【毎週ショートショートnote】 会員制の粉雪

季節はずれのかき氷を食べに行きませんこと? と、高嶺さんに誘われ、ほいほいついっていった。

そして、わたしは高嶺さんと南極にいた。

「寒い!」
「南極ですもの」

完全防寒の衣服に身をつつんでいても、高嶺さんは品がある。

「二人とも、長旅、ごくろうさまです」

高嶺さんとわたしは、とある南極基地にいた。なんでも、宿泊施設のある南極基地なのだそうだ。

「世界のお金持ちが、こぞってやって来るのですよ。このかき氷『粉雪』を味わいに」
「もしかして、この氷って…」
「南極の氷ですわ。年々、氷が溶けてますから、会員限定品ですのよ」

あいかわらず、お金持ちがすることは、わからない。

でも、かき氷はおいしそうだ。

2つの氷の器、それぞれに、つつましやかな小さな白い氷の山がある。

氷の粒がとてもキメ細やかで、ひとつひとつが、きらきら輝いていた。

高嶺さんは、一口、かき氷をごついスプーンですくって、口にふくむ。

高嶺さんは、とろけたような笑顔をわたしにむけた。