見出し画像

ボケたと思った母が、帰国後もとに戻った

夏休み最後のLong weekend、フェリーは混雑していました。ここぞとばかりに遊びに行くカナディアンたちで、駐車場はほぼいっぱい。仕方なく、朝イチのフェリーでバンクーバーへ。

ホテルに荷物を預け、スカイトレインでバーナビーにある日系文化センターに向かいます。この週末は、日系まつりが開かれるからです。

日系文化センターに行ったことは時々ありますが、まつりに参加するのは初めて。母は、カナダに来てから、家族以外の人とほとんど話すことがなかったので、日本語を話すいい機会になると思いました。

私の家は、雇用主の家の敷地内にあって徒歩で行き来する事ができる距離でしたが、母は促されなければ家から一歩も出ようとしませんでした。
足が痛いと言って、外に出ようとしないのです。痛いけど、痛み止めは飲まない、安静にして治そうとする・・・
結局、私が朝晩薬杯にアセトアミノフェンとグルコサミンカプセルを入れて飲ませて、ようやく痛みが取れて歩き回れるようになりました。

散歩ができるトレイルも目と鼻の先にあるのですが、あらかじめ予定を立てなければ、行こうとしませんでした。
そもそも、起こさないといつまでも寝ていました。時差ボケなのかもしれませんが、11時近くまで寝ている日もありました。
ビーチに行っても、ぼんやりして特別感動もない。面倒だから車から降りないetc。
意欲や感動が薄くなっていました。

地域の博物館には、暇なお年寄りやボランティアがいるので、スマホアプリの翻訳機を使って交流を試みましたが、wifi環境でなければ、翻訳機能はうまく働きませんでした。また、実際wifiがあっても、「あれ」「えーと」「おかしいな」など独り言や周囲の音声も拾ってしまって変な訳になってしまい、うまくいきませんでした。そもそも、通訳アプリというものは、「ガチの日本語」を英訳できるほどの高機能ではありません。母のバカ丁寧な、ゆっくり話す会話をアプリは上手に通訳できませんでした。
「あのー、えーと、わたくしは、〇〇の母で〇〇〇〇(フルネーム)と申します。本日は、あのー、わざわざ、ご招待いただきまして、大変ありがたく思っております。」
通訳アプリを使うときは、話す内容を極力シンプルにして、主語や目的語を追加するように意識しないと、変な訳になってしまいます。
しかも、普通に会話するのに、なぜか天皇陛下にでも話すような最高敬語を使おうとするものだから、通訳するのに時間はかかるし、せっかくの最高敬語も
「Thank You」だけになっちゃってました・・・
Thank you なら、アプリ使わなくても言えるわー!

そもそも、私の同僚たちと会っても
「Hello」は言えても、その後が全然続きません。
「Hello,  How are you?」と自己紹介。練習してきたと思うんだけど、まるで江戸時代、ガイジンに初めて会った人みたいに固まってしまうのでした。

札幌という大都市に住んでいて、多数の外国人を目にする機会はあっても結局、今までの人生で一度も話す機会はなかったようなのです。

意欲なし、無感動、薬飲まない、引きこもり・・・
年齢相応の物忘れならわかるけど、毎日モノ探しをしています・・・
これは、認知症っぽいなー・・・
しかも、歩き方もおかしいし、表情も乏しい。
息子も相当心配していました。

日系まつりでは、大勢の日本人や日系人がいて、素晴らしいことにシニア用の休憩所があったのでそこで休憩させてもらったり、エクササイズに参加させてもらったりしたのですが、母はぼんやりして誰とも話そうとしません。

母は、もともと日系人の歴史や、写真花嫁に興味があってよくテレビでそういう番組を繰り返し見ていました。母は、結婚して海外に渡った人たちに憧れがあったんだと思います。遠い親類に、カナダに移民した人がいるし、母の兄妹の親戚のなかには国際結婚した人もいます。そういう話をよく聞かされました。

日系のお年寄りは、日本語が喋れるから話してみればいいでしょ!どういう経緯でカナダに来たか聞くいいチャンスでしょ!と勧めるとようやく話しかけたみたいです。

さて、空港では飛行機の遅延や搭乗口の変更などがありましたが、なんとか母は飛行機に乗り、日本に到着したようでした。

その後・・・成田から千歳行きの飛行機に乗る、という連絡があったっきり、家についたという連絡はなし。ラインやスカイプで連絡しても音沙汰なし・・・

これは、いったい???

ようやく繋がったときには、
「え、着いたに決まってるでしょ」

あんなにボケボケしていたのに、口調はしっかりしているし、
成田で、荷物が大量すぎてターンテーブルが3つもあったことや、荷物が出てこなくてトラブルになった人が多数いたこと、買ったばかりのスーツケースのタイヤが壊れて出てきたこと、機内でフィリピン人一家に話しかけたことなど教えてくれました。

なんだ、ちゃんと喋れるじゃん・・・

環境が変わるとお年寄りは、認知力が低下するといいますが、まさにそれだったようです。実際、日本の高齢者は、コロナ後精神的にも身体的にも大きな影響を受けたと聞いています。まだ、ボケるには早い!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?