自作メタフィクション自演 第2話 ひっこし=ソバ
前回までのあらすじ。
喋々(ちょうちょう)=私(地の文)+私+のんびりちゃん=ひとりごと多い!
気になった人は、前回を読もう!
あなたは衝撃の事実を知った。
毎週ショートショートnoteで、丹精こめて書いているキャラクターのひとり、鎌犬(かまいぬ)が同じマンションに住んでいたのだ。
しかも、毎週ショートショートnoteのキャラクターが全員同じマンションに住んでいるという。
なんというご都合展開。
あ、そうそう。あとづけ設定ね。
きみは昨日、ひっこしてきたばかりだから、ソバ配ろうね。
段ボール一箱、いっぱいになるまで買っといたから。
「ソバ多すぎるだろ!」
「これをだれに配るの?」
常識的に考えて、マンションだから、上下左右の家にだね。
まずは、そこだけでいいでしょ。
あんまり登場人物多いと、ややこしくなるしさ。
「あれ? 全員登場すんの無理じゃね?」
なんでさ。
「だって、毎週ショートショートnoteの話、だいたい6グループで書いてるからさ。4箇所まわるとしたら、2グループ会えないじゃん」
あ、それはなんとかするから。心配しないで。
ちなみに、6グループの内訳、全員言える?
「鎌犬と林檎ちゃん。ネコクインテットの5人バンド。探偵ボディビルとバディ。相棒相方。高嶺さんとわたし。祖父母と孫。この6グループだよね?」
正解。全問正解するとは思わんかったわ。
「作者が間違えてどうする」
「まあま、とりあえずソバ配ろう」
「まあ、配るけどさ。おい、地の文」
なにさ。
「前みたいに、つぶやきと記事を大量にいれるな」
おけおけ。じゃ、今回は全員の登場人物に会うことだし、毎週ショートショートnoteで初登場した記事をいい感じに、はってくわ。
それでいい?
「いいよ。じゃ、ソバ配るわ」
あなたはソバを4個入れた袋をもって、上の階へ行くことにした。
1階ていどだったので、エレベーターには乗らず、階段で4階へのぼる。
途中、階段を下りてきた男性に会釈をして、目的の部屋に到着した。
インターホンを
「待て」
なに?
「階段で遭遇した男性はだれだ?」
あー、うん。あとで伏線回収するから、今は気にしなくていいよ。
「あっそ、わかった」
あなたは、インターホンを押した。
ゆったりとした足音が近づき、出てきたのは、背が高く、プラチナブロンドの短い髪をし、ごついピアスを耳につけたイケメンだった。
「下の階の人?」
「はい。喋々(ちょうちょう)です。最近、ひっこしてきたので、ひっこしソバを持ってきました」
「へえ、ありがとう。そうそう、鎌犬がさ。さっき言いすぎたこと気にしてるんだけど。別に大丈夫だよね?」
「はい。まさかそんなに壁が薄いとは思ってなかったので」
「鎌犬もうるさかったら、私に言ってくれたらいいからね」
「いっしょにお住まいなんですか?」
「ううん、最近になって、同じマンションに住んでるってわかってさ。放課後に鎌犬の家に集まって、遊んでんの。トランプとかで」
「林檎さーん! つづきやりましょうよー!」
「ごめん! ちょっと待って! ごめんね。理香ちゃん怒ってるんだよ。鎌犬が私に出ろって言ったからさ。もう、戻るね。ソバは、ちゃんと鎌犬にわたすから」
「いえ、ありがとうございます」
「それじゃあね」
扉が閉まり、あなたは林檎ちゃんの容姿の感想を言う。
「ふつーに、イケメンだったわ」
「ビジュアル系設定なかったっけ?」
「たぶん、鎌犬のビジュアル系のイメージが貧弱なんだと思う。あいつ、そういうやつだし」
「身も蓋もないなあ」
あなたはエレベーターで二階下へ向かう。
上から降りてきたエレベーターに乗っていたのは、二人の男性だった。
仲がいいのか、なにかの計画を立てているようだ。
「何日ぐらい泊まれるんだ?」
「かなり長期間だ」
「え、めずらしいなあ」
「俺も驚いてる」
あなたはエレベーターを降りる。
「今の相棒と相方じゃない?」
よくわかったね。
「いや、わかるだろ。宿泊の話をしてるんなら、彼らしかおらんわ」
「そうなの?」
「うん。相棒相方は、旅行中の家に不法侵入して宿泊するやつらだから」
「えっ、すっごい悪者じゃん」
「うん。ダーティなキャラクターは、一人いると便利だからね」
「二人組じゃなかった?」
「言葉のあやだから、気にしないで」
相棒と相方はどんなだった?
「やっぱし、相棒の方が背が低かった。そんな気はしてたけど」
「けっこう、人気のキャラなんだよね?」
「うん。私の毎週ショートショートnoteのなかでは、上位にくいこんでる」
仲よさそうだもんねー。
「そうだね。ほら、目的地ついたから、ナレーションして」
はいはい。
あなたの部屋の真下にあたる2階の部屋の前にたどりついた。
インターホンを押すと、ばたばた、きゃーという音ともに、勢いよく扉が開かれた。
「ごめんなさい! ハンコ持ってきました!」
出てきたのは、探偵ボディビルのバディだった。
「あ、宅配便じゃなくて。上にひっこしてきた喋々(ちょうちょう)です。これ、ひっこしソバです」
「え! ありがとう。うわ、うれしー。ソバなんて、久々に食べるかも。ねー、ボディビル! お昼、ソバでもいいー!」
「いいわよー!」
「わかったー! 本当にありがとう。私、おでかけしてることが多いけど、また会ったら、声かけてね。じゃっ、ばいばい!」
開けたときと同じ勢いで、バディは扉を閉めた。
「嵐みたいな子だな…」
「でも、可愛い子だったね」
バディちゃんは、可愛い設定だからね。か弱くみえるけど、タフだと思うよ。
「まー、探偵の助手なら、そうだろうな」
「ボディビルは、どういう人なの?」
ボディビルダーな探偵だよ。
「まあ、それであってるわ」
「うわ、想像つかないなあ」
事件は解決してるし、アフターケアもばっちりだから、優秀な探偵だよ。
「事件は書いてないけどね。あの字数じゃ無理」
「毎週ショートショートnoteって、字数制限あったの?」
「ない。私が410字で、しばってるだけ」
まあ、がんばって書いて下さい。
「はいはい、ありがと。じゃ、あとニ軒行こうか」
あなたは、階段をつかって三階にもどり、自分の家の左隣の家のインターホンを鳴らした。
『どちらさまかしら?』
インターホンから、かろやかな声が聞こえる。
「右隣に引っ越してきた喋々(ちょうちょう)です」
自己紹介の途中で、扉が開いた。
「すみません。待たせてしまって。お隣にこしてきた方ですか?」
「そうです。はじめまして、これ、ひっこしソバです」
『あら、どうしてソバなのかしら?』
「傍らのそばと、食べ物のソバをかけてるんですよ。ひっこしのときに、ソバを配ることもあるんです」
『おもしろいですわね』
「そうですね。ソバ、ありがとうございました。失礼します」
扉が静かに閉まった。
「男か女か、わからなかったなあ…」
「高嶺さんは女性だよね。きれいな高い声だったし」
まあ、「わたし」さんの性別は気にしなくても、問題ないでしょ。
「いちおう、決まってはいるんだけどね」
え、どっち?
「教えるわけないだろ。ばーか」
うわ、ひどっ。ひどひどっ!
ふんだ。教えてくれなくても、別にいいもんねーだ!
「幼稚な喧嘩は、やめようよ」
あなたと私は、のんびりちゃんに、さとされた。
まったく、その通りである。
「あと、一軒だから、とっとと配ろう」
うん。あなたは、自分の家の右隣にある家のインターホンを押した。
「はいはーい。ちょっと待ってくださいね」
インターホンからでなく、扉の奥から声が聞こえた。
しばらくしてから、扉が開いた。
初老の男性だった。
「はじめまして。左隣にこしてきた喋々(ちょうちょう)です。これ、ひっこしソバです」
「ご丁寧にどうも。私は山上です」
「おじいちゃーん! 絵が描けたから見てー!」
「こらこら、おじいちゃんは忙しいから、あとでにしましょうね」
山上さんの足元に小さな女の子がやってきた。つづいて、おばあちゃんらしき女性もやってくる。
「このひと、だあれ?」
「左隣の家にひっこしてきた喋々(ちょうちょう)さんだよ」
「蝶々! 私、蝶々、だーい好き!」
「ちょうちょ、じゃくて、ちょうちょうじゃなかったかしら?」
「あ、はい。喋る二つで、喋々(ちょうちょう)です」
「あー、喋々しいって感じなんですか?」
「そんな感じですね」
山上さん(おじいちゃん)は、喋々(ちょうちょう)の由来もぴたりとあててしまう。
まあ、山上さんなら、わかるでしょうね。
「ねえねえ、蝶々さん。いっしょに遊ぼう!」
「こらこら、だめよ。まずは予定を聞かないとね。これから、お暇かしら?」
「いや、日をあらためて招待しよう。すみませんね。明日はお暇でしょうか?」
「たぶん朝から暇です」
「よかった。孫はマンションじゅうの人と友達になるのが夢でして。明日、昼頃にこちらに、おこしください。昼ご飯をごちそうします」
「あ、ありがとうございます」
「蝶々さん、またね!」
「はい、また」
ぱたりと扉が閉まった。
あなたは家へ帰ろうとすると、うしろから、どん、どん、どんと、何かを叩く音がする。
ふりむくと、男四人組のうちの一人が山上さんちの右隣にある家の扉を殴るようにノックしていた。
「おい! 起きろ、川井! 集合時間、すぎてっぞ!」
「こら! 扉をたたかないの!まわりのひとに迷惑でしょ!」
「さっき、イヨさんに連絡したから、大丈夫っすよー」
「イヨさんって…ああ、川井の兄ちゃんか」
扉をたたいていたのは、小番(こつがい)。小番を注意したのは、リーダーの猫屋敷(ねこやしき)。イヨさんに連絡したのは狩田(かりた)。最後は尾出幸次(おでこうじ)である。
彼らはネコクインテットという五人組バンドを組んでいる。おそらく、メンバーの一人が遅刻したので、心配して見にきたのだろう。
小番は猫屋敷に頭をさげた。
「すんません!」
「わかったなら、いいよ。次は気をつけてね」
「はい!」
扉が開き、なかから人が出てきた。
川井いなと、その兄である川井イヨだ。
川井いなは、機嫌悪く、ぼそりとつぶやいた。
「うるさい」
「なんだと!」
「まー、まー、喧嘩はやめるっすよ。いなちゃん、おはようっす」
「はよ…」
「すみません。妹がご迷惑をおかけしまして」
「イヨさんは、悪くないっすよ!」
「悪いのは、ドアたたいたこづかい」
「こ・つ・が・い!」
「落ち着けって、人が見てるぞ」
余計な一言を言ったのは、非常に影がうすい尾出幸次である。
「あ、こんにちは…」
「こんにちはー。ここのマンションの人ですか?」
にこやかに猫屋敷が話しかけてくる。
「はい。引っ越してきたばかりで」
「ここ、変わった人たちばっかりだけど、いいマンションですよ。これから、仲良くしてくださいね」
「あ、はい」
「さ、みんな! 新曲つくるよ! いなちゃん忘れ物ない?」
「大丈夫」
「イヨさん。お礼はまた、後日」
「お礼は新曲をいちばんに聞く権利がいいですね」
「もちろんです! 絶対聞かせます!」
「うっさい」
「なんだと!」
「まー、まー。あ、イヨさん。明日の飲みは夜10時、俺の部屋でー」
「うん、わかったよ」
「それでは、失礼します」
尾出幸次が場をしめて、五人組のネコクインテットはぞろぞろと、あなたとは反対側へと歩いて行く。
嵐がすぎさってから、あなたはイヨさんに軽く会釈し、自分の家へと帰った。
我が家にはいり、ばたりと扉を閉め、あなたは玄関でひざをつく。
「疲れた…」
「おつかれー」
「整理しよう。私の真上には鎌犬(かまいぬ)くんが住んでる。真下はバディ。左隣が「わたし」で、右隣が山上さん。さらに右隣が、川井いな。ここまでいい?」
「大丈夫だよー」
んで、伏線の男性は、だれかわかった?
「3階から4階へ階段つかってたときに、すれ違った人ね。川井イヨでしょ」
正解!
毎週ショートショートnoteのメンツは、これで全員でしょ。
「まあ、そうだけどさ…。っていうか、山上さん、しれっと登場してたな」
「気のいいおじいちゃんだったね」
「そういえば、約束したような…」
伏線:明日の昼、山上さんちで、ただ飯を食う。
「言い方!」
「そうだよ。言い方がよくないよ」
ごめんごめん。次から気をつけると思うよ。
「なんで自信ないんだよ」
いやさあ…。
わんこそば大会しようみたいなつづきにしたかったのに、伏線が邪魔しちゃってるからさあ…。
「どうでもいいわ。それより、箱いっぱいのソバどうすんだよ。食えねえわ」
「喋々(ちょうちょう)ちゃん、家では口調が荒いんだね」
箱いっぱい…。
そうか、その手があったか。
えいっ!
「おい、なにした…ちょっと待て。さっきまで、普通のソバだったのに、パッケージにわんこそばって書いてあんだけど」
うん。これで、わんこそば大会できるね。
明日、山上さんに頼んで、わんこそば大会開こう。
昼からって言ってたけど、今からお願いしてくれば、きっと、ノってくるよ。
「はあ!?」
「いいねえ。面白そう」
「いやいやいや。もう、今日は全員の顔見ただけで、おなかいっぱいだから。また、頼みには、いけないって!」
あなたは、山上さんの家まで行き、わんこそば大会をしないかと、山上さんに提案した。
「いいですね。面白そうだ。準備は、こちらでしますよ」
これで、山上さんに任せれば大丈夫。
明日、まだかなー!
「楽しみにすんな! というか、ナレーションで、すっとばすな! 私の苦労を軽く書くな!」
えー、時間すっとばすのが、ナレーションの役目…。
そっか、第2話終わらせたら、第3話になるね。
じゃ、今日はこれでおしまーい。
「待て待て待て!」
次回、第3話ひっこしわんこそば大会。やっぱり、わんこそばは、食べた数を競わないとね!