【毎週ショートショートnote】 サイコの鶏唐

「林檎さーん! これ、食べましょうよ」
「ええ…、なになに。サイコの鶏唐? ちょっと怖いね」
「怖くないですよ。今、はやってる七色のチーズがかかってる、鶏の唐揚げなんです」
「なんで、サイコなの?」
「本当はサイケだったんですがね…。看板が手違いで、サイコになってしまって…」
「理香ちゃん、買ってあげようか」

林檎さん、やさしい…。
私は感動しながら、大きな声で注文をする。

「おじさん、このサイコの鶏唐、二つください!」
「はいよ! 唐揚げ二つ!」

おじさんの声に反応して、出てきたのは、大盛りの鶏唐に、七色のチーズがかかった皿を持った……犬先輩?

なんでこんなところにいるの。

「好きです。僕といっしょに、唐揚げ食べませんか?」

犬先輩は、林檎さんにサイコの鶏唐を差し出した。

「私でいいのか? 鎌犬?」



静寂。



「うわ、うわうわ。待って待って。林檎ちゃんなの? えええええ」
「おい、告白、撤回するのか?」
「……しません」

林檎さん、すごく笑顔だ。