書評③(どうする財源-貨幣論で読み解く税と財政の仕組み)

P118~P180までの内容の要約である。書いていると、自分の考えも研ぎ澄まされて楽しい。結構疲れるが。次でラストになると思う。


機能的財政論における「税」の役割

機能的財政論に基づくと、「税」の役割とは国民経済を望ましくするための政策手段であり、財源確保の手段ではない。たとえば、所得税は所得の格差を縮小させるものである。そして、税には望ましくないものを減らすために課されるものがあり、消費税は「消費」を縮小させるものであるとしている。実際、消費税が8%や10%に引き上げられた際には、消費が抑制されたが、その際には、政府は消費の抑制が目的としているのではなく、「社会保障の財源確保」を目的としている。この税の役割を理解していない点にデフレを脱却できない理由があると指摘している。

「国民負担」とは

本書において、防衛財源は、単に政府が貨幣を創造すれば足り、増税や経済成長による税収増による必要はないとしている。むしろ、税収を税源にするという考え自体が、資本主義以前の封建時代の財政運営と指摘している。
これまでの議論から、防衛財源について資金による制約はなく、制約があるとすれば供給面、つまり実物面の制約があるとする。自衛隊員や弾薬など実物がなければ資金がいくらあっても無意味なのである。この「実物資源の制約」こそ、「国民の負担」である。直近の例だと、大阪万博のパビリオンの入札不調などがあるか。
ちなみに、アメリカなど武器を購入することで、経常赤字となったとしても、日本円建ての国債ある以上、資金の制約にはならない。ヘッジファンドが日本国債を投げ売りして失敗してきた歴史が物語っている。
そして、本書では防衛費を大規模に増額する必要になった場合、海外から武器を輸入するにしても、経常赤字が増加し円安となり、輸入物価が高騰することで高インフレになること、一方、自国で生産するとしても、人材や物資についての実物資源の制約により高インフレになることから、真の国民負担は高インフレなのである。

デマンドプルインフレとコストプッシュインフレ、原因をしっかり究明しましょう

固定相場制と変動相場制、通貨発行の制約

固定相場制においては、自国通貨を外貨などと一定された交換比率で交換する必要あるため、自国通貨の発行量には制限がある。歴史上は金本位体制やブレトンウッズ体制がある。
一方、日本においては、一定の交換比率がない変動相場制をとるので、自国通貨の発行量に制限はない。つまり、日本政府が財政破綻(債務不履行)することはない。そして、財政運営は実物資源の制約を受ける。

コストプッシュインフレを克服する

インフレは、需要が供給を上回る場合、つまり、景気が過熱して消費などの需要が高まった結果、実物資源の制約を受けるインフレであるデマンドプルインフレと実物資源の制約に起因する供給が少なくなり、需要を下回ってしまうインフレをコストプッシュインフレの2つに分類される。財政支出による引き起こされるインフレはもちろんデマンドプルインフレである。
一方、最近のインフレは、ロシアのウクライナ侵攻による食料やエネルギー不足や脱炭素に起因するものであって、明らかにコストプッシュインフレであり、財政出動に起因するものでない。
その上で、現在のインフレの解決策は実物資源の制約の緩和をすることが必要である。そのための方策として、エネルギー開発や食料生産、子育て支援など目的を定めて政府が投資をするある種の産業政策をすることを提案する。つまり、長期的な視点から民間支援と公共投資を行うのである。そのことで、実物資源の供給制約が緩和され、財政支出の更なる拡大が可能となり、更なる実物資源の供給制約が緩和され、コストプッシュインフレを抑えることができるのである。
そして、資金制約という間違った認識で、公共投資を妨げる健全財政こそインフレを悪化させるリスクがある。さて、どちらが責任ある財政論なのでしょうか。
おまけで、歴史上ハイパーインフレの原因として、以下の4つがあり、デマンドプルインフレによりハイパーインフレになったということは1例たりともなく、それは民主主義が根付いている国家では当然ことと本書は述べている。
①社会的、政治的混乱や内戦
②戦争などによる生産能力の崩壊
③徴税権力の弱い政府
④多額の外貨あるいは金による対外債務(非自国通貨建ての債務)

金利上昇は起きるか

金利上昇?

これまでの内容から国債を発行すれば、民間貯蓄は減るのではなく増える。つまり、財政支出をすると民間貯蓄が増えるので、国債発行により民間の貯蓄がなくなり、金利上昇することはあり得ない。。

また、日銀も民間銀行から国債を買い取ることで、民間銀行の日銀当座預金を増やすことで金利を下げることができる。つまり中央銀行においても金利のコントロールができるのである。実際、黒田日銀時代、大量に国債を買いとること金利を下げていた。

経済学者の無責任な言論

日本の経済学者は無責任な言論を行っている。例えば、国債の量をGDPで割った「国債GDP比率」が上昇すると財政破綻が起きるとしているが、自国通貨を創造できて債務を返済できる日本においては何の関係もない。このように、経済学者は、どうにかして色々な指数を用いて財政破綻をしている。しかし、財政破綻していない不都合な事実がある。彼らは、国債を発行すると民間の貯蓄が増えるということを知らないのである。ちなみに、発展途上国は対外債務はドル建ての場合が多く、その場合輸出で稼がなければならないので、「外貨建て債務/輸出」が財政の持続可能性の指標となっている。



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