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青春、と呼んでいいだろうか。

初めての夜遊びだった。

私は、飲食店でホールの仕事をしている。
昨日同僚と3人で焼肉を食べに行った。

1人は私と同い年で現在大学生のA。
もう1人は、海外出身で日本人の旦那がいる20代のSさんだ。

ふたりはとてもよく喋った。

大学の試験がヤバい事。
旦那が行った悪事。
仕事のグチ。

そしてふたりが共通して言ったのは
「友達がいない」。

Aは本人曰く「昔から友達運がない」らしい。
仲がいいと思っていたグループからはいつか遊びに誘われなくなったり、大学で同じ学科の彼氏を作った代わりに女友達との溝を掘ってしまった。

Sさんはもっと過酷だった。
ロリータ系の可愛らしい服装が好きで、それ故に昔から少々いじめられていたらしい。現在もSさんの服装を見ては周りの人がコソコソと話しているのを察すると、「悪口を言われている気がして怖い」と委縮してしまう。

そんなふたりにとって、誰かとご飯に行くのはとても特別だったのだろう。
話の権限はずっとふたりの独占状態だった。

私はというと、赤べこのように首を動かしながら、にこにこと、たまに肉をいじりながら話に耳を傾けていた。

ふたりのマシンガントークの相手をし、気が付けば約3時間も焼肉を頬張り、デザートを堪能していた。
店員が醸し出す迷惑そうな視線を背中で受けながら、食べ過ぎてズボンのボタンも締まらないお腹を抱え、名残惜しく店を出た。

そのまま帰路につく予定だった。
Aも翌日は講義があるし、Sさんも出勤だ。
しかし、この和やかでかけがえのない空気を私は手放したくなかった。
ここで帰ってしまえば後悔すると悟った。

「二次会、やります?」

帰宅したのは午前2時。
日付を越したら帰る約束だったが、気づいたら3時間みっちりとカラオケでマイクをにぎり、タンバリンを叩いていた。

さすがに疲れた。
親に心配をかけてはいないかと不安にもなった。

でも、案外悪くなかった。
いろんな話を聞いて、相手の人生を仮体験できた。
初めて知った曲を聴いて、「もっといろんな音楽に触れたい」とやりたいことも増えた。

あのふたりと出会えたのも何かの縁だと思う。
私はこの縁を大事にしようと心から思った。
またいつか絶対ご飯にいこう。

これも青春だと言ってもいいだろうか。

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