外中法九条

僕がこれから生み出そうとしている曲は、場合によってはとてもデスソース味の強い、黒いシロモノになりかねない。
ケダモノが生み出すシロモノだから当たり前だ。
ひとつの曲に鬱憤やイヤミを詰め込んで何度か踏みつける。そして広がるおぞましい香り。たったの3分間で惨憤喚をお届けすることになる……のか?
世の人は、ハイトーンの奇声に蓋をする。
コウノトリの翼に未来を挿入し、自ら撃ち落とす。
上質な伯爵はパーティー帰りの赤ネクタイと口吻をかわし、路端を掃く。
未来を暗転させる冥王技師曰く、安全は永続する。

僕は世間を信用しない。
それが、異を唱えることを殊更嫌悪するこの世では受け入れられないことだとしてもまあ構わない。
(エラいヒトの洗脳技術の高さについては既に僕がどこかで説明している。別次元の僕ではない。幽霊さんでもない?)
和、とはつまり地平に甘んじること。
僕もアナタもカレもカノジョも地に伏し、まな板の秩序の下で乾き続けること。
思うことをそのまま風に運ばせるのは心地よい。何より、風は僕に請求書を送りつけてこない。ヒトの不粋さを持ち合わせない上に、ヒトより迅速にお届けしてくれる。

なので僕は、風と恋人になろうかと考えた。これはイレギュラーだ。


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