お遍路さん【3日目】その1

今日は、前日から予想していた通りの雨だ。朝は、同宿の方に頂いた金柑で目を覚ます。ビターさと甘さとバランスがたまらない。

宿を出る時に、雨の中をどうやって行くのか聞かれ、「コンビニで買ったレインコートと雨傘で何とかしようと思う」と伝えたところ、カバンのレインカバーを頂いた。別の外国人お遍路さんの忘れ物だそうだ。実はルートとは関係のない方向に、30分歩いてレインカバーを買いに行こうと思っていたので、非常に有り難かった。

まずは、4番札所の大日寺まで緩やかな山の車道を登った。「もし熊が出たらどうしよう。確か動かない方が良いんだよな」と心配しながら、登って行く。

ここのお寺には、沢山の仏像が廊下に沿って飾られていた。よく見ると、それぞれの顔は似ているが、微妙に異なる。表情がいい。色んなポーズをしているから、俺もその時の気分に合わせて真似してみたら力を得られるんじゃないかと妄想したりする。仏像は顔に手を添えていたり、テレビ見るような格好でごろ寝をしていたりするから多様なスタイルがあって面白いと思った。仏像の彫刻も細かくて、表情も芸術的なので、これを制作した人は名人に違いない。

芸が細かいね
廊下に立ち並ぶ仏像の彫刻

5番を終え、6番に向かった。今日は11番まで行く予定だ。道中の民家の放し飼いにされているイッヌを発見。

てくてく歩くと、善根宿らしき物を発見した。「これが、宿に泊まれない時に使わせて貰える噂の宿か」と思いながら、少し覗かせてもらう。そこには、沢山のノートがあり、お遍路さんの御礼が書かれてあった。最近はコロナの影響を受け、廃業してしまった善根宿も多いらしい。

善根宿
沢山のメッセージが残されたノート

6番の安楽寺にやっとの事で辿り着くと、駐車場の看板に書かれた応援メッセージが心に沁みた。おそらく、この看板だけを見ても何も感じられないどころか通り過ぎるだけだろうから、対象が同じであっても、そこに至るまでの文脈が重要になってくるのだろう。

お遍路さん、御苦労さん


同じ事は、この石碑にも言える。私は初めて、「俳句が面白い!」と思えた。それは同じ文脈を昔の人と共有していたからだ。
石碑に書かれた和歌を見てみよう。


和歌の書かれた石碑


「暮れにても 宿がない もずがなく」

いや、めっちゃ分かるー!
そう、私も計画性のなさには自信があるため、宿を取れていない事がしばしばあるのだが、まさにこの絶望感を作者と共有できたのだ。この作者の方が一枚上手だと思ったのは、「もずがなく」の部分。感情を直接的に書くのではなく、その時の空っぽな心に、夕方にもずが鳴いてる、シ〜ンとした様子が伝わってくるし、何よりユーモアセンスがある。「まじやべー」とか、「最悪だ」ではなく、「もずがなく」。ホンマにセンスあるわ〜。

今日はここまで。また、余裕が出たタイミングで書いていこうと思います。ここまで読んでくださりありがとうございました。
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