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16. ふらりと〝意識高い型〟/渡り介護士の見る景色

退職する介護士ばかりいて、新しく配属の介護士がいない。1人当たりの仕事量は更に増していく、この状態を報告、新たに配属をしてもらう様に管理職に物申してみる。

すると、人員配置基準はちゃんと満たしていると回答され対応してもらえなかった。
介護施設には利用者の人数に対して配置しなければならない介護士の人数が決められている様だ。しかし調べてみると、どうやらそれは常勤している介護士の総数が決められているものらしい。

総数は満たされているかもしれないが、必要な時間に必要な人数が確保されていない、それが問題なのである。そんなルールを盾に現場の現状を無視するのかとその時は非常に残念に感じた。

つまりここの介護施設は人手が不足していても、仕事が増えるし増やされていく。そしてその日々の増えていく業務をこなす事と、利用者に対する優しく尊厳のある対応を同時に求めてくる。

しかもこんな難しい問題もやり方は現場に丸投げなのだ。解決できる訳ない問題を誤魔化しているから、現場は流れ作業化が進んでいき、利用者とのコミュニケーションも減って荒れてしまう。

例えば、トイレとお席を往復している認知症利用者。付き添わないと転んでしまい目が離せない。ただ、何度付き添って往復しても毎回、便座に座るだけで何も用事が無いのだ。

ただ何か気になっている様だが、解決もしないので、何度も往復した後に、利用者に話をつけて待ってもらう、そしてようやく他の仕事に取り組める。

すると稀にしか顔を出さない〝意識高い型〟の管理職や専門職の方々が通りかかり、その利用者と笑顔で雑談、話を聴き「トイレ行きたいって言ってるよ〜?」と投げてくる。
利用者の希望をなぜ聞かないのか、尊厳を大事にしようとでも言いたいのだろう。

今度はそちらに説明すると、しょうがないとばかりに自分で動いてトイレへ連れていってくれる人も稀にいたりする。
その後に再度トイレを要求されると
「今、行ったばかりですよ!」と平気で声を張り上げるのも意識高い型である。

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