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アイドルグループ・EIMIE の"空中分解"に寄せて。 (#006)

大阪拠点の実力派アイドルグループ・EIMIE。
躍進中の彼女たちが突如、"空中分解"した。
このnoteは、1ファンとして、この"事件"について、心と頭の整理を試みて、言葉に起こしてみたものである。


EIMIEとの出会い

2020年2月。東京のアイドルグループ・Zsaszに夢中になって、私はアイドルオタクになった。東京拠点ということもあり、たまに遠征しに行く程度。対バンに入ったところぐらいしか、他のアイドルを知ることもなかった。

大阪から東京へ遠征するには、裕に2万円前後の出費が掛かる。しばらく行けないなぁと思っていた2021年2月、嬉しいニュースが耳に入った。結成以来初めてZsaszが、大阪に来てくれるというのだ。私は迷うことなく、ライブハウスに足を運んだ。

東名阪3マンツアーの大阪編だった。東京・名古屋・大阪を拠点とする3組のグループが一緒になって、お互いの拠点地を回ろうという企画だ。
東京のZsasz、名古屋のFaM、そして大阪から出たのが、EIMIE。オタクを始めて1年が経った頃、私はEIMIEと出会った。

第一印象は、正直薄かった。Zsaszを大阪で観られる喜び、東京のオタクと顔を合わせる嬉しさ、地元のライブハウスに初めて入るドキドキ感、感情が忙しく、他のことに心が追いつかなかったのだ。他に印象に残ったのは、FaMのカッコイイ姉ちゃんめっちゃ汗かくやん、ぐらいだった。

ところが後日、EIMIEと2度目の対面を果たす。
衝撃を受けた。初見の時には気づかなかった、メンバー個々のパフォーマンス、全体的な親しみやすさ、感情を解放できる曲と振り。EIMIEってこんなに楽しかったのか!と、頭を殴られるような思いがした。

これを機に、私はEIMIEのライブにも通い始めた。EIMIEの魅力に目覚めていくのはもちろん、対バンから、大阪拠点のアイドルとも数多く出会うこととなる。逆輸入のような順となったが、東京のアイドルしか知らなかった私に、「大阪のアイドルも楽しい!」と思えるきっかけをくれたのが、EIMIEだった。


NW RECORDS の旗揚げ

相変わらず主現場は東京のZsaszだったけれど、ツアーで出会ったFaMにもEIMIEにも、継続的に通った。ドルオタらしからぬ私にして、今思い返してもあのツアーは「神現場」だった。

特にEIMIEには、大阪拠点も手伝って、足繫く遊びに行った。仕事帰りにフラッと行けるし、急にライブが入っても、交通手段の予約を気にしなくていい。周年・生誕・リリイベをはじめイベント事をすぐ近くでやってくれるのも、地元拠点の圧倒的強みだ。曲を知り、アパレルを買い、特典会に足を運び、私はどんどんEIMIEの魅力にハマっていった。メンバー同士リプを飛ばし合う仲良さげさも、微笑ましく思っていた。

大きな動きがあったのが、2021年9月。
EIMIEとFaMが参加して、音楽レーベル「NW RECORDS」を立ち上げた。音楽に明るくない私は、レーベルとは何ぞや?と靄を抱えながら、続々と発表されるリリースを見ていた。

出会って半年、足繁く通った両グループとは、かなり仲良くなれていた。お気に入りグループだった。FaMも名古屋拠点でありながら、3人のうち2人が関西出身だったこともあり、とても親しみを感じる。彼女らのライブに通い、彼女らに楽しませてもらっていることが、嬉しかった。

そのEIMIEとFaMが、なんだか遠くに行ってしまう気がして、嬉しいけれども、淋しいし、なんだかよくわからんし、という複雑さを抱えていた。
お祝いしたいけど素直に言えない、との戸惑い。

累々とリリースが重なるにつれて、「レーベル」とやらはどうやら味方っぽいぞ、とわかった。
運営・所属事務所とは別に、売り込みと機会獲得を増強してくれるらしい。彼女らの顔が輝いていくのを見て、安堵した。これまでと変わらずライブを続けてくれ、近い距離でいてくれ、何も失われないとわかったことも、胸を撫でおろした要因のひとつだ。私もゲンキンなものである。

東名阪での大規模リリースツアー、繁華街の大型ビジョンへのMV放映、週刊少年チャンピオンへの広告掲載...パワープッシュによって2組が日の目を見、世に知られる糸口を次々に掴んでいくのを見て、誇らしく思った。

「快進撃」とは、まさにこのことだ。

年が明け、NW RECORDS に3組目が加入した。拠点は名古屋。破竹の勢いで結成1年を駆け抜け、注目と期待を集めている、わたしにとっては「第2の主現場」とも言えるグループだ。

更なる盛り上がりが期待され、FaM2周年を翌日に控えた、2022年2月11日。

突如として、EIMIE が " 空 中 分 解 " した。


突然の"空中分解"

2月11日夜、EIMIE公式Twitterより、「大切なお知らせ」が発表された。オタクが何より恐れる「お知らせ」だ。

メンバー4名のうち、2名が本日付で脱退。
加入当初は厳しい指導もあったが、頼もしく成長してくれた。笑って過去を振り返るようなこともあり、両名の疲弊した心に気付くことができず、未熟さを痛感している。脱退する2名と、活動を続ける2名、共に変わらぬご声援を賜りたい。
(一部抜粋、要約)

この直前から、EIMIEの「諸般の事情」や「濃厚接触者疑い」による、出演見合わせが相次いでいた。何やら穏やかでなさそうである。

脱退する2人が別垢で声明を出していると知り、読みに行った。

・運営側が出している声明には嘘がある
・濃厚接触者ではなく、飛んだ(ボイコット)
・相談しても折れるしかなく、最終手段だった
・職場の考え方が合わず、ずっと心が死んでいた
・アイドルが自分の負担になり、普通を羨んだ
・「辞めたいとか甘えるな」「他のメンバー入れた方が正直売れる」と初期メンバーに言われた
・運営側から暴言を吐かれた
・運営側の対応が、初期メンバーに比べ冷たい
(一部抜粋、要約)

残るメンバーからも、ツイートがあった。

・ステージに出て自分に嘘をついた日はない
・ステージを見て思ってくれたことが全て
・他のメンバーだったら良かったなんて思ったことはない
・嫌なことが重なると、人は真実や事実が見えなくなる
・言うのは簡単なのに、人はすぐそれを信じる
(一部抜粋、要約)

本人がツイ消しするならば、ここに残るのは望ましくない。なるべく作為を加えず端的に抜粋したつもりだが、心苦しくも上記内容を記載することについては、以降の文章に必要なため、平にご容赦頂きたい。(ツイ消しがなされた場合の対応については、追って検討する。)

私は公式発表で事を知ったが、時系列で言うと、これらのツイートが先にあり、夜に公式発表、という順番だった。以降、出演取り止めのツイートが続き、事態の収拾は見られていない。

発される言葉は多くあるも、語られないことがそれ以上にあり。饒舌と沈黙とが不協和音をなしたまま、EIMIEは"空中分解"。

翌、2月12日。
FaMの2周年ライブを、EIMIEは出演辞退した。


断っておくが、"空中分解"という言葉は、運営・メンバーをはじめとして、関係者は誰一人使っていない。が故あって、このnoteでは"空中分解"という言葉を使わせていただく。

EIMIEは元々、コロナ禍に窮するライブハウスのためにチャリティーライブを企画したり、ファンクラブを開設したり、流行のプラットフォームを敢えて使わなかったりと、おもねらずして戦略的なアプローチを重ねてきた印象がある。でなければ、グループを4年も維持できない。
ところが今般、滅茶苦茶な発表の仕方をした。戦略的部分が、崩壊したかのようだ。見えない部分も含めてこれまでEIMIEという組織体を進めてきたチームが、機能しなくなっているのではないか。

ここからは、一連の出来事を受けて、1ファンとして私が思ったこと考えたことについて、言葉にしていこうと思う。


アイドルと「真相」

まずは素直に、発表を受けて思ったこと。

第一に、ショック(衝撃的)ではあった。
通っていたからこそ、"空中分解"は見たくなかった。仲良さげに見えたからこそ、メンバーの発言が一因にある(と少なくとも当事者の1人は思っている)ことにも、衝撃と動揺は隠せない。

第二に、一方で、ショック(心理的な落ち込み)はなかった。
EIMIEは気に入っていたけど、満を持して「推しグループです!」と公言することはなかった。ずっとどこかに違和感があった。自分とEIMIEとの相性的なものかと思っていたが、今回露呈したあたりが引っ掛かっていたのかもしれない。
そう思うと、妙に腑に落ちるところがあった。

第三に、私は誰の味方にもなるまいと思った。
関係者同士が対立構造にある以上、誰かを擁護することは、誰かを非難することだ。事実を欠片も知らぬ外野が、口を出していい評定ではない。
各ツイート主を擁護するリプの山積に、狂気じみたもの、自分との感覚的距離を感じた。

それから、色々な考えが頭を巡った。

何が「真相」かわからないし、
実のところ、興味も無い。
この状況に至った結果がすべてだし、
知って解消されることもない。
アイドル現場は、演者と観客が一体となって作り上げていくコミュニティだ。とはいえ、あくまで私は「お客さん」。気に入れば行くし、気に入らなければ行かない。そこに「真相」は関係ない。少なくとも、私の場合は。

巧言令色、ではないが、
真相詮索すくなし仁、といったところである。

ただ直感的にだが、この顛末を、誰も納得してないように思えてならない。特に関係者。残る2人も、去る2人も、運営も、事務所も、共に走ってきた他のアイドル達も。それは必ず、後を引く。上辺を取り繕おうとも、必ず。次の動きに移る前に、関係者内で「納得」し「清算」する機会が持たれることを、願っている。それが心配だ。


アイドルと「物語」

争点になりやすい「真相」から離れて、今回起こった「出来事」の在り方についても、目を向けてみたい。

「アイドル現場は、演者と観客が一体となって作り上げていくコミュニティ」だと先ほど述べた。では、そのコミュニティにおける「アイドル」とは、何であるか。

アイドルは、コンテンツである。
さらに言えば、「物語」である。

オタクはアイドルからエネルギーをもらい、一方でアイドルもまた、オタクからエネルギーをもらって、更なる輝きを目指し続ける。ステージ上、ステージ外を問わず、贈り贈られる相互関係が風土を築き、それぞれのグループの「らしさ」を形成していく。時に愛憎織り交ぜ、時に泥臭く、時にトラブルに見舞われながら、それらすべてを糧として。

だからこそ、今回の「露呈の仕方」については、もっと考えて欲しかった。これは主に、運営側への苦言だ。
事情がまだ公表できぬ間、世情を利用して「濃厚接触者」を偽称したこと。対応が結果的に、後手に回ったこと。メンバーに不用意な発言をさせたこと。対立構造を崩せなかったこと。それらを通して、オタクの心象を掻き乱したこと。そもそも、今回の事態を招いたこと。
日頃から信頼関係を築けていれば回避できたことはいくらでもあったはずだが、状況が手遅れとなってなお、その「露呈の仕方」について、気を回すべきポイントがいくらもあったろうと思う。

手が回らなかったというのも、事実だろう。
だが、回せ。回らなくても、手を、気を、回せ。万事を尽くせ。運営は。
それが「(人間が)コンテンツになる」ということだ。立ち居振る舞いのすべてを、エンターテイメントとして、表現として、消費される/させるということだ。
できないなら、分不相応だったってことだろう。

シビアなことを言うようだが、表現に携わる人間として、ここはハッキリ言っておく。共にEIMIEを作り上げてきたコミュニティに対して、運営側はもっと誠意を尽くすべきだった。

2年目半ばに出会ったから、EIMIEの成り立ちも、経てきたドラマも、私は知らない。けれど無責任なことだって、言わせてもらう。
観客はいつだって、無責任だ。自由で無責任な観客に、目を向け足を運んでもらうために努めるのは、作る側の責任だ。「コンテンツを作る」とは、そういう行為なのだ。


さらに言えば、タイミングも最悪だった。

翌日が盟友の2周年祭。ただのレーベルメイトならまだしも、お互い周年・生誕を祝い合い、切磋琢磨を重ねてきた相手じゃないか。直前に"事件"を知って、気に留めないとでも思ったのか。そこまで薄情と思うたか。馬鹿にすんじゃねぇ。年に一度の晴れ舞台に、一点の曇りも持たせてはならんと、なぜわからない。
色々限界もあったんだろうし、誰かが口火を切れば反応せざるを得ないのは、一定の理解を示せるが。もうちょっと、なんとかならなかったのか。いつだって何らかの影響は出るものだが、せめて今だけは避けねばならんと、なぜ踏み止まれなかったのか。一面的な見方で申し訳ないが、このタイミングに関してはシンプルに、最悪だと思う。


なんだかんだ言ったって、コンテンツは、人の手で作られるものだ。人が作っている限り、必ずどこかでエラーは起こる。
「エラーをエンタメに変え」られないというエラーだって、起こる。

問題は、エラーを孕みながらもオタクを楽しませてきた彼女らが、エラーの暴露を経たこれから先、どうやってオタクを楽しませるか。
オタクがどこまで、彼女らに真摯でいられるか。
贈り贈られるコミュニティを再生できるか。
そこに向かって、関係各位が努力できるか。
EIMIEの行く末は、すべてそこに賭かっている。

願わくば、数々の名曲たちには、是非とも残り続いて欲しい。


これから

2021年、私は3人の推しメンを失った。
それぞれ納得できる理由があって、説明も尽くされたため、私はスッキリした心境で、決断を迎え入れることができた。

年明け早々の、今回の一件。しかも随所に疑惑がある。晴らしたいとは思わないが、手を付けぬままでいる関係者たちに、「え?そんな人たちだったの?」と思わざるを得ない。

こういう時、どう見送るのが、最も傷つけないのだろうか。
未だに、わからない。下手なことを言えば、意図せざる受け取り方をされることもある。語らなければ語らないで、靄を抜けないままとなる。

そこで今回、noteを書く過程で、自分なりの「清算」をすることにした。

去る2人には、サッパリ忘れて、なるべく素直に前向きにいてほしい。罪悪感を感じすぎても、自分を擁護しすぎても、歪みが生まれて、結果自分を苦しめる。

残る2人は、しばらく何も信じられなくなると思う。言ったことも、言われたことも、色んなものが歪曲してくるだろう。オタクの笑顔だって、腹の中ではどう思っているんだろうと、疑心暗鬼になるだろう。それは人間として、ごく当たり前なことだ。アイドルだから思っちゃいけないとか、そんなことは全くない。

来年の自分が、納得しているかどうか。そんな基準で選んではどうだろうか。今の自分の判断が正しいかなんて、わからない。渦中にいるなら、なおさらだ。今は、オタクも、運営も、他のアイドルも、自分の持っていた信念も、何も信じなくていい。ただ、未来の自分がどう思うかだけを指針に、今選べる道を行けばいいと思う。

すぐに動くのがキツイなら、時間を決めて休む。
それも全然アリな選択肢だと、私は思う。

1ファンの世迷い言である。

誰の味方にもならぬまま、一つ断言できるとすれば、これまでEIMIEと遊んだ時間は、紛れもなく、楽しかった。それはこれからも、変わらない。

さても、起こったことは、起こったこと。
これからは、これからである。

アイドル活動、お疲れ様。
またいつか、またどこかで。
4人のEIMIEと、出会えて良かった。

ありがとう。



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