青崎

くら寿司のたら白子ジュレぽん酢が好きです。

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最近の記事

現在の創作なりきり界隈に触れて感じたこと

はじめに みなさんは、創作なりきりという界隈があることをご存知でしょうか? 簡単に説明すれば、自分で作ったキャラクターになりきって、他の人が作ったキャラクターと雑談したり恋愛したり…いわゆるごっこ遊びみたいなものです。 ごっこ遊びとはいえ、ネットで「なりきり」と調べてみるとかなりの数がヒットします。個人のブログであったり、はたまた古のネット民たちが黒歴史として語っているサイトだったり…。 そのサイトを覗いてみると、「下火になった」、「今では衰退し…」という記述が目立ちます。

    • 秋の夕方、改めて好き

      体調不良で会社を休んで、夕方頃に回復してきたからカーテンを全部開けたら、何でもない平日の夕方に泣きそうになった。 秋の夕方 家に帰る学生の話し声 通り過ぎていく車の音 少し肌寒い 部屋の奥まで届く夕日の色 ゆったりと風を受けて微かになびくレースのカーテン 公園ではしゃぐ子供の声 夫婦が話しながらベビーカーを押す音 遠くから聞こえるカラスの声 高校から帰るときにした、坂道を下っているときの木々の香り 部屋の隅は薄暗い 隣の家の夕飯の香り 台所から聞こえる食器の音 全てのペース

      • 【小説】「夜明けを砕く」

        1  墨汁の匂いが残った五年一組の教室。先生が自主学習ノートにハンコを押しながら顔を上げた。 「だって堀田は強いから。先生がわざわざひいきしないといけないか弱い子でもないだろ?」  給食班がバットや食缶を運んでくる。後ろではみんなが机を班の形に動かし始めている。あおいが何も言い返せないでいると、先生は露骨に表情をなくした。 「……それだけか?」  単純作業のように押される日付入りのハンコ。  忙しなく動くシミだらけの枯れ木のような手が止まることはなかった。  ボディーソープ

        • 一緒に本を読んでただけの友達

           消毒液と柔軟剤の混じり合った匂いのする保健室でひとり、制服姿の私はぴかぴかのリュックに新品同然の教科書を詰めていく。  クリーム色のカーテンを通して、ワックスの薄れた床に日差しが降り注いでいる。  もう少しで五時間目が始まろうかという時間。遠くで、ばたばたと教室に戻るみんなの足音が聞こえる。  チャイムが鳴り終わるのを待って、私は静かな保健室をあとにした。  学校から家までの距離は五分ほどで、途中に市立図書館がある。といっても図書館へ行くルートと家へ帰るルートは微妙に異な

        現在の創作なりきり界隈に触れて感じたこと

          ガラス越しの視線

           ひどく彩度の低い、鉄製のドアを見つめる。  制限時間は三十分。平日の仕事を休んで、待ちに待った面会の日。  汗ばんで冷たくなった手に力が入る。  この扉の向こうに双子の弟がいると思うと、なんとも形容しがたい、奇妙な感覚に襲われる。  彼は罪を犯した。それはもちろん許されないことだ。けれど、長く会っていないせいか『許せない』という感情よりも『弟に会える喜び』のほうが勝る。今僕の心を支配しているのは、弟を思う兄の気持ちだった。  僕が家を出てからも、弟は実家に住み続けた。彼は神

          ガラス越しの視線

          彼女にぞっこん

           両隣に住宅が聳える細い夜道を、足音を立てずに歩く。  全身黒で固めたコーデ、キャップとマスクの隙間から覗く目はただ一点を見つめている。彼は杉村といい、ストーカーである。  視線の先にいる女性が、ある家の前で立ち止まった。手には大量の手紙。杉村は息を潜めて電柱の影に身を隠す。この地点の電灯は一か月前LEDライトに変更されたため、いつもよりも気を付けなければいけない。  女性は周りを注意深く見渡すと、音を立てないようにして郵便受けに大量の手紙を突っ込む。  彼女もまたストーカー

          彼女にぞっこん

          千代紙の思い出

           月曜日、昼下がりの喫茶店は人がほとんどいない。  窓際の席でひっそり本を読みながら、友人を待つ。遠くから「待ち合わせです!」と聞き慣れた声が飛んできて、栞を挟んで視線を上げた。 「ごめん遅れた!」 「よかった〜夕香来ないかと思った。久しぶり。一年ぶりじゃない?」 「このごろ通話だけだったからね」  高校時代からの大親友、瀬尾夕香。三十代間近となった今でも変わらず、大学生のような格好をしている。猫のような可愛らしい顔立ちに、日本人離れしたスタイル。これまでに一度も彼女の恋愛的

          千代紙の思い出

          少しだけ背伸びする

           きっちり半分だけ綺麗になったゴミだらけの部屋を、昼の白い光が照らしている。  仕切り戸越しに、二人の男性が見える。  大きくてヒョロヒョロしたほうは小さなスーツケースを持っていて、小さなおかっぱ頭のほうは部屋着だ。  今日をもって、漫才コンビ『こやしもやし』は正式解散となる。  ボケ担当の乾春太が腕を組んで壁に寄り掛かった。 「お前が明日から蕎麦屋で修行するの考えられねえわ、今度冷やかしに行こかな」  対してツッコミ担当の猫池柳はドアに掛けた手を戻し、乾に向き直った。ツッコ

          少しだけ背伸びする