昔聴いた音楽のこと2

前回、音楽のことを書いているうちに思い出したことがある。兄の影響でフォークを聴き始めたことは前に書いた。その他にこんなことがあった。

私が小学生高学年の頃、兄は東京に住んでいた。滅多に帰ってこなかったが、帰ってきたときは何かしらの刺激を受けた。

二度ほど同じようなことがあった記憶がある。兄は古くて大きく頑丈な革製のスーツケースらしきものを持って帰ってきた。中にはカセットデッキが入っていた。決してコンパクトではない、オーディオセットの一部のようなものだ。兄は私に「これ、いいぞ」と言ってヘッドフォンで音楽を聴かせてくれた。はっきり覚えているのは、マイク・オールドフィールドの”チューブラ・ベルズ”と、マル・ウォルドロンの”オール・アローン”である。前者はイントロの宝石のような音、後者は表現しようのない大人びた暗さが強く印象に残っている。

兄は写真をやっていたので、暗室で流れていた音楽の記憶もある。なぜか荒井由実(松任谷由美ではない)ばかり思い出す。今でも荒井由実を聴くと、暗室の赤い光と酢酸の匂いが記憶の片隅から蘇る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?