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私の最強のお巡りさん

もう40数年前の話

あの頃、私はまだ18歳になったばかりだったっかなー、記憶が何だか定かではないが…

私の家の近くに
警察官舎があった
まあ田舎で、川があり畑が広がる中に、その官舎はあったのだが、よく私は夕方、黄昏れて1人散歩をしていた(そんな年頃)
家は両親、年の離れた弟が2人、5人家族だった
父は酒癖が悪く飲んでばかり、暴言やら暴れるやら、母は仕事で遅くなる
弟2人は学校から帰ったらそれぞれ遊びに行く

まあ、家に居たくなかったという気持ち
私は真面目とは言い難い、髪の毛を脱色してセーラー服のスカートをずるずると引きずるくらいに長ーくして、いわゆる不良ってやつしてた
あのあれ、「ビーバップハイスクール」みたいな感じだな(今思うとかなり恥ずかしいが😅)

そんな私は、1人フラフラ黄昏れるのが好きだった

そのフラフラルートに
警察官舎があり、そこの駐車場だと思うが、小さな子供を遊ばせている男性がいた
一応、私は
コミケ力はなかなかあったので(クラスに1人はいた面白いキャラの子)
何だか知らんが「かわいいね、この子」みたいに話しかけてみた
その男性の優しそうで、人懐っこい感じの雰囲気にこの不良である私が惹きつけられた!?

まあ、なんか知らんが喋りかけたのだよ

それから色々話して何だか知らんが仲良くなった
私:「もしかして、お巡りさんなの?」
お巡りさん:「そうだよー、僕は○○署で警察官してるんだよ」
私:「そうか、だからここの官舎に住んでいるんだもんねー」
お巡りさん:「何してるの?散歩?この近くに住んでるの?」
私:「うん、あっちに見える○○牧場って書いてある向かいにあるオレンジ色の屋根の家が私の家だよ、近いねー、近所なんだよ」
私:「たまに、夕方フラフラ散歩するのが好きなんだ お巡りさんちの子、かわいいよね?」
お巡りさん「僕も警察官だけど、普段は普通のお父さんなんだよ、子供はかわいいね」

こんな話をした 私にとって、警察官なんか近寄り難い、恐い存在だったから、不思議な感じだっのを覚えてる
 職業でこんな感じだろうと勝手に想像してた
家帰ってご飯食べて家族がいる
人間だもんなー、当たり前だわ(笑)

会えるのが楽しみになった

それからは、夕方の散歩は、私の楽しみになった
毎日とはいかないが、また会えないかと
ワクワクしながら、歩いていく
いない時は寂しかった
サラリーマンじゃないんだから、そりゃいつも子供と夕方遊んでるわけじゃないよなーうん!
それでも
何回か会えたし、名前も教えて家族の事や、学校の事、色々話したと思う
お巡りさんさんは、1人の人として、こんな不良の私とちゃんと話してくれたし、聞いてくれた
優しくて、決してお説教じみた事など言わない
「そうか、そうか」って「うん、うん」って

大人たちを信じられない、汚いと思っていた私が唯一素直に話が出来た大人だった
心が和んで優しい気持ちになるんだ
私は
そんなお巡りさんが大好きだった!

絶対に死んだらダメだ

ある日、こんな小さな街で事件が起きた
小学校の裏山で遺体が見つかったと
この裏山は、私が幼稚園の頃からよく登った山で、おてんばだった私はよく登山道ではなく、道がない木々の中を走って登っていたほど、自分ちの庭みたいな馴染みのある山で、500メートルくらいの高さの公園のような山だ
そこで遺体が発見だなんて
「こんな小さい街でいやー、信じられないよねー」って話が持ちきりだった

それからしばらくして、お巡りさんと久々に会えたから、私は例の裏山の遺体の事件の事を
聞いてみた
私:「○○山の事件って知ってるよね、私びっくりしちゃった、こんな身近であんな事起きるなんて信じられないよ」
お巡りさん:「そうだね、僕も捜査に加わっていたんだよ」
「僕はね、実は、鑑識係なんだ
だから事件や事故、身元不明の遺体なんかを見て
色々調べる仕事をしているんだよ
死体ばっかり見てるとね、やはり辛くなるよね
仕事とはいえ、色々考えてしまうもんなんだ」

私はそれを聞いてうかつに、話のネタみたいに軽く話してしまった事を少し悔いた
恥ずかしいと思ってしまった

でもそんな私を責めるとかは全くなく、
「ねー、こんな田舎の街ではあんまり聞かないしね、でも結構あるんだよ、僕の出番がない方がいいに決まってるからね」

そして、いつになく真剣な顔で私に言った

お巡りさん:「ゆ○ちゃん、絶対に
死んじゃダメだよ!!」
「僕は色んな死体を見てきたけど、本当に酷いものなんだよ、亡くなった人にも人生があったのに、それさえ微塵も考えられないくらい、見ていれないくらい悲惨なんだ
今回は自○だったんだけどね、悲しいよね」

「だから、ゆ○ちゃんは、絶対に
自○なんかしちゃダメだから!
死んじゃダメだ!」

私は真剣に諭すように言ったお巡りさんの気持ちが痛いほど伝わってきた
私が1人でフラフラしている様子から、辛い思いをして癒されない気持ちで、もしかして
私が自○とか考えているんじゃないかと
心配してくれていたんじゃないかと思った

こんな私をちゃんと見ていてくれた人が居たんだ
その魂からのお巡りさんの言葉で私は
涙が溢れそうになった
上辺だけの文字の羅列でなく
心からの叫びにも似た言葉

私:「うん…わかった…
私、絶対に死なないから、大丈夫!
約束するよ」
お巡りさん:「そうだな!1人じゃないんだからな、悲しませてはいけないんだ」

最強の友達

それから私は高校を卒業して就職した
だから、夕方の黄昏れ散歩はもう中々出来なくなってしまった
環境も変わりお巡りさんとも会えなくなっていた
でも
お巡りさんの事は忘れてはいなかった
また会いたいなー、今でも子供とあの場所で遊んでいるかしら
鑑識係という大変な仕事であちこち飛び回っているかしら…

そんなある日
私は地元の文房具店で働いていて、昼休みに
近くのスーパーで昼食を買う為に
さほど広くはないが商店街を母と歩いていた
実は同じ文房具店で母も仕事内容は違うが働いていた
いつものお昼時、いつもの道
あー、いい天気だなぁ、なんて思ってやはりフラフラ歩いていたのである

相変わらず見た目は派手な金髪の髪
まあそこそこ、目立つ風貌ではあった

その時
一台のパトカーが向こうからやってくるのが見えた
パトロール中だろう
いつもなら特に気にも止めないが
なぜか
パトカーに目がいった
というか
目が合った

あっ?と思った
パトカーに乗っているお巡りさんも
あっ?という顔をした

あっ、あっっっあー!?
紛れもなくあのお巡りさんだった

いきなり、助手席の窓が開き、それはそれは
でーっかい声で、窓から身を乗り出し
「ゆ○こぉぉぉ〜!!!」と叫び
満面の笑顔で手を振ってくれたんだ!

広くもない商店街で、窓から身を乗り出したお巡りさんが私の名前を叫ぶ…

周りの通行人がビックリした!
いやいや、私が
一番ビックリしたんだ!

「えっ?いいの?お巡りさんさんがそんな事しちゃって、ええぇぇぇぇぇ〜⁇」
一瞬マジで恥ずかしい気持ちがよぎったが
それ以上に
マジでマジで、マジで〜バカ嬉しかった‼️
私の事、覚えてくれてたんだ!
名前言ってくれた!
すっごい笑顔で、溢れるほどの笑顔で
周りを気にもせずに!

「おーい!お巡りさぁ〜〜ん!!」
私も叫んだ!
嬉しくて嬉しくて!!!
周りも気にせずに…笑

どっちもどっちだなぁ(^^)
隣を歩いていた母が一言言った
「さすがあんただねー、お巡りさんの友達もいたんだねぇ」
「そーさ!最強の友達なんだぜ!笑笑」

私は思った
ずっと会えなかったけど、あの時たくさん話た時間はかけがえのない時間で、心は繋がっていたんだなー
お巡りさんの心の中に私が居た、忘れないで思ってくれてた
時間が経っても、たった数秒のあの一瞬でも
心が繋がっていたんだと実感した

少し心配だったのは
あの後、もう1人運転していたお巡りさんに
怒られやしなかっただろうか?と…笑

あれからはホントに会えませんでした
警察官舎もいつの間にか無くなっていました
違う署に行ったのか、偉い人になったのかわかりませんが、私の記憶の中のお巡りさんは
人懐っこい笑顔の、優しく楽しい素敵な人に変わりはありませんね

約束は今のところ守っていますよ
61歳まだまだ生きてます
自慢出来るような人生ではなかったけど…

ご健在でいらっしゃるでしょうか
もしも、願わくばまたお会いできたら幸せです

長々とお付き合いくださり
ありがとうございます
遠い記憶の話でありました


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