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【ネタバレ感想・批評】『BANANA FISH』



※注意事項※

本記事は、筆者が当該アニメを視聴した際に抱いた感想を綴ったものです。批評としての体裁を保つべく、可能な限り客観的・論理的な記述を心掛けてはいますが、あくまで個人の主張に過ぎず、その他の意見を否定する意図はございません。内容に触れない批評は説得力がないため、全編ネタバレありです。未見の方はご注意ください。なお、筆者はアニメを鑑賞する上でストーリー・シナリオを最も重視しており、作画・音楽・声優等には余程のことがない限り言及しません。ご了承ください。

記事に対する感想・疑問・指摘等あれば、お気軽にコメントしていただけると幸いです。


作品概要

タイトル:『BANANA FISH』
放送開始:2018年夏
話数:24話
原作:吉田秋生の同名漫画
監督:内海紘子
シリーズ構成:瀬古浩司
アニメーション制作:MAPPA

補足情報:原作は1985年から1994年にかけて連載されていた少女漫画で、どういうわけか完結から20年以上経ってアニメ化されたらしく、キャラ設定はそのままに、年代設定のみが現代に変更されている。一応少女漫画だが、ジャンルはサスペンス・クライムアクションで、登場人物はギャングやマフィアが主。男性同士の性交描写がかなり頻繁に挿入されるため、苦手な方は注意されたし。

※参考



各種問題点

・キャラデザ
同じ顔の人間ばかりで見分けがつかない。軽く調べた感じ、かなり原作に忠実な絵柄のようだが、忠実すぎるのも考えものといういい見本だろう。

・説明不足
1話の段階で視点が分散しており、人物紹介にあたるシーンもほとんどもないため、物語の主題はおろか、主人公が誰かすらわからない。当然、どのシーン・どのキャラ・どの発言がどれくらい重要なのかも初見では判断できず、視聴ストレスが強い。

・グロ
あえて詳細は省くが、4話のフォークのシーンは個人的にこたえた。こういう感情的な批判はよくないと思いつつも、流石に限度を超えていたため記載。物語的上全く必要ないシーンなので、おそらく作者の私怨。作品全体でみれば、特にグロ描写が多いというわけではない。

・オーバーリアクション
原作者は女性。監督も女性。


基本設定

舞台はイラク戦争(原作ではベトナム戦争)終結後のアメリカ本土。主人公・アッシュはニューヨークに拠点を構えるストリートギャングのボス。彼の兄は廃人となってイラクから帰国しており、時折「バナナフィッシュ」という謎の言葉を呟くことがあった。
ある日彼は街中で、マフィアの元から逃げ出してきた薬物中毒患者と出会う。彼はアッシュに「バナナフィッシュ」という言葉を呟きながら、未知の薬物が入ったペンダントを渡し、そのまま息を引きとる。アッシュは「バナナフィッシュ」が兄を廃人にした張本人と考え、知り合いの医師に薬物の解析を依頼しつつ、その正体を探るべく行動を開始する。
一方、件のマフィアであるディノ・ゴルツィネは、薬が元飼い犬であるアッシュの手に渡ったと知り、血眼になって彼を追う。本作では24話かけて様々な勢力間の抗争が描かれるが、おおむねこの二人の対決がメインでそれ以外はおまけと考えてよい。


人物紹介

キャラがやたらと多く関係も複雑であるため、最初に整理しておく。ここに書いた以外で2、30人ほどキャラがいるが、大した連中じゃないので必要に応じて都度紹介する。

アッシュ・リンクス:ニューヨーク・ダウンタウンのストリートギャングを束ねるボス。8歳で故郷を飛び出しゴルツィネというマフィアの下につくが、そこも飛び出し現在は一人で生活している。金髪の美少年で、幼少から数多くの性被害に遭い、そのせいで人格や人生が歪んだ。

奥村英二:日本在住の大学生。知り合いのカメラマンに連れられアメリカまでやってきた。アッシュと知り合ったことでマフィアの抗争に巻き込まれながら、いつしか彼と兄弟のような関係を築く。公式の主人公はアッシュだが、主な視点は彼。

伊部俊一:そのカメラマン。

マックス・ロボ:伊部の知人。兵役上がりの記者で、かつてアッシュの兄と同じ隊にいた。その兄が薬物で発狂して銃を乱射したため、やむを得ず足を撃って大人しくさせたという過去がある。その際彼が呟いた「バナナフィッシュ」という言葉を手掛かりに、彼に薬を与えた犯人を追っていた。刑務所でアッシュと知り合い、行動を共にする。

ショーター・ウォン:ニューヨークのチャイナタウンを束ねるチャイニーズのボス。アッシュとは親友で協力関係にある。

ディノ・ゴルツィネ:コルシカからアメリカに派遣されてきたマフィアの幹部。アッシュの育ての親にして怨敵。家出したアッシュに目をかけ、マフィア流の英才教育を施す傍ら、性処理玩具として弄んでいた。自身の元から出奔したアッシュに強い執着を持ち、引き戻そうと策を巡らす。

フレデリック・オーサー:アッシュと敵対する不良グループのボス。物語開始早々ゴルツィネの傘下に入る。

李月龍(リー・ユエルン):ゴルツィネと対立する華僑系マフィア一族の末弟。妾の子で、母を殺した異母兄弟達を憎んでおり、兄弟を殺して実権を握るべく密かにゴルツィネと接触をもつ。アッシュに惚れて英二を目の敵にするが、アッシュには相手にされていない。


各話解説

※2クールな上ツッコミ所が非常に多く、いつにも増して長くなってしまった。適宜読み飛ばすことをおすすめする。

1話。日本人学生・奥村英二はカメラマン・伊部俊一に連れられ、はるばるアメリカまでストリートギャングの取材にやってきた。
……なんかもうすでにおかしい。命知らずにもほどがある。普通に観光中に出会ったとかでいいだろ。

彼らがバーでアッシュを取材していると、オーサーという男の手勢が乗り込んでくる。オーサーは裏でゴルツィネと通じており、アッシュの生け捕りを請け負っていた。英二はアッシュの仲間とともに捕らえられ、そのまま連れ去られてしまう。

2話。人質を取られてノコノコ出向き、同じように捕えられるアッシュ。ついでのようにレイプされるも、隙を見て逃走。その後三人は袋小路に追い詰められるが、英二は水道管を引きちぎり(←?)、棒高跳びの要領で建物の向こう側へと逃げ延びる。曰く、「日本じゃ棒高跳びの選手だった」らしいが、後出し設定にもほどがある。「実は超能力者で空飛べました」て言ってるのと大差ない。ちなみに、今後棒高跳び設定が生かされることは一切ない。というか、こいつの活躍自体これが最後で、以降はひたすらアッシュの足を引っ張るだけの荷物と化す。
英二の通報で間一髪助かったアッシュだが、ゴルツィネの工作で殺人の濡れ衣を着せられ収監される。これも意味がわからないというか、ゴルツィネの目的はアッシュを引き戻すことなのに、自分から遠ざけてどうするのか。

※余談だが、本当に裁判なしで投獄などできるのか調べたところ、政府が「米国愛国者法(Patriot Act )」という法律を根拠に、テロリストの疑いのある移民を裁判なしで収監する「indefinite detention」という慣例(?)が一応あるらしい。とはいえゴルツィネは政府ではないし、アッシュは移民でもテロリストでもない。そもそも愛国者法の成立は2001年、本作の連載終了より後なのでただの偶然だろう。なお、この慣例は人権無視ということで国内外から批判にさらされ、現在ではほとんど実体がなくなっているようだ。

3話。マックス・ロボと刑務所で出会い、お互いバナナフィッシュを追っていることが発覚する。きっかけは刑務所でバナナが出たこと。雑。
流れでマックスが兄を撃ったと知るアッシュ。どう考えても不可抗力というか、悪いのは兄を薬漬けにした犯人(バナナフィッシュ?)のはずだが、単細胞のアッシュはそれまでの友好的な態度を翻し、出所したら殺すと一方的に告げる。そんなに刑務所が気に入ったのかな。

ところで、マックス・ロボやアッシュ・リンクスというのは偽名なのだが、なぜ偽名で刑務所に入れたかは謎。

4話。面会場でアッシュから、医師に預けた薬を安全な所へ移すよう頼まれた英二。しかし彼はゴルツィネの命を受けたオーサーに監視されており、医師のもとへ到着した瞬間拘束される。そこへアッシュの親友ショーターが駆け付け、ゴタゴタの末、医師が面倒を看ていたアッシュの兄が、ゴルツィネの手下に撃たれて死ぬ。
兄死すの報を受け刑務所から脱走を試みるアッシュ。止めようとしたマックスと殴り合いの喧嘩になる。子供か。喧嘩が終わるとなぜか一転して友情が芽生える。お約束。

5話。マックスの知人が州判事にはたらきかけたことで、あっさり釈放されるアッシュ。まるで遠足気分の刑務所生活に失笑を禁じ得ない。なお、少し遅れてマックスも出所し、伊部のもとへ合流する。
伊部や知人の刑事らがアッシュを迎えににやってくるが、兄を殺され気が立っているアッシュは、刑事の車と銃を奪って逃げ出そうとする。クソバカの英二はまさかのアッシュに肩入れし、二人を車から振り落としてアッシュと逃走。そのまま親友ショーターの拠点であるチャイナタウンに転がり込み、兄の敵を討つべくゴルツィネ襲撃計画を練る……
えーと、わざわざ車奪って逃げた理由は何? 一旦家に帰るふりして来ればよかっただけでは?

さておき計画は以下。ゴルツィネはレストランに見せかけた男娼クラブを経営しており、近々その店を訪れる。入店のタイミングを見計らってトラックで近づき、走行中のトラックの上から狙撃する。以上。
上に立つ意味なさ過ぎて笑える。案の定失敗して命からがら逃げ出す。アジトに戻ったゴルツィネは、必ずアッシュを生け捕りにしろと、すごい剣幕で部下を叱責する。生け捕りにこだわる理由は、一言でいえばアッシュに惚れているから。端的に言ってダサい。ホモがどうこう以前に、私情で部下を振り回す上司など毛ほども魅力を感じない。

6話。ゴルツィネから逃げるため、アッシュの故郷に里帰りする。車で200キロ走ったが追手は特にない。
実家の父親がアッシュを足蹴にすると、なぜかキレる部外者達。ギャングやってるドラ息子が連絡もなしに帰ってきて歓迎されると思ったのだろうか? そうこうしてるうちになぜ仲が悪いのか話し始める父親。しかし、どうにも要領を得ない内容で、曰くアッシュは7歳の時に近所でレイプされ、8歳でその犯人を撃ち殺して、そのまま家出した……らしいのだが、父親が影も形もなく、不仲の理由になっていない。というか、またホモかよ。そこまでするならもう主人公美少女でいいだろ。お前の趣味を押し付けるな。

兄貴の部屋を漁った結果、兄貴を撃ったゴルツィネの手下は兄貴の知り合いだったと判明。その住所に向かおうとした矢先、ゴルツィネの追手が到着。どうにか退けて逃亡、一週間かけて件の住所にたどり着く。その間追手は特にない。ご都合主義。

7話。住所を訪ねたところ、兄貴を撃った知り合いは家主の弟だとわかる。家主は半年行方不明で、家主のPCをハックすると、バナナフィッシュは例の薬の名前だったことが判明する。それにしてもこの主人公、ハッキングの知識にアルカロイドの組成式まで知ってるようだが、本当に小学校中退か? 公式サイトによれば彼のIQは180とのこと。作者よりIQの高いキャラは作れないといういい見本である。
薬物の使用記録から軍が関与してるらしいと発覚し、マックスは危険だ、手を引けと訴える。プライドがどうとかでゴネるアッシュ。力ずくでも止めると宣言したマックスだが、一晩寝たら考えが変わったらしく、アッシュに着いていくとあっさり態度を翻す。
一方、華僑系マフィアの李月龍がショーターに接触、スパイになれと持ち掛ける。聞かれてもないマフィアの内部事情をベラベラと喋る月君。デスノートのほうの月を見習ってほしい。

8話。アッシュの外出中、ショーターの裏切りで英二が連れ去られる。
大慌てで帰宅したところ、なぜか半年ぶりに自宅に帰ってきた家主と鉢合わせする。彼はなんとバナナフィッシュの開発者だった。彼を締め上げて薬の詳細を聞き出すアッシュ。薬の効能は強烈な幻覚と、暗示に対する脆弱化。これを投与された上で命令を受けると、どんな内容でも逆らえなくなるらしい。彼は元医局員で、偶然作り出してしまった薬の効能に気付くも、科学者ゆえ未知の発見を切り捨てることができず、封印していたところ弟に盗まれてしまったと語る。この話を聞く限りどう考えても彼に非はないし、毒物研究が医学分野で大いに役立つのは周知であり、むしろ讃えられるべき行動のはずなのだが、このアニメにそんな理性的視点は存在しないため、アッシュ・マックス・伊部は三人がかりで彼をタコ殴りにする。科学という存在そのものを侮辱されているようで非常に不快である。

それはそうとアッシュは、家主弟から薬を得たゴルツィネが薬を交渉カードに軍との取引を狙っていると推理する。急に話が大きくなったな。結論から言うとこの推理は事実なのだが、そのレベルの陰謀となると、目撃者は片っ端から始末するぐらいの勢いでなければ駄目だろう。愛玩動物だから生かしておきたいなどというゴルツィネの勝手を軍が許すはずがない。

そうこうしてるうちゴルツィネの手下が現れ、家主含む4人はゴルツィネのもとへ連行される。毎度タイミングよすぎ。

9話。月龍からゴルツィネに引き渡されたショーター。バナナフィッシュを投与され、「化けて出てやるぞ!」と叫ぶ。ギャグのつもりなら面白い。ゴルツィネは彼に「英二を殺せ」との暗示をかけ、さらにアッシュには銃を渡し、英二を助けたければショーターを殺せと迫る。しゃーなし殺すアッシュ。感動シーンのつもりかもしれないが、実力差もわきまえないでマフィアに逆らった報いとしか思えず、全くもって同情できない。

10話。アッシュの部下とチャイニーズ(ショーターの部下)がゴルツィネの屋敷に乗り込み、アッシュ・マックス・英二・伊部を救出。途中チャイニーズの一人が、アッシュがボスを殺したと知って決闘を挑むが、アッシュは「機嫌が悪い」という理由で返り討ちにする。本当に自分のことしか考えてないな。

11話。日常回。ギャップ萌えのつもりか知らないが、寝起きが悪いとか子供時代幽霊にビビってたとか、どうでもいいエピソードが急に生えてくる。
途中マックスが英二を、「善良なだけで、個性も魅力もない人間」と評するシーンがある。わかってるならそんなのを主役にすなよ。その後「周囲を和ませる」とフォローが入るが、別に和まない。むしろKYの部類。

日常話もそこそこに、アッシュはゴルツィネに対し反撃の一手を打つ。ゴルツィネの属するファミリーは「コルシカ財団」という財団を経営母体としているのだが、その財団が脱税のために作っていた口座の9000万ドルを、ゴルツィネの名を騙って盗み出したらしい。パスワードの流出経路はピロートーク。アホ? てか、そんなとんでもない切り札あるなら1話のうちから使っとけや。

さて財団に多額の損害を与えたゴルツィネは、釈明のためコルシカへ召還される。彼はオーサーに、自分が不在の間にアッシュを捕えておけと命じ、アッシュとオーサーの全面戦争が始まる。
ところで、人物紹介の項でゴルツィネのことを「コルシカから派遣されてきたマフィアの幹部」と書いたが、公式サイトの紹介は「コルシカ・マフィアのボス」となっている。しかし、わざわざ釈明のため本国へ戻り、さらに財団から解任(何を?)を言い渡されているところからして、本来彼はボスではなく、コルシカの本家から出向している一幹部に過ぎないと思われる。なのに劇中の誰もが彼をボス扱いするため、この11話で実はボスではないと知らされたときはだいぶ混乱した。長期連載で設定が変わったのかもしれないが、完結してからのアニメ化なんだからちゃんと調整しろよ。というか公式サイトが間違えてるということは、作ってる側もろくに設定理解してないのでは?

12話。ゴルツィネの屋敷を監視し、大物上院議員と大統領首席補佐官の出入りを確認するアッシュ。彼の見立てでは、政府はバナナフィッシュを使って中東のテロ組織を操り、クーデターを起こさせ傀儡政権を乱立させようとしている、らしい。根拠は特にない。まあその仮説が本当だとして、それ、勝てないだろ。

監視の傍ら、アッシュはオーサーの仲間を次々手にかけ始める。残虐性を演出して英二を遠ざけ、自主的に日本へ帰らせる作戦らしいが、演出で殺される方はたまったものではない。英二は人が変わったようなアッシュの振る舞いを見て「らしくない」と粘着、そのまま口論になるが、一晩寝たら仲直りし、日本へ帰る話はうやむやになる。感情で生きてるなあ。
一方追い詰められたオーサーはアッシュに1対1の決闘を申し込み、アッシュも承諾。どうでもいいが、懐に入られて困ってるときに「懐に入り込んだつもりか?」はダサすぎる。アホがハードボイルド気取るな。

13話。真夜中、工事中の地下鉄構内で決闘が開始される。ナイフ以外の武器は禁止というルールで、馬鹿正直にその約束を信じた結果、電車で乗り込んできたオーサーの手下に機関銃で包囲されるアッシュ。一体マフィアの下で何を学んだのだろうか。ちなみに、誰が電車を動かしているのかは不明。すんでのところで仲間から銃を受け取ったアッシュは付近の敵を皆殺しにし、そのまま電車に乗り込んでオーサー一味を殲滅する。もちろん彼はIQ180の大天才なので、小悪党の銃弾などかすりもしない。
そのころ、アッシュの命を受けた部下に空港へ送られる英二。忠誠心のない部下たちは秘密にするよう言いつかっていた決闘のことをペラペラ話し、空気の読めない英二は現場へ連れていくよう駄々をこねる。駄々に耐えかねた部下たちは主を裏切り、英二とともに地下鉄へ。英二君が馬鹿すぎるのは今更として、アッシュもどうせこうなることはわかりきっているのだから、日本行きを見届けた上で決闘の日取りしろよと思う。

地下鉄から這い出たオーサーとアッシュは、高架橋の上で最後の戦いを繰り広げる。駆け付けた英二に名前を呼ばれて集中を乱されるも、結局オーサーを葬ることに成功するアッシュ。直後警察がやってきて二度目の逮捕。まだゴルツィネとバナナフィッシュの件が丸々残ってるのだが、こんなところで捕まってる場合か?

14話。アホの月君は兄の一人にバナナフィッシュを投与し、廃人化した兄を部外者に見せて自慢する。特に意味はない。
フィボナッチ数列程度でイキるIQ180の主人公、病院で出された知能テストの誤植を指摘するが、下手すりゃ数百万単位の人間が解いているであろう知能テストの誤植に今まで誰一人気付かなかったなど考えられない。作者が低学歴だからといって周囲のレベルをそれに合わせているようでは、なろう小説と同じである。そもそも測定方法にもよるが、IQは通常140~160程度が上限でそれ以上はまともに測れない。こういう情報は頭の良し悪しとは関係なく、ネットで調べれば誰でもすぐわかることなのだが、それなのに180などというデタラメが通ったということは、原作者・編集者・アニメスタッフの全員がその簡単な下調べすら怠ったということである。そんな連中に任せたアニメが面白くなる可能性など万に一つもない。
その後上院議員の命で、「国立精神衛生センター」なる犯罪者更生施設へ移されるアッシュ。この施設はコルシカ財団の管理下にあり、どうやら彼はバナナフィッシュ研究の実験台にされるらしい。

15話。抗争の傷が元でアッシュが死んだと報道される。意味不明。ちゃんと殺してから報道しろよ。誰にメリットあるんだこの発表。しかも移送先が国立精神衛生センターであることは馬鹿正直に公表しているため、マックス・伊部・帰国したゴルツィネはこぞってセンターへ殺到する。
研究所の職員はゴルツィネにどやされ、アッシュへの投薬を中止する。私情。ちなみにゴルツィネは解任(?)されたはずなのだが、派遣されてきた後任は彼を補佐に任じたので、指揮系統に大した変化はなかった。

16話。アホの職員から今日が一般見学の日だと聞いていたアッシュは、警備員を殺して銃とIDを奪い、薬の開発者を抱えて逃走開始。ちなみに、警備員がやられた理由はフ○ラしてやると持ち掛けられたから。あと開発者はとっくに薬で廃人化しているので、持ち出すべきは薬そのものの方。
その後、凶悪犯が脱走したにもかかわらず施設内で呑気にS○Xしている職員を見つけたアッシュは、白衣を奪って施設から脱出。ここまでくるともはや、アメリカ人全体への風評被害で訴えられてもおかしくないのでは。
一方、アッシュ逃走のゴタゴタに紛れて後任を射殺するゴルツィネ。どいつもこいつも後先考えない連中ばっかで嫌になる。

17話。月君はゴルツィネと組んでお兄ちゃん一家を、ゴルツィネは月君の助力で財団幹部をそれぞれ始末する。仮にもマフィアのトップ連中があっさり死にすぎでは。暗殺でしか権力交代を描けない政治ドラマなど三流もいいところである。というか、全員アメリカにいる華僑マフィアはともかく、コルシカ財団の幹部は世界中に散らばっているはずなのだが、一歩もアメリカ出ないままそいつら殺せる月何者だよ。そのレベルで暗殺に長けてるならゴルツィネの協力なんかいらんだろ。
あと上院議員もホモらしく、アッシュはその嗜好を利用して彼への接近を試みるが、すぐゴルツィネに殺されるのでストーリー上意味はない。

18話。アッシュの師匠だというスナイパーが、ゴルツィネの助っ人として参戦する。先述の上院議員殺害も彼の仕業。アッシュ曰く格が違うらしく、ゴルツィネが彼を使ってアッシュを脅すと、あっさり負けを認め、盗み出した薬のデータを抱えてゴルツィネの下に帰参する。ここまでの17話丸々いらないじゃん。

19話。アッシュとゴルツィネの養子縁組が成立。後継者としてバナナフィッシュ計画の手伝いをさせられるが、ハンガーストライキで抵抗する。子供か。子供だったわ。

20話。財団の脱税成功を祝したパーティが開かれる。なにそのアホな理由。月君の側近からその情報を仕入れたチャイニーズと英二は、ザルのような警備をかいくぐり会場に侵入、マシンガンで招待客を片っ端から撃ち殺してアッシュを奪還する。パーティの参加者には一般の政治家や財界人も大勢混じっているのだが、友人を助けるためならそのくらいは必要経費ということだろうか。私情ここに極まったな。なお、この回で英二は、結果的に軽傷で済んだとはいえ、無抵抗の相手に発砲している。これまでは一応巻き込まれる側だった彼だが、こうなった以上れっきとした犯罪者と言わねばなるまい。

英二らは下水道に潜伏するが包囲され、アッシュを除き捕えられる。ノコノコ出てきた月を捕えて人質交換を持ちかけるアッシュ。結局交渉成立してアッシュに逃げられてしまう。この若様ほんといいとこないな。

21話。スナイパーに逃げられたゴルツィネは、新しくフランスから傭兵部隊を雇ってアッシュにけしかける。ちなみにこの傭兵隊長もホモ。人質を取られて投降するアッシュ。何度目だ。

22話。チャイニーズと英二はザルのような警備をかいくぐり監禁場所に侵入、マシンガンでプロの傭兵を片っ端から撃ち殺してアッシュを奪還する。

23~24話。21話の人質が監禁されている国立精神衛生センターへ向かうアッシュ。ちなみに、センターにいることは聞いてもないのに傭兵隊長が話してくれた。そもそもアッシュと分けて監禁した意味はなんだ。
アッシュ一味は工事で強化されたというザルのような警備をかいくぐりセンターに侵入。ゴルツィネを捕えて人質に使おうとするが、隊長は迷わず彼を射殺し、逆にアッシュを捕虜とする。隊長曰く、彼はアッシュを飼いならして財団のトップに据え、自身はその補佐役に収まるつもりらしい。念のため言っておくと彼は傭兵、要するにただの部外者である。どこをどうしたらそんな発想になるのか。いいからさっさと殺せよそのクソガキを。
研究データだけ持って、センターを丸ごと焼き払おうとする隊長。アッシュを麻酔で寝かせてヘリに載せるが、IQが180もあるため麻酔は効かず逃亡。なんやかんやあって隊長は死に、データも全て灰になる。

後日。マックスらの活躍で、ゴルツィネが経営していた男娼クラブの存在が明るみに出る。つっても当事者もうみんな死んでるし、肝心のバナナフィッシュの方は立証できずじまいで、これほど消化不良な結末もそうそうない。そもそもセンター焼失で一件落着みたいな空気になってるが、バナナフィッシュ計画の関係者全員があの日あの場所に集合していたとは思えない。データや現物、あるいは記憶としてどこかに残っている可能性は十分あるし、なかったとしても目撃者の口封じだけは絶対に決行されるはずである。その辺りのリアリティをまるで考慮せず、適当な爆発オチで済ませるからクソアニメと呼ばれるのだ。

まあ、クソアニメに相応しいクソのような最終回ではある。まずもう、最終回手前でラスボスを差し替えるというのが信じがたい愚行である。それまでアッシュはずっと、手段のアホさは別にして、ゴルツィネへ恨みを晴らすという目的の面では一貫していた。ならば、最後はどちらが勝つにせよ、本人らの手で決着をつけさせるのが常識であろう。なんでわざわざポッと出の傭兵にする必要があるのか。こんなやつ死のうが生きようがどうでもいい。憎いのは兄貴を殺したゴルツィネとバナナフィッシュだろ。ゴルツィネが死んだのならせめてバナナフィッシュだけは、何が何でも白日の下に曝してみせろ。

ちなみに、最後の最後でアッシュがチャイニーズの一人に暗殺されるという謎のオチがあるのだが、物語的な必然性が何もなく、単に作者が鬱エンドをやりたかっただけとしか思えない。クソアニメの面目躍如といえよう。

無為

不要なキャラやエピソードが多すぎる。水増し・引き伸ばしが常識の漫画連載を忠実にアニメ化しようとした弊害だろう。多分普段ジャンプ漫画とか見てるような層は、ストーリーなどなくても派手なアクションが見られれば満足なのだろうが、本来バトルやアクションというのは手段に過ぎない。相手を倒して何か成果を得たいからバトルという手段に打って出るのであって、「ギャングだから」というだけの理由で意味のない抗争シーンばかり繰り返されても退屈なだけである。
各話解説で述べたエピソードの中に、ストーリー上欠かせない戦闘はいくつあるだろうか。結論から言うと、一つもない。倒すべきはゴルツィネと軍なのだから、オーサーや月龍は存在自体が不要だし、ゴルツィネはアッシュを殺す気がないので、こいつとの抗争はすべて茶番である。そして最大の障害たるべき軍だが、ゴルツィネとの仲間割れで首脳がやられ、なぜかそれ以降干渉してこないため、ストーリー上極めて影が薄い。中東のテロ組織を支援するみたいな話はどこへ行った? しょうもないギャングの抗争よりよっぽど重要だろ。

アッシュ本人も毎度無用な危険を冒しすぎで、罠とわかっていながら餌に吸い寄せられて捕まるというハツカネズミ以下の知能しか見せない。IQ180が聞いて呆れる。まあ敵もアホなので毎回のように脱走を許すが。とここまで書いたところで、そもそも敵が有能なら1話冒頭の脱走者も存在せず、作品自体が成立しないと気付く。そんな頭の悪い伏線回収は求めていない。
冗談はさておき、各話解説で見た通り序盤から終盤まで捕まっては逃げての繰り返しで、あまりの単調さに嫌気が差す。唯一15話は救助も間に合わず絶体絶命というところまでいくが、結局怨敵であるはずのゴルツィネに助命され、あまつさえ「必ず生き延びろ」と激励される始末。主人公としてあまりに情けないし、ラスボスとしてあまりに温い。この二人の対決で熱くなれというほうがどうかしている。

あと英二もいらない。邪魔。「ギャングと一般人の間に芽生える友情」みたいなのがやりたいなら、一般人側がギャングに関わるやむを得ない事情を設定しなければならないのだが、そんなものはどこにもないため、ただ危機管理意識がバグってるアホにしか見えない。拳銃もまともに撃てない素人がいたところで、足手まといになるだけだとなぜ気付かないのか。危険だから国へ帰れと勧告するアッシュにしつこく付きまとう様は、さながら男に振られたメンヘラ女のそれである。


感情論

ギャングやマフィアのくせに感情的な連中ばかりでついていけない。ふとしたきっかけで意見をコロコロ変えるし、ちょっと気に食わないことがあればすぐ暴力に訴えるし、後先考えずに自分の身を危険に晒すし、それで痛い目に遭ってもまるで学習しない。銃で脅してくる相手に強気で暴言を吐くみたいなシーンがいくつもあるのだが、脱出の算段がついた上でやってるならともかく、仲間の助けがなければそのまま死んでるようなケースばかりで、頭蓋骨にちゃんと脳味噌が入っているか疑わしい。
また20話のパーティがいい例だが、味方サイドも自分達さえよければ他はどうなっても構わないという連中ばかりなため、感情移入が非常にしづらい。はっきり言って、敵味方全員死んでくれたほうが世の中のためになる。

加えて、ほとんどのキャラの行動原理が「何かしらの恨みを晴らす」しかなく、物語のスケールが非常に小さい。例えばアッシュはレイプと兄の死でゴルツィネを、オーサーは指を切られらことでアッシュを、月龍は母の死で兄弟を、チャイニーズ二代目ボスは先代の件でアッシュを、ゴルツィネは自分の愛を裏切ったことでアッシュを憎んでいるわけだが、こいつらは全員いち組織のトップである。その結果どうなるのかというと、組織間の抗争や国家規模の陰謀が個人のいざこざにすり替えられ、元の設定からは信じられないぐらい矮小な話に帰着する。しかも復讐劇の方を詳しく描いているかといえばそうでもない。というか、上記5名のうちまともに復讐を完遂できたのは月だけ。とかく女性作者の散漫な思考がそのまま反映されたようなシナリオで、批判を承知で言うが、ある程度頭のいい男性視聴者にとっては苦痛でしかないだろう。


ホモセクシャル

同性愛それ自体の是非はともかく、頻度があまりに多すぎて緊張感とリアリティを著しく損なっている。というより、本当はホモ漫画にしたいがそれだと出版できないので、仕方なくストーリーらしき何かで体裁を取り繕ったようにしか見えない。
ほとんどが合意のないセックスなので同性愛の肯定を謳う社会派アニメとも考えがたいし、映像倫理の観点で見ても、同性間なら性行為を地上波で流していいという発想は、逆に同性愛を軽視していることになりかねない。
なお、21話で同性から痴漢されたマックスが、「女の気持ちがよーくわかったよ」「セックスの的になるってのはえれープレッシャーだ」と漏らすシーンがある。ひょっとすると、このアニメで伝えたいことはこれがすべてで、あとは全部数合わせだったのではないか? 勘繰りすぎかとも思うが、最終回でバナナフィッシュは放置しながらも男娼クラブだけはきっちり検挙させたところを見ると、あながち邪推とも言い切れないのが怖い。


まとめ

登場人物の頭が悪すぎて、つまらないとかの次元を超えている。各話解説で何度アホと書いたか知れない。気色悪いホモ描写も相まって、もはや視聴者に対するストレステストとしか思えない。あの『Angel Beats!』が可愛く見えるレベル。冗談抜きで見終えるのに二ヶ月かかった。世間では「不朽の名作」扱いらしいが、こんなゴミが評価されてるようでは現代アニメが駄作まみれになるのも当然である。


結論

20年の時を経て現代に蘇った汚物。なんでこんな死体蹴りみたいなアニメわざわざ作ったのか理解に苦しむ。


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