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大晦日に、まさかのSPO2が58%・・・てんかん発作

大みそかの夜勤中、お母さんが不在時にクライアントがまさかの大発作を起こしてしまった。いやもう、5分以上続く発作って初めて見たからびっくりした。

というのも、ドラベ症候群の患者さんにとって強直間代発作(Tonic Clonic seizure)っていうのは日常茶飯事だけど、発作が落ち着いた後も戻ってこなかった・・・これは・・・てんかん重積(てんかん発作が30分以上続く。早期に対処しないと脳に大きなダメージがある)になるかも?と、ミダゾラムを引く準備をする。発作が5分続いたら投与する決まりになっている。早く判断しないと、薬剤を準備する時間がなくなってしまうのです。
 *ミダゾラムは鎮静剤で、ドラベ症候群の患者さんは発作が長引いた時に使用します。

この薬は、まずシリンジに針をつけて、バイアルからシリンジに薬液を引いてアダプターを付けなければならないんです。これが暗闇だとうまくいかない。しかも、バイアルはまさかのかなりの陰圧。日本ではアンプルだったんだよなぁ・・・

てんかんの発作はどのような状況かというと、全身が硬直して突っ張る発作が起き、白目をむいて体がカクカクしたりします。通常はこの状態が数十秒から1分程度続いて発作が終わった後、一時的に酸素飽和度が落ちたり心拍数が170以上に上がったりしますが特に何もしなくてもすぐに回復します。

ところが、昨日は2分間硬直した状態(強直発作)が続いた後、クライアントは我に返ったのですがまだぼんやりしていてSPO2が突然ドロップしました。90%以下になると酸素投与しなければならないのですが、一気に72%に下がり、酸素マスクをつけても上がるどころか58%に更に下がる。58%っていうのは、尋常じゃありません。すぐに酸素を10L投与。でもなかなか上がってこない。まじかよー!呼吸してないんじゃね?痰か何かで気道が閉塞した気配もないし、でも、とりあえず、サクションしてみる。うわー、これ呼吸しないとやばい!でも、サクションで何も引けなかったけどその刺激かしらないがSPO2が72%まで上がってくる。でも、まだ低い。まだ発作続いてるのか・・・ミダゾラム鼻から投与。嫌がって顔を振ることがあったのを知っているので、少量ずつ投与。すごく苦そうな表情をして、咳き込んだりする。一気に全量投与してもいいんだけど、吐かれても嫌なので少しずつ投与する。すると、SPO2回復。いきなり100%を示す。うわ!100%なのに10Lはまずいじゃんか・・・と酸素下げる。するとSPO2は90%まで下がる。呼吸抑制か?いや、酸素増量だ。すぐ98%とかに上がる。とりあえず残りのミダゾラムをちょっとずつ投与すると突然、
「ガクっ」とクライアント脱力。
うわ、落ちた(心の声)
これ、過剰投与?指示量の80%投与したところで、お母さん登場。発作対応中に外出中のお母さんから連絡あったので、ミダゾラム投与するところだということとと酸素が上がってこないことを報告して帰宅してもらったのだ。発作が始まって15分ほど経過していた。

お母さんが来たときには、発作は落ち着いたようで呼吸も正常化していたが、心拍数が頻回に上昇して落ち着かない。お母さんは、指示量全部投与するように言われているとのことで、ミダゾラム残量も投与(トータル10mg)。クライアントの眼球がまだ上転気味なので、お母さん更にミダゾラム投与。そして、フェノバルビタールも追加。ようやくクライアントの心拍数が130台まで下降。念のためカヌラで酸素2L投与継続。

おかあさんは、慣れたもので眠っているクライアントをガンガンサクションする。ただ、発作が終わったかどうかは判断は難しいと。もう、ミダゾラムとフェノバルビタールで完全に深い眠りに落ちている。鎮静中の患者のまぶたをめくってみたことはないから(ご臨終に近いときはあります)この状態が寝てるのか発作なのか区別がつかない。お母さんは、この状況を何百回も経験しているからどのくらいが正常なのかわかるんだろう・・・

クライアントはドロドロ(医療従事者の間で、患者が鎮静剤などで深く眠っている状態を形容する)だったが、翌朝は7時にはスッキリ目覚めていたという。

そして、今日もいつもと同じような一日を過ごした。カフェインを投与しなかったので彼女は少し眠そうであったが、頭痛もなさそうだった。
昨日の発作ってあれ普通?と、お母さんに聞いたら
「まあ、普通じゃないけど時々ある」とのこと。
お父さんも、
「昨日大きい発作があったって聞いたよ。一度に何でもかんでもやらなきゃならないから忙しかったでしょ?」と笑っている。まあ、だからプレフィルドシリンジがあったほうがいいんじゃないかと思う。(他のナースたちは薬剤投与できていないことが結構ある。酸素やサクションでバタバタしているうちに発作が止まるのだ)

正直、発作が始まってから呼吸が回復するまで約15分程度だったのだが、SPO2が上がってこなかった時には、冷や汗ものだった。呼吸停止してしまったら、挿管するしかないのだから・・・
SPO2が58%って嘘だろう?って思う。そんな低い値を拾えるのか?日本でてんかん重積の患者さんを看護したことはないが、呼吸器疾患の患者さんなどがSPO2 70%なんか示したらもう、神様のお迎えが来ている状況だ。数年ぶりに患者のSPO2が90%→80%→70%→あれよあれよというまに0%という記憶が蘇った。

強直間代発作が終わったのに、呼吸していないような感じ、あれって何かお母さんに聞いたら、痰とかの分泌物が詰まったかPartialの発作だと言った。
ゴロゴロしたりひゅーひゅーしたりする音は聞こえなかったから、気道分泌物による閉塞というよりもなんらかの原因で無呼吸になっていた気がする。
とりあえず、12月はミダゾラム使用回数は4回。その他1,2回は投与する前に発作が終わっている。月平均4から6回ミダゾラムを使うほどの大発作が起きる。10代後半になって発作回数が減ったというが、年間70回程度大発作がある計算だ。これはやはりただごとではない病気だ。

いやもう、発作の理屈はさっぱりわからないけど、大荒れの大みそか。
日本では、大地震と津波。
今年は、平穏な一年であることを祈る。




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