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チャーチの値上げに思うこと

今日はチャーチについてです。

チャーチは言わずもがな「英国の良心」と言われるイギリスを代表する靴ブランドで、革靴愛好家にとっては避けては通れないとても大切な存在です。

そんなチャーチが昨年4月に大幅な価格改定を発表した際には、値上幅が大きかったこともあり、革靴愛好家に大きな衝撃をもたらしました。

(ちなみに、今回改めて価格を見てみたら、昨年4月から更にサイレントで一万円程度値上げしていたんですね笑)

一年近く経った話をするのも憚られますが、今回はこの(というかこれまでの)価格改定について感じたことをダラダラ書かせてください。

※ただただ値上げを嘆いているだけなので、何のオチもありません。

1 価格の推移

手元にある最高級靴読本などを参考にすると、チャーチの代表モデルであるコンサルにおける日本国内価格の推移は以下のとおりです。

2004年:69,300円
2010年:90,300円
2012年:71,700円
2020年:91,300円
2021年:118,800円
2022年:130,900円

(2012年頃に一度価格が下がっていたのは意外でした。そして何より、近年の上がり幅たるや…。)

私が革靴の世界に足を踏み入れたのは2014年くらいですが、その時は確かに9万円くらいだった記憶があり、「定価で買うには高いな」と思う一方で、リユースショップでは未使用品が4〜5万円程度で買えることも多く、全く手が出ないという訳でもなかったような気がします。

それが現在では国内定価約13万円…。中古市場や並行輸入品でも未使用品を買おうと思えば、約7〜8万円くらいはかかるでしょうか。

10万円を超えてくると、英国靴ではグリーンやクレバリーなどが競合レンジになってきますので、正直この中でチャーチに手が伸びてくるかというと…。扱いにくいというか、中途半端な立ち位置のブランドになってしまったような印象です…。

大前提として値上げはメーカー側だけの問題ではありませんので、チャーチを悪くいうつもりもありませんが、結果として手に取りにくいブランドとなっている現状は、革靴愛好家として淋しく思うばかりです。

2 チャーチという存在

で、なんでこんな値上げを嘆いているかといいますと、チャーチはそれだけ私にとって特別な存在だったからです。

「靴」としての側面

「質実剛健」や「堅牢」といった表現が用いられることの多いチャーチ。確かに華がある訳でもなく、特徴的な意匠が散りばめられている訳でもなく、古き良き実直な靴作りがチャーチの代名詞です。

私にとって、チャーチを一言で言い表すなら、「永遠のスタンダード」。様々な点において英国靴としての基準となってくれたブランドでした。

革の質、デザインどれをとっていい意味で中庸。例えば、チャーチよりもスリムな木型を見れば「英国靴にしてはスマートだな」と感じますし、チャーチよりも高価な靴であればそれなりのプラスαのクオリティを期待してしまいます。

チャーチを知ることで、本格靴のスタンダードを知り、一つの物差しを自分の中で持つことができたと思います。この点で、チャーチは私の革靴ライフで重要な役割を果たしてくれています。

「憧れ」としての側面

しかしそれ以上に、チャーチは英国靴ブランドにおける「憧れ」という点で私にとって大切な存在でした。

旧チャーチが革靴好きとなるきっかけだったこともあり、革靴にハマり始めた頃は諸先輩方のブログなどで紹介されているコンサルやディプロマット、チェットウィンドなどを「いつか自分も履いてみたい」と食い入るように見ていたものです。

よく90年代前半くらいまでは、グリーンやロブではなく、チャーチが日本人にとって憧れの革靴ブランドの代表格だったという話を聞きますが、そうした影響もあって著名な革靴愛好家は皆さんチャーチを所有されている印象です。

そうした方々の姿を最高級靴読本や皆さんのブログなどを見て、私にとってチャーチはすぐに憧れの存在となっていきました。

グリーンでもロブでもなくて、何故かチャーチだったんですよね。何でかは上手く言語化できませんが、チャーチには人を引き付ける特別な魅力が間違いなくあったと思います。

(旧チャーチ、旧旧チャーチ、旧旧旧チャーチ、チャーチのOEM製品など、マニア心をくすぐる歴史や製品が数多くあるのも、チャーチ信者を増やす理由ですよね。)

3 これからのチャーチは…

うだうだ書きましたが、チャーチに特別な感情を抱いていらっしゃる方は、他にも多いのではないでしょうか。

これまでのチャーチの日本市場における立ち位置は、中々絶妙なポジションでしたよね。

チャーチが(価格的に)革靴の最高到達点とされていた方も多いでしょうし、グリーンやビスポークの経由点として履いていた方もいると思います。要は、そこそこな靴好きもガチ勢も、色んな層の人がチャーチを履いていたと。

何にせよ、8〜9万円という価格帯だった頃は、チャーチはそこそこの革靴好きであれば皆履いたことのあるブランドで、革靴好き同士で「チャーチってこういう靴だよね」「あのブランドのサイズ感はチャーチの173ラストに比べればタイトだよ」などと共通言語化されていたと思いますし、そういう光景を革靴を新たに好きなった方が見て、「自分も履いてみたい」と思えるサイクルができていたんだと思います。

しかし、約13万まで値上げしてしまったら、この立ち位置は変わってしまいますよね…。

革靴好きな人であれば、13万で今のチャーチを購入する人は余程のチャーチ狂でなければいないのではないでしょうか。質の高いMTOもたくさんありますし、中古市場ならグリーンなども新品で10万円程度で買えますしね。

まして、そこまでの革靴オタクでないなら、13万の靴なんか手を出さないですよね。

履く人が減れば、その分業界における存在感を薄まるでしょうし、若い方の興味を引くことも少なくなるでしょう。

チャーチが革靴好きにとっての共通言語でなくなってしまったら、それはそれは淋しい限りです。

今回の値上げは、チャーチがかつてのようなハイブランドなポジションへの回帰を意図したものという声も聞かれますが、実際どうなんでしょうかね。

結局のところ、価格に見合う革靴作りをするか、今以上のブランド価値を身につけるかしない限りは、先述のとおり扱いにくいブランドのままとなってしまうと思います。

チャーチが大好きだからこそ色々嘆いてしまいましたが、もちろんずっと応援していきますよ。

チャーチに限らず、値上げの流れが落ち着くといいですね。

それではまた〜。


【2023.3月追記】
この記事を書いてから約一年が経ちましたが、その後も値上げは続き、コンサルでいえば公式サイトで176,000円となりました。

最早、値上げというよりは、別の靴、別のブランドとしてチャーチを見ているような感覚です。

大幅な値上げ以降、チャーチが経営的にかなり苦戦しているニュースも出ており、上で述べた嘆きが益々深まっている今日この頃です…。

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