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衆院小選挙区アダムズ方式導入シミュレーション(岡山)

 以前、衆院小選挙区アダムズ方式導入シミュレーション(定数減少県)という記事で、岡山を含めた定数1減対象県の新区割りを予測しましたが、そこでの岡山の予測が納得のいくものではありませんでした。どういった点が問題で、代わりにどのような区割り予測を立てたのか記していこうと思います。

岡山現行区割り

1区 452,905人 1.653倍 自民 逢沢一郎
2区 340,439人 1.243倍 自民 山下貴司
3区 313,178人 1.143倍 自民 平沼正二郎
4区 456,310人 1.666倍 自民 橋本岳
5区 300,484人 1.097倍 自民 加藤勝信

岡山区割り案

当初の案

旧区割り案

 元々の私案。この案の問題点としては、県南西部が倉敷圏内でありながら、岡山市と同じ1区に編入されてしまっている点。また、北区内を分割することに住民が馴染みない点だ。
 これは倉敷市+早島町で1つの選挙区を構成するのにちょうどよい人口であることに起因する。今までは、4・5区で備中地域を形成していたが、定数減により、備中地域だけで、2つの選挙区を消費するわけにはいかなくなった。

岡山3地域区分

 これが最も馴染み深い、県内区分だろう。余談だが、岡山県内の市町村合併は旧国域を跨ぐケースが多く、地域区分名は旧国名を借りつつも、実際の区分と旧国時代の境目は若干異なる。

岡山県域 旧国境界線

 ちなみに、選挙区割りについて切っても切り離せない中選挙区時代の選挙区はこの旧国境界線の影響を強く受けている。

岡山 中選挙区

 吉備中央町と真庭市が現在の小選挙区で分割されているのはこの名残だ。ただ、中選挙区時代の岡山2区=旧備中ではない。
 児島郡は、旧備前国でありながら、旧備中と同じ岡山2区となっているのである。

岡山県域 旧郡境界線

 ここまで、旧郡境界線と現在の市域が重ならない都道府県は珍しい。
 ところで、備中地域と美作地域を組ませれば良いという意見も散見されるが、美作国は備前国から独立して成立した歴史経緯や中選挙区時代の区割りを踏まえると、その可能性は非常に低いだろう。高い山が連なる新見市・真庭市間の関係は希薄だ。

新区割り案

1区 442,291人 1.614倍
2区 478,038人 1.745倍
3区 429,776人 1.569倍
4区 513,211人 1.873倍

自治体分割 6 → 1
中区   1・2区 → 2区
南区   1・2区 → 2区
吉備中央町1・5区 → 5区
東区   2・3区 → 3区
真庭市  3・5区 → 3区
倉敷市  4・5区 → 2・4区

 6つあった分割自治体は1つに抑えられる。当初の案では北区が新たな分割対象としていたが、今回は、元々分割されていた倉敷市を分割対象とした。
 倉敷市を分割対象としたのは、前述の通り、そうでなければ県南西部が浮いてしまうためである。また、倉敷市という街の特殊性もある。倉敷市は都市圏の中核を担いながら、都市雇用圏では岡山都市圏に組み込まれている。そこで、倉敷市を県南西部の中核部分と特に岡山市との関係が深い部分、二つに分割した。

岡山 車のナンバー

 県南西部が倉敷市と関りが深いというのはちゃんと根拠がある。岡山県の運輸支局は地域区分せずに岡山支局が全域を担当している。ただ、車のナンバーには単一の担当区域であってもご当地ナンバーが設定できることは周知のことだろう。岡山県では岡山ナンバーの他に倉敷ナンバーが存在する。これはお役所の事情から離れて、各市区町村の要望により設置されるものであり、地域の文化的意識的結びつきが垣間見える。こうしてみると、倉敷市が南西部といかに深い関りなのかが分かる。意外性があるのが、他の地域区分では、倉敷市と同一区分に括られやすい総社市や早島町が岡山ナンバーであることだ。

岡山 旧二次医療圏

 例えば、よく地域区分の参考にされやすい二次医療圏では元々、倉敷市・総社市・早島町で備中地域を形成し、井笠地域とは別であった。
 現在は統合が進み、いずれもおなじ県南西部地域となっている。

岡山 法務局
岡山 地方裁判所

 法務局や地方裁判所の区分も同様である。確かに、倉敷市と総社市の結びつきは否定できないが、様々な先の車のナンバーや鉄道網を見るに、岡山市との結びつきも強いことが分かる。 一方で、南西部は倉敷市を除いた備中地域で一つの選挙区を形成できない以上、倉敷市と組ませるしかない。
 それにしても、裁判所の区分は倉敷市の細分化状態が目に付く。政令指定都市ではないにも関わらず複数の地域に跨る街・それが倉敷市なのである。

wikipediaから引用

 これは倉敷市内の区分である。現在の倉敷市分割もこの区分に基づいており、倉敷市公式HPでもこの区分に基づいて、人口集計を行っていた。日常生活にこの区分がどれほど馴染み深いものなのかは分からないが、少なくとも行政側の混乱はほぼ皆無だろう。
 本案はこのうちの庄・茶屋町・児島地域の3地域を岡山2区域とした。人口という事情もあるが、鉄道網を見た時、岡山市南区と玉野市間の宇野線、実はそれぞれ西隣の倉敷市の茶屋町地域を通り、そこから枝分かれする瀬戸大橋線は児島地域を通るのである。
 こういった事情を踏まえると、ハレーションも少なく抑えられるのではないかと考える。
 ただ庄地域は若干強めの反発がありそうである。茶屋町地域や児島地域と同じように岡山市と関係の深い地域であるのだが、それは岡山2区の南区とではなく、岡山1区の北区となのである。画定審議会の方針上、新たに自治体を3分割にするわけにいかないため、庄地域を岡山1区にはできない。一応、岡山4区としても格差2倍は越えないが、人口529,046・一票の格差1.931倍とギリギリとなってしまう。

 ところで、試算によれば、全国的な人口増減を見た時に他の県の人口減少スピードが早いため、10年後にはまた5区に戻る可能性が高い。
 となると それまでの間、庄地域を岡山4区とする可能性も濃厚か。

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