シネラマ

文章を書くのが好きです。それと同じくらい映画を観るのが好きです。

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【小説】喜劇・五輪離婚 ~オリンピック・ディボースショウ~

「だいたい、私は夏って嫌いだし」 「身も蓋もないこと言うなよ」 「そうだね、いまのは忘れて」 「えーと、なんだっけ、どこまで話した?」 「だから、結局は何のためにやるのってこと」 「ああ、そうだ。もちろん、何回も言ってるとおり、選手のためだよ」 「慎一とか賛成派の人たちはそう言うけどね、本当に選手のためを思ってるようには見えないよ。決めるのは選手じゃないのに、上の人が勝手にいろいろ決めたり、方針変えたりして。なのに、選手が批判されたり」 「批判してるのは反対派だろ」 「私はや

    • 以後、更新なし。

       鹿児島 六時十二分 「誰か涙止めてよ。苦しい もう無理だって」  広島 二十三時五十六分 「友達いる人、本当なんなの。全然わかんないや」  沖縄 一時五分 「死にたいけど生きたい。意味不明、教えて」  山形 五時十三分 「しんんんんんっど!」  神奈川 十四時五十六分 「涙しか出ない」  岩手 九時三十分 「どうやったら何ごとも考えすぎないで生きれるのか教えてくれ。考えるなって言われても考えちゃうんだよ。なあ、どうすればいい?」  東京 四時四十四分 「僕も普通

      • 学芸会のような演技?

        よく、映画の感想で「役者の芝居はまるで学芸会レベル」というものがありますが、それってどのレベル? そもそも学芸会で演劇の演目をちゃんと見て、記憶に残っている人がどれくらいいるのか。 覚えてるなら、それは記憶に残る演技なのですごいことでは。 なんか、なんとなくで「学芸会レベル」という印象付けされた言葉が独り歩きしているような。 そういえば、自分の学園祭の記憶では、ルパン三世と古畑任三郎を足した演劇(古畑任三郎のあるエピソードの丸パクリで、登場人物がなぜか皆ルパンたち)を見せ

        • 【小説】この子と一緒に、淵に立つ 〜女子高生 飛び降り自殺配信事件について想う〜

          「ねえ、ほら、いくよ」 「いやだよ、やっぱり怖い」 「一緒にいてくれるって言ったでしょ。友達だよね?」 「うん、でも……」  熱い。暑くはないが、熱い。胸が熱い。テレビやなんかで耳にする『熱い胸騒ぎ』とかいうものとは全然違う。それが迫ると、人は胸が熱くなるのだろうか。少なくとも、わたしはそうらしい。  今日のわたしたちはブレザー姿だが、道ゆく人々にはコートをたなびかせる人たちが多かった。レザージャケットをかっこよく羽織る人も。わたしもこの子も冬はたいてい、ダボついたダッフ

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        【小説】喜劇・五輪離婚 ~オリンピック・ディボースショウ~

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~⑤(完結)

          ※2022年7月8日に発生した、安倍元首相銃撃事件と、それが発端となって社会をゆるがしている、自民党と旧統一教会とのつながりを題材として、高校生たちが議論するという構成の短編連作小説です。作中に、現実と重なる個人名、団体名等の固有名詞は出さず、登場する人物もすべて架空の、あくまでフィクションとして位置づけた作品となります。また、作中に直接の身体的な暴力描写はございません。 ----------------------------------------------------

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~⑤(完結)

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~④

          ※2022年7月8日に発生した、安倍元首相銃撃事件と、それが発端となって社会をゆるがしている、自民党と旧統一教会とのつながりを題材として、高校生たちが議論するという構成の短編連作小説です。作中に、現実と重なる個人名、団体名等の固有名詞は出さず、登場する人物もすべて架空の、あくまでフィクションとして位置づけた作品となります。また、作中に直接の身体的な暴力描写はございません。 ----------------------------------------------------

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~④

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~③

          ※2022年7月8日に発生した、安倍元首相銃撃事件と、それが発端となって社会をゆるがしている、自民党と旧統一教会とのつながりを題材として、高校生たちが議論するという構成の短編連作小説です。作中に、現実と重なる個人名、団体名等の固有名詞は出さず、登場する人物もすべて架空の、あくまでフィクションとして位置づけた作品となります。また、作中に直接の身体的な暴力描写はございません。 ----------------------------------------------------

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~③

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~②

          ※2022年7月8日に発生した、安倍元首相銃撃事件と、それが発端となって社会をゆるがしている、自民党と旧統一教会とのつながりを題材として、高校生たちが議論するという構成の短編連作小説です。作中に、現実と重なる個人名、団体名等の固有名詞は出さず、登場する人物もすべて架空の、あくまでフィクションとして位置づけた作品となります。また、作中に直接の身体的な暴力描写はございません。 ----------------------------------------------------

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~②

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~①

           ※2022年7月8日に発生した、安倍元首相銃撃事件と、それが発端となって社会をゆるがしている、自民党と旧統一教会とのつながりを題材として、高校生たちが議論するという構成の短編連作小説です。作中に、現実と重なる個人名、団体名等の固有名詞は出さず、登場する人物もすべて架空の、あくまでフィクションとして位置づけた作品となります。また、作中に直接の身体的な暴力描写はございません。 ---------------------------------------------------

          【小説】もしも、あの日に戻れたら ~高校生たちが議論する、元首相銃撃事件~①

          有償限定!特効おまけ付きダブルリトライ・ステップアップ親ガチャ

          「おい、起きろ」 「あ? なんだよ、まだ寝かせてくれ」 「お前のために来てやったのに、なんて言い草だ。これならどうだ?」 「うお! なんだそれ、本物の拳銃か?」 「ようやく目が覚めたようだな」  辺りを見渡すと、打ちっ放しのコンクリート壁で囲まれた部屋にいることに気がつく。広さは教室くらいだ。 「どこだよ、ここ? それにあんたは? とりあえずそれ、下げてくれよ」 「さっきからタメ口だな。見た目にもお前より年上だろうに」  目の前には四十くらいの中年男が立っている。坊主頭

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          【小説】絶対に夜空は見上げない

           お父さんも、お母さんも、コンタ兄ちゃんも、マイちゃんも、裕二君も、みんな、みんな、見上げている。いったい、何が楽しいんだろう。 「ほら、いつまでも拗ねてないで、彩子も一緒に夜空を見上げましょう」とお母さんが困り顔で言う。  昨日、私はマイちゃんのお誕生日会で嫌な思いをした。マイちゃんのお母さんが、時間をかけて焼き上げたバースデーケーキ。環を作るように苺で飾り立てられ、真ん中には特段大きな苺が乗っかっている。歳を重ねた数と同じ、合計十二個の苺たち。マイちゃんママスペシャルだ。

          【小説】絶対に夜空は見上げない

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』最終話 文句なしの大勝利

           遠くから声が聞こえる。やたら活舌がいい。 「よかった、気がついたようだな」 「ああ、うん」と私は半目で抑揚のない返事をした。床の上で、くの字に寝た格好をしている。どうやら意識を失っていたらしい。 「私、気を失ってたのかな。どれくらい寝てた?」 「十分程だ」 「たったの? そうなんだ」  突発的な怒りで感情が抑えられなくなり、パニックを起こしたことがウソのように、私は冷静になっていた。 「そうだ、洗濯物」と言いながら立ち上がり、私は洗濯機から衣類を取り出し、併設されている乾燥

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』最終話 文句なしの大勝利

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第5話 いつか見た未来

           きっかけはない。気づいたときには、薬の量は減り、白黒のメリーゴーラウンドにもあまり乗らなくなっていた。カウンセリングは続けていたが、正直、自分の話をするのは好きじゃなかったし、役に立っていたのかは疑問だ。担当の先生は面倒見のいいお姉さんといった感じの人で、それなりに好印象を持っていたけれど、心を開く程には自分を彼女に委ねることができなかった。先生が遠方へ転勤となったことを機にカウンセリング通いはやめた。性犯罪被害の自助グループに誘われることもあったが、行くことはなかった。だ

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第5話 いつか見た未来

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第4話 絶滅犯罪

           自分を消したいと思ったことは何度もあった。痛みを伴う具体的な自殺までは考えなかったが、消えてしまいたい思いはしょっちゅうだった。被害を受けている間の記憶は痛みと重さ。強い力で押さえつけられ、圧しかかられ、激痛が走る。一瞬、重さがなくなったかと思うと、また別の重さで押し潰されそうになる。小学校低学年の頃、プールで遊んでいるとき、従兄弟の少年の悪ふざけで水中に沈められ、水面に顔を出した直後にまた沈められることを繰り返しやられた。抵抗できない恐ろしさだった。それに近い恐怖を、あの

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第4話 絶滅犯罪

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第3話 彼女たちの顔

           コインランドリーの室内には、一匹の猿と一人の女しかいない。お互いに押し黙ったままだ。 「天使が通った」と私は言った。 「なんだそれは? いや、待ってくれ。思い当たるふしが……『地獄の黙示録』だ。そうだろう?」 「なにそれ」 「映画だ。その作品の中で、登場人物が『天使が通った』と言っていた」 「そんな映画あったような。タイトルは聞いた覚えがあるけど見てないや。戦争映画は好きじゃないし。まあ、でも意味はわかったでしょ」 「気まずい沈黙を作ってしまったな。すまない」 「いいよ。あ

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第3話 彼女たちの顔

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第2話 コズミックリポートNo.26

           回転する白黒のメリーゴーラウンド。私の場合、端的に表すと、そういうものだ。当時は酷いもので、毎日だった。目の前の景色がグルグルと回りだすように見え、おまけに色が失われていく感覚。白黒というより、色自体が抜かれていくとでもいえようか。白や黒という認識もできないが、言葉にすれば白黒かもしれない。そして、めまいと息苦しさ。腹部の張りと痛み。頭痛と腹痛と息が詰まる苦しさを抱えながら、乗りたくもないメリーゴーラウンドに無理矢理、乗せられる感覚だ。苦痛以外の何ものでもない。そうなったと

          【小説】『性暴力が星を滅ぼす』第2話 コズミックリポートNo.26