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『読書感想6』

『インドへの道』長編
『A passage to India』
E.M.forster (1879-1970)England


この作品は、色々な観点から異文化を学ぶ事が可能です。
例えば民族間の政治的立場、民族間の歴史、文化、宗教、風俗、習慣の違い、個人の持つ価値観の違い等 
そして、民主主義とは、自由とは、平等とは等 基本的な事です。

『インドへの道』は、1924年に出版され、その描かれた時期は、第一次大戦終了後の1920年頃です。
当時、英国の植民地であったインド、チャンドラポアという街が舞台となります。


テーマは
街の病院で医師をしているインド人のアジズと英国人の大学学長フィールディングとの二人の友情です。英国から支配を受けるインドの小さい街で起る事件と人間関係
です。
そして英国人の中にあるキリスト教、インドの中で対立関係にあるイスラム教とヒンズー教など宗教の問題も二人の友情に大きな関わりを持ちます。


アジズは
英国で医師として教育を受けた関係上、英国人の良き理解者でありたい、そして、英国人にもインドの文化、宗教、生活を理解してほしいと願うあまり、植民地支配に反発しながらも西洋的礼儀を重んじて、英国の友人達をマラバー洞窟に招待します。
多くの東洋人がそうであるように、西洋人を歓待する事は、親密を意味して、とても喜ばしい、誇らしい事であったのです。
アジズは、まさに東洋的人間です。
フィールディングは、自由と平等の考えを重んじる教養ある教育者
です。彼は、世界を身軽に旅する自由な精神を持ち、人間としての
正義、誠実を自分自身に求めると同時に他人に対しても行使する人間です。


事件の現場となるのは
マラバー洞窟です。

事件の当時者となるのは
アジズとアデラです。
チャンドラポアの行政長官ロニーの婚約者アデラは、ロニーとの婚約に疑問を持ち心が揺れていました。アデラは、洞窟の入口でアジズに質問します。

『二人以上の妻を持っているのか?』と、
英国留学の経験を持ち、教養あるイスラム教徒のアジズの心は傷つきます。
アジズが平静を保つ為に現場を離れた時、洞窟内の反響音により
「アデラは洞窟で幻想に襲われます。」
アジズは、無実の罪で告発され裁判となります。


フィールディングは
ヨーロッパで進歩的自由人として生きていましたので、他の英国人のようにインド人に対して偏見とか蔑視はありません。英国人の社会から孤立しながらアジズの無実を証明するために努力します。


裁判が終わった時
フィールディングとアジズの友情、人間関係の成立はありませんでした。二人は、一生懸命、誠実に真実の為に努力しましたが、異文化、特に宗教感の違いを越えて理解し合う事はできませんでした。また、政治的に植民地として支配する立場と支配される立場の違いも二人を大きく相容れない状態におきました。


作品の最後に
「なぜいま友達に慣れないのか?」と
質問するフィールディングに、作者フォースターは、自然物を通して答えを出しています。
・・神殿が・・貯水池が・・空飛ぶ鳥が・・その自然物全てが、それを欲していない『駄目だ、その地上では駄目だ』永遠に友人にはなれないと言わせています。お互いが異文化を越えて人間が人間を理解する事は難しいと言う事を提示しています。


21世紀

世界は、現在も混乱
と混沌の中にあり地球上で心の置場所に苦しみ、悲しんでいる人々が多くいます。
「平和と民主主義と平等を信条」としたフォースターは、21世紀の現在の世界の現状をどのように眺めているでしょうか!


E.M. Forsterは、20世紀を代表する英国の作家です。
代表作は、

『A Passage to India 』
                       「インドへの道」
 『Where Angles fear to Tread』
      「天使も踏むを恐れるところ」

『Howars End』
              「ハワーズ ・エンド」
『A  Room with a View』
                「眺めのいい部屋」
などです。


読んで頂きありがとうございました。























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