短編|向日葵と銃弾【第一話】
静寂が支配する真夜中の街路。この物語の主人公であるフョードルは、硬いレンガ造りの地面から伝わってくる氷のような冷たさに辟易する。冬の寒さが苦手な人は多いことだろう。この地、モスクワではお湯を使うことができたり、暖炉を設置しているのも、一定の裕福な家庭に限られ、冬は深刻な問題なのだ。
フョードルもその一例から漏れず、悴んだ手をロングコートの腹部あたりについているポケットへと押し込む。フョードルの仕事は殺し屋だ。指先の硬直は命のやり取りをする際に障害となりえる。ポケットの中