この想いを奏でるために~映画『ギヴン』感想

※ネタばれあり。

まず思ったのが「LIVEサウンドで観てよかった!」ということ。ライブシーンの音の迫力がやっぱり違う。音楽メインの映画を観るときは音も重要だな、と改めて思いました。
人気漫画のアニメ化、からの劇場映画という作品なのですが、実は漫画もアニメも全く見ておりません。アニメ放送が始まるときに、電車内の広告を見てこんな作品があるんだあ、と思っていましたが、アニメを見ることもなく(F●D入っていないので)。なのですが、たまたま上映スケジュールが目に入り、なぜか「行かねば!」という使命感でチケットをぽちりと予約しておりました。
漫画、アニメから続いている作品だと知って観にいったわけですが、やはり冒頭、全く話の流れが掴めず…。「まあ、そうなるよね…」と思いながら、分からないなりに鑑賞。観ながら内容を理解していった感じです。そして現時点でもまだ原作読んでおりません!ので、いっそ映画のみの知識と情報で感想を残しておこうと思います。多分…おそらくこの後原作コミックを大人買いしてしまいそうな気がするので。その前に。

ボーカル、ギター(高校生)、ドラム、ベース(大学生・大学院生)という4人編成のバンド、の今回は大学生2人がメイン。アニメは高校生2人がメインだったみたいですね。バンドのドラマーにしてヴァイオリン専攻の学生・コワモテイケメンの秋彦と、秋彦の同居人で天才肌のヴァイオリスト雨月。高校の頃からの愛情や尊敬、嫉妬の入り混じった複雑な感情で“切っても切れない”“離れたくても離れられない”関係に雁字搦めになっていた2人。バンドの最年長・ベーシストの春樹はそんな状態の秋彦をずっと見守っていたが、雨月と喧嘩をして家を出た秋彦を自宅で受け入れることになり、3人の関係が変わっていく―。
秋彦と雨月の「好きなのにどんどん負の感情に引きずり込まれてしまう」という関係がどうにも切ない。それは何より、雨月の持つ天才性に対する嫉妬であったり、それに気づきながらもお互い音楽を手離せない自分たちの性質だったり、自分でもどうしようもない原因だと分かっているから、ただただ苛立ちや焦りで相手や自分を苦しめてしまう。想い合う気持ちも確かにあるのに同じくらい傷つき合うしかない2人の姿が観ていても苦しくて仕方なかった。結果として秋彦の出した「音楽が好きだ」という答えに雨月が含まれていないのは、彼にとって大切な二つの存在を切り分けて一つを選んだ、ということなんだろうと思う。この2人で幸せになってほしかった…という気持ちもありますが…。
一方で秋彦に苛立ちや葛藤をぶつけられながらも、ずっと彼を想い続けてきた春樹を思うと、2人の結末には「良かったねえ」という気持ち。秋彦の横暴ともいえる振る舞いに、時には声を荒げて抵抗しながらも、彼を見守り続けた春樹のけなげさは応援せずにいられませんでした。何より「自分は(ほかのバンドメンバーと違って)天才じゃない」「俺なんかいなくてもいいじゃないか」と落ち込みがちな春樹の性格にはものすごく共感。そんな時に「お前が必要だ」って言ってもらえたら、そりゃめちゃくちゃ嬉しいだろうな。それだけで恋の理由には十分だと思う。“お互い欲しいものを与え合うことができる関係”がこの2人だとしたら、それは結ばれて当然なのかも。泣きながら秋彦の背中を振り切った雨月の姿は本当に切なかったけど、3人の新しいスタートを見届けて清々しい気持ちになりました。
音楽がキーワードになっているこの作品、楽曲もツボでした。バンドがコンテストで演奏する『夜が明ける』映画のエンディングで流れる『僕らだけの主題歌』どちらの気に入ってます。(原作コミックの前に曲買ってしまった…)  特に『夜が明ける』、バンドの高校生ボーカル・真冬が作った曲、という設定なのですが、3人の想いを彼らに代わって歌っているようで…。彼らが言葉や態度や表情にも出せなかった想いが、歌詞や曲に表れていて楽曲含めての映画だなと曲を聴くたびに思います。映画では常に辛くて切ない空気の中にいた秋彦と雨月の、楽しくて暖かかった日々が曲で伝わってくるような気がして切ない。それでも、前を向いた2人を思って、聴くたび「よしっ」って思うんですよね(毎日聴いてる)。この曲を作ったのがボーカルの真冬で、当事者2人のどちらかではない、というとこもミソかも。曲の最後の「大丈夫」という言葉。ずっと2人が誰かに言ってほしかった台詞で、第三者の誰かが背中を押してくれることが必要だったんだろうなって。秋彦は春樹という掴むべき存在を得て、雨月は真冬の言葉(と音楽)に背を押されて、勇気を出せたんだと思う。

あと…個人的に秋彦の声はあそこまで低くなくてもよかったんじゃないかな、、、。渋すぎて大学生ってことを忘れてしまう。最後の学校のシーンで「はっそうか、まだ学生か!」と思ってしまった。社会人バージョンの話とかになったら合うのかもなあ。(原作&声優ファンの方、ごめんなさい)

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