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20世紀ラーメン

息子と2人

ラーメン屋のカウンターで

ラーメンを啜る

 

店内に響き渡るその音楽は

T-REX

20センチュリーボーイ

自然と

俺の体がうねりだす

 

だけどイントロのマーク・ボランの「アオ!」ってシャウトを聴き逃してしまったのですこぶる気持ちが悪い。多分あれだ、店員が「お待ち」っつってラーメン持ってきたあの時のタイミングだ。きっとあの着丼時の「お待ち」と「アオ!」が被っちまって、耳に入らなかったんだ。

 

「なあ、お前さあ、最初の「アオ!」聞こえた?」

 

「え?」

 

「この曲ってさ、最初にマーク・ボランが、「アオ!」ってシャウトするんだけど、俺、それ完全に聞き逃したわ。お前、聞こえた?」

 

「わかんない」

 

「なあ、俺、今、めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど」

 

「え?なんで?」

 

「だって、最初の「アオ!」聴きたいじゃん」

 

「はあ?」

 

「さらに言うと、最初にギターの「ギャー」が来て、一拍おいてまた「ギャー」がきて、間髪入れず「アオ!」なんだよ」

 

「言ってる事よくわかんない」

 

「ああ、やっぱ気持ち悪いな。今、このラーメンの味、半減してるわ」

 

「じゃあ、Spotifyで聴けばいいじゃん」

 

「あ、そっか。ちょっとトイレ行く体で、聴いてくるわ」

 

「めんどくせえな」

 

・・・

 

「ただいま〜」

 

「ねえ、この店狭いから、丸聞こえで恥ずかしかったよ」

 

「マジか?」

 

「しかも、2回聞いたでしょ?」

 

「うん」

 

「しかも2回目、父さんも「アオ!」って叫んでなかった?」

 

「聞こえてた?」

 

「めっちゃ恥ずかしい。今、ラーメンの味、半減してる」

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