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鎌倉の土地には風致(植栽義務)の落し穴

敷地面積20% 植栽計画の大穴 長年の設計の壁

鎌倉市には駅前、旧市街地などを除くほぼ住宅地の全域で風致地区エリアが指定されています。緑豊な鎌倉の景観を維持する目的で個人的には賛成です。規制のないエリアなどでは敷地がコンクリートで覆われることで地面が熱を持ちエアコンが効かなくなる、また雨水が土壌に浸透せず河川や下水道にも負担がかかり河川災害リスクや下水道代のコストアップなども人間の生活に形を変えて戻ってきています。

鎌倉市の風致規制法は主に壁面後退、外壁などの色彩指定、敷地面積20%の植栽計画の義務があります。法的な強制力がある訳ではありませんが、確認申請を通す条件として風致許可がありますので実際は必須条件となっております。

今回は植栽義務の話になりますが、特に必要面積に関しては見直しがされずに今に至っている感があります。特に以下の点が必ず設計業務への支障となっています。

  • 敷地形状に関わらずとにかく20%植えなければならない。敷地の大きさで高木、中木の最低本数が決められている。

  • 高木の設定が3M以上で敷地によっては日が当たらないジャングルに。木は伸びます。ちなみに藤沢市は2.5mです。

  • 窓口の担当に植栽をわかっている人がいない。そして年度の部署替えで相談話も振り出しに。樹木医や造園技士などの資格者が欲しい。

  • 許可の期間が短すぎる。確認申請前に出すものなので、確認申請・実施設計・工事期間、そして猛暑を除いた適正な植栽時期を考えると100%期限が切れるので毎回変更届と委任状の取り直し(なぜか期限6ヶ月らしい・・・)

  • 投影面積により木を正円で計算し重ねられないので、実際は植えられますが計算上は入らない・・・・

これはほんの一部ではありますが、大きなのは最初の20%の壁

最初の画像をご覧ください。参考までに敷地面積130㎡で100㎡ほどの標準的な家を建てるとしましょう。外壁の後退距離があるのでそこでできるだけ広く建物を計画をすることになります。特に北東西はその隙間に木を植えることになりますが、大抵は日照不足で植えても枯れてしまうのが現状です。敷地の形状や隣地条件の影響は大きく矩形と旗竿敷地では植栽できるエリア、植物が育つエリアも全く違います。

旗竿敷地では庭といった庭はとれず、接道にまで樹木が入り込む。

ただでさえ日照条件の厳しい旗竿敷地では大変なことになります。車二台はまず不可能です。無理やり陽の当たらない北側、東西側に植えても枯れてしまいます。隣地が開けていれば可能性がありますが谷が多く日照条件も厳しい鎌倉ではなかなか難しいのです。そんな中で駐車スペースに高木を植えてくださいという指導も入ったこともありますが、あまりにも無茶な話です。また軒下の計画NGなので軒ありの家では周囲に植えられず、1mの隙間に3mの高木を植えようものなら隣地に枝が入り込み伐採トラブル、将来は裏に回ることもできなくなります。

木が大きく育とうが、日照不足で枯れようが20%あればOK

つまり現状では20%だけ守れば無理やり植えて枯れてしまってもしょうがない、植えた後に切ってしまえばいいなんてことが実際は起きていると思います。それでも計画の見直しはされずにことは進んでいます。許可の期間や植栽面積、高木高さなどを訴えても担当者は異動で話は4月に0になってしまいます。それでも許可がないと建築許可がおりないジレンマと設計者は戦っております。本当に豊かな鎌倉の景観を保つのであれば、暮らしの変化にも対応して担当者も条例もあり方を見直すことが必要だと思います。

鎌倉の土地を選ばれるときは、2重(20%)に木(気)をつけて!

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