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常連さんに愛され、約12年も交通会館マルシェに出店!茨城発・元気村 西山克彦さんインタビュー

西山克彦さん
行政機関にて、農業関係の仕事に従事。本業のかたわら、農業や食に関する講演活動も実施。52歳で退職後、2007年に茨城県常総市にて農事組合法人 産直市場「元気村」を立ち上げた。交通会館マルシェにて、約12年にわたって農作物を販売している。


根底にある「人の役に立ちたい」という想い

──「元気村」を始めた経緯を教えてください。

私の娘がアトピーを発症したことがきっかけでした。娘の皮膚に異変が起き、その原因を知りたいと思って、いろいろな本を読んで調べていたんです。

たどり着いたのは、「食べ物」。収穫後の農作物に農薬を散布する「ポストハーベストアプリケーション」が輸入農産物に行われていて、それがおそらく原因だろうとわかりました。

その出来事を受けて、食の安心・安全について発信したいと思い、本業のかたわらで講演活動をするようになりました。

ある時、大勢の農家が集まる講演会で農業の未来について話をした際に、一人の農家さんから「西山さんは時給数千円で働いているかもしれないけれど、私たちの収入を時給換算すると、270円にも満たないんです」と苦労話を聞いて……。一方的に私が話すのではなく、農家さんと一緒になって活動すれば、志を共有し、現状を変えられるのではないかと思ったんです。同じ立場で、もっと協力できる方法はないかと考え始めました。

──現場の声を聞いて、西山さんは農家さんと一緒に農業の未来を変えていこうと行動に移したんですね。

そうですね。講演会で多くの方が話を聞いてくださるのですが、実際に行動を起こす人はごくわずか。50歳になったら本業を辞めようと思っていたことも重なり、農家さんに寄り添うようなことをしようと決意しました。その頃は、まだ茨城県の常総市に直売所がほとんどなくて、農作物を売るのに困っている農家さんが多くいたんです。農家さんは農作物を育てるのに精一杯で、販売まで手掛けている暇はありません。そこで、私が代わりに販売を手伝おうと、2007年に茨城の常総市に直売所「元気村」をスタートしました。

農事組合法人 産直市場 元気村

──なぜ「元気村」という名前をつけたんですか?

阪神淡路大震災の時に活躍したボランティア団体「神戸元気村」から名付けました。

阪神淡路大震災は「ボランティア元年」と呼ばれ、多くのボランティアが駆けつけたんです。そんな中、自発的な人たちが「神戸元気村」を立ち上げ、復旧・復興に向けて精力的に活動を続けていました。その姿を見て感動したんです。私も農業ボランティアとして「単なる物売りではなく、人に役立つ支援をしたい」と思い、「元気村」という名前にしました。

──元気村の組合員になる農家さんはどのような方が多いのでしょうか?

元気村が主催する勉強会などを通し、有機栽培の野菜や果物を扱う農家さん(以降、組合員)を育てているため、品質と安全性の高い農作物を出荷する組合員が増えていますね。

彩り豊かな野菜が元気村に並んでいます。

──販売面以外にも、組合員のサポートをされていることはあるのでしょうか?

組合員のモチベーションを上げる肝は、収入の向上です。そのために、売れる作物の栽培を推奨したり、収入を上げるための播種期・定植時期・仕様有機物などを提案したりすることを欠かしていません。長期間の天気予報や、関連する農業紙などからの情報を取得しながら組合員のサポートをしています。

1日に600人も来店!「元気村」が愛される理由

──交通会館マルシェには、いつから出店されているのでしょうか。

2012年からです。3月11日に東日本大震災がありました。その年の6月、風評被害で桃の売り先を失った福島県の斉藤君という青年が、「元気村に行くと助けてくれるかもしれない」と人づてに聞いて、元気村にやって来ました。どこの情報か根耳に水でしたが(笑)、震災による原発事故で連日「福島・茨城」が連呼されていた時期です。乗った舟が、泥舟にならないように(笑)、斉藤君の桃と地元野菜を積んで都内各地で開かれていた「復興支援マルシェ」に1年かけて売り歩き、定点販売として「交通会館マルシェ」に出店を始めました。

1年経っても風評の影響は大きくて、茨城・福島からの出店者が次々と出店をやめていきました。そんな中でも、意地になって出店を続けていると、「おじさんがんばって!」「応援してるからね!」「友だち連れて来たよ!」という声を聞くようになり、1年後には当初の4倍ものお客様に来てもらえるまでになりました。コロナ禍で、一時期はお客さんが減ってしまいましたが、だんだんと戻ってきて、今では1日600人くらいのお客さんが野菜や果物を買いに来てくれます。

──1日600人!多くのお客さまに愛されているんですね。

大行列になることも多いです(笑)。

いつもたくさんのお客様が元気村に立ち寄ります。

私が店頭に立っていると、差し入れをくれる方もいて。そういえば、以前プーさんのぬいぐるみをくれたお客さんもいましたね!

──いつもポケットからプーさんのストラップが見えていて気になっていました!そんなエピソードがあったんですね。あと、「ポチさん」と呼ばれているとの噂も耳にしたのですが、それは本当ですか…?

ほんとうです(笑)。ときどき「ポチ日記」(ペンネーム・ポチ)で書き込みをしているので、その日記を読んでいる人から「ポチさん」と呼ばれています。マルシェに毎週のように手伝いや買い物に来てくれる読者が多いんですよ。

──そんなつながりの方も来店してくださるんですね!そうやって発信し続けている点も、「元気村」のファンが増えていく理由かもしれないですね。

農家さんや自然を守りながら、安心・安全な農作物を届けたい

──販売している商品についても伺いたいのですが、「春菊 150円」「春キャベツ 200円」と、どれも手に取りやすい価格帯ですよね。その秘密は?

一般的に直売所は委託形式で、販売額から20~30%の手数料が引かれ、売れ残りは生産者の持ち帰りです。「元気村」も同様ですが、それでも年中「安い!」と言われるからくりは簡単。私が無償で売っていて、人件費がかからないからです。組合員が出荷した作物を全部売ることが目的なので、そうやってコストカットすることで、新鮮で安全な野菜を手に取りやすい価格で売ることができるんですよ。売れ残りはほとんどありません。

──以前、私も元気村の野菜を購入して、料理を作ったことがあるんです。色の鮮やかさはもちろん、食べてみたら、味の濃さや食感も普段食べているものとは全然違って驚きました!「おいしい」と思わず声に出してしまうくらい感動しました。

やっぱり、食べるとわかりますよね。お客さんからも「普段食べている野菜とは全然味が違くて、おいしい」と好評なんです。

「元気村」では、環境保全型・地域循環型農業を進めることを掲げています。現在、国が認める「エコファーマー」の認定もほぼ全員が取得しています。これからも安心・安全な農作物を販売していることをお客さんに伝えていけたらと思っています。

──最後に、今後の展望について教えてください。

正直なところ、年を追うごとに高齢化による農家の減少は深刻ですね。元気村でも、そんな危機感から組合員を増やす取り組みを続けていきます。その成果もあって一時期30戸を切るまでに減った組合員は今では45戸まで増え、さらに数件の申し込みを受けているところです。

「元気村」の理想は「競争でなく共同、支え合い」を実現すること。そのために、農作物の販売だけでなく、自然災害の被災者や生活貧困者など、全国のボランティア団体や個人と連携して支援にも取り組んでいます。

そして、本業も怠りなく、お客さまに安心・安全な農作物を届けるべく、今後もマルシェでの販売を続けていきます。


毎週土日祝に有楽町駅から徒歩1分のところで開催。
昭和の香りが残る東京交通会館を基地にどこか懐かしさを感じるマルシェ。

「ただいま」

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