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17. 誰にもできる訳のない仕事/渡り介護士の見る景色

この様な人たちは、急かされず、たまに顔を出すから利用者に優しくできるのだと思う。
街でご近所さんにたまに会って挨拶しているのと同じで、お互い悪い印象があるわけない。
否、あっても程々で去ってしまえば関係ないのである。

「目が離せない行動を何度も繰り返す利用者にも優しく対応してください。」わかってます。
「その利用者も家族にとっては毎日ご飯を作ってくれた優しい大事なお母さんなんです、大切に接してください。」わかってます。
「そわそわしている利用者は何か不安があるのかも、しっかり話を聞いて安心させてあげて下さい。」わかってます。
「認知症の不思議だと思う行動にも、その人なりの理由があります、理解できる様に努めていきましょう。」わかってます。
「何か勘違いしていると思っても、否定しないで安心できる返事をしてあげて下さい。」わかってます。
利用者に寄り添って対応する事は、大切な事であるのは、理解しています。

しかし、その時に別のやるべき仕事があったら具体的にどうすればいいのだろう。
介護士1名の夕方の時間に、例えば「もう家に帰る!」と怒っている認知症利用者がいた場合。
もちろん帰宅の予定はない。
「帰って夕食を作らないと家族に怒られる!」と勘違いしていて、返事をする私の話も聞かず興奮は止まらない。

対応をするのも大切な仕事だが、その横で他の利用者の配膳すべき夕食が現場に届いている。各テーブルでは決まった時間にしっかり着席して待っている利用者がいる。夕食をちゃんと待ってくれている利用者の食事を配膳してあげたいが、私の隣には興奮していて目の離せない利用者がいる。

1人の利用者に対応し動けない時間があれば、その間1人増えないと物理的に平常時の仕事は進まない。

認知症利用者の対応に時間がかかり、仕事は進まず、他の利用者は待っている。真面目で優しい介護士ほど、待ってる利用者を思い、焦ったり口調が荒くなってしまうかもしれない。

そうなってくると今度は「言葉使いに注意しましょう。」と注意が来たりする。
もちろんそんな事わかっている。この安っぽい注意で指導したと思っている管理職に現場はイライラ、不満が募っていくのである。

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