイジェスト(1480字)


・入社してからのギャップ
・裏切りと退社

とにかく華々しい業界に入った。ここで思い描いたことを形にしていくぞと浮かれていた僕だったが、新入社員研修が終わり配属先が決まった頃には、厳しい現実を知ることになる。

僕がリクルーターに語った理想を、もしかしたらこの会社は叶えてくれるかもしれない。僕はそんな淡い期待も込めて入社した。

つい最近まで世間知らずの学生だった僕が語った戯言で、そんな簡単に新規事業が立ち上がるわけもなく、僕らの大半はソルジャーとして採用されたのだと知るのはそう遠くなかった。

配属先の支店では、まずは何が行われたか。

半年間はお客様のもとで肉体労働。これは単純に自分自身の業界理解を深めるために勉強してこいという理由と将来的に任せられるお客様との間にパイプを作るため。という名目の研修だった。しかし、実態は奴隷以下の扱い。研修先やスケジュールは有無を言わさず上司が決めており、言ってしまえば上司のお客様への点数稼ぎである。上司といっても支店長レベルですら、プレイングマネージャーなのだ。担当営業の匙加減も多少あるが、結局大手で何店舗も展開しているお客様との間では、上層部同士で取り決めがされている。俗にいう「握り」である。つまり、下っ端がいくら営業活動、ひいてはお客様への提案、コンサルティングを行っても、売り上げはほとんど「すでに決まっている」。新入社員だからとかそういう理由ではなく、よっぽど偉くならないと手のひらで転がされているだけなのだ。業界の特性上、新規参入はほぼない。そのため、既存客といかに上手く付き合っていくかが全て。それ以外生き残る道がない。

これは今考えても面白くなかったと思う。

お客様は労働力を求めている。
会社はお客様へ恩を売り、商品を購入してもらう。
新入社員は業界の理解度を深め、客先と太いパイプを作るため、勉強させてもらう。

一見すると、win-win-winに見える罠。
同期が1、2人と辞めていく。それを見越しての採用なのだろう。
給料だけは抜群に良かった。新卒で何も出来ない状態なのに手取りで30万円弱あった。いろいろと狂っていた。


一言でいうと『忖度で成り立っている狂っている業界』なのだ。
メーカーの人間は、商品を売るためならなんでもした。
お客様に気に入られるため、なんでもした。
気に入られることが全て。気に入られなければ、どんな素晴らしい仕事をしようにもケチが付く。自分は愛玩動物か何かなのかという錯覚を起こす。

ご主人様に気に入られなければ、捨てられる、殺される。
富岡義勇先生(鬼滅の刃)の言う「生殺与奪の権を他人に与えている」状態。

どんな時でも声が掛かれば飛んでいき、無理難題をこなす。
極論を言えば、死ね 以外のほぼ全ての要望に応えられる人しか生き残れない。夜中に県外で酒の席に引きずり出されることも、そのまま朝まで付き合うことも、脱ぎ芸なんてお手の物。むしろそんなので済むなら安いものだ。

どんどん感覚がおかしくなってくる。

ある日も県外で酒を飲まされ、ホテルの入り口でタクシーを降りた。
そのまま地面とハグ。もうとっくに立てないし、冬でもないので寒い。体がガクガク震えている。助けを呼ぼうにも顎がガクガク震えていて声も出せない。それなりに酒の飲み方も学んできたつもりだったが、これはもうダメだろ。

そこから記憶がない。


つづく

~~~マガジンにまとめてみました~~~
自分史 自業自得と時々外されちゃう梯子



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