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MASU ファッションの熱狂を世界へ

2021-22年秋冬コレクションをひと通りチェックした中で、やはり気になったメンズブランドがありました。
今回初めて東京でランウェイショーを開催した注目の若手デザイナー、後藤愼平氏が手掛けるブランドMASU(エムエーエスユー)です。

MASU(エムエーエスユー)/後藤愼平

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2017年春夏にスタートした同ブランド。リブランディングするというタイミングで、2018-19年秋冬より後藤氏がデザイナーを務めています。
ストリートのスタイルが全盛の時代に、良い意味で少し掴みどころがないモードな雰囲気を打ち出していて、面白いなあと以前から思っていました。
今回のランウェイショーは、彼の持っている世界観や美学をしっかりと伝える力強いコレクションになったと思います。

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どういうブランドなんだろうと少し分からない部分がありましたが、このコレクションを見てその魅力が明確になりました。個人的に惹かれたポイントは大きく3つ。

・素材使いの面白さと細かいディティールへの拘り
・デザイナーズヴィンテージを思わせる尖ったクラシック感
・性差を超えた新しい男性像の提案

母体である縫製事業を行う会社「SOHKI」のサポート。そして後藤氏の出身が、デザイナーズ・ヴィンテージを扱う「LAILA」ということもあり、洋服を構成する特徴が見えてきます。

それに加え最大のポイントは「性差を超えた新しい男性像の提案」。例えばJ.W.アンダーソンやアレッサンドロ・ミケーレなどを彷彿させる、時代性にマッチしたジェンダーレスなスタイルかと思いきや、それは決してトレンドを追ったものではないことがインタビューなどを見て分かりました。

後藤氏本人の幼少期からの生い立ちや価値観にルーツがあり、その表現に奥深い揺るぎないもの、そして人間的な繊細さと魅力を感じました。

「男だから泣くな」「男だから闘え」のような「男性だったらこうあるべきだ」という固定観念や風潮が昔から苦手でした。男性も繊細な感情や弱い部分、細やかさ、優しさを持っています。そういった小さな幸せに気付けるような感性は素敵ですし、人生が豊かになる。だから、その視点を洋服で伝えたいです。

MASU(エムエーエスユー)2021-22年秋冬コレクション

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「codes」と冠した2021AWコレクションは、彼が愛してやまないヴィンテージウェアをはじめ服飾史に潜む記号や物語、男らしさにまつわる固定観念を改めて疑問視し、浮き彫りになったいくつもの“コード”を、まるで少年がゲームに講じるように軽やかに組み合わせていくM A S Uのデザイン哲学を確かなものにしようとするシーズンとなった。

メンズファッションの既成概念を超えるような、シフォンやファンシーツイードといった素材使い、スカートやポップコーントップス、フレアパンツなど全体を通して女性的な雰囲気が支配しています。そこに幅広のラペルや無骨なシルエットのコートが登場し、大胆な男らしさが共存。そのアンバランス感がとても美しいです。

本人曰く「昭和っぽい」レトロな素材や柄にアレンジを加えた、独特のヴィンテージライクな雰囲気も大きな特徴。クラシックなデザイナーズの影も感じます。
ヨーロピアンなのか、ジャポニズムなのか。
どこか懐かしさや不気味さのあるミステリアスなムードが、彼の持ち味なのだなと痛感しました。

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ショーの演出を手掛けたのは、バンドKing Gnuの常田大希氏が主宰するクリエイティブレーベルPERIMETRON(ペリメトロン)の中心人物、佐々木集氏。

ショーの会場は六本木のレストランシアター「金魚」。男性、女性、ニューハーフの演者による立体構造の舞台装置を駆使した華美なショーでも知られるナイトスポット。世界観とマッチした見事なセレクトです。

印象的な演出として、ショーが始まる前にショートフィルムを流したようなのですが、このショートフィルムがとてもノスタルジックで美しく、一度見て虜になってしまいました。「ああ、こういう事を表現したいんだな」というのを短い時間で理解する事ができました。是非ご覧になってみてください。

ショートフィルム
「Dear A Man Like You Were(I Was),」

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日本国内で熱狂を生み出し、その熱量を持ってパリに世界に進出したいとの事。
東京ブランドならではのインディペンデントな雰囲気と、後藤氏の内面から浮かび上がる特有の男性像を武器に、世界で躍進する日はそう遠くはないのかもしれません。
気鋭デザイナーの今後の活躍が今からとても楽しみだ。


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