#一歌談欒 Vol.3 数万年後の地球

原井さん(@Ebisu_PaPa58 )の企画の参加原稿です。今回はなぜか詩(のようなもの)になってしまいました。


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この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい/笹井宏之


寝つけない夜に

僕は数万年後の地球を想像する

滅亡寸前となった人間は

森の奥に集落をつくって暮らしている

損得にばかり心を奪われ

自然を破壊し

お互いを傷つけることを止めず

知恵も技術も役に立たないどころか

自らの首を絞めるような結果となり

かつての繁栄は見る影もなく

わずかな物資でどうにか食いつないでいる

免疫力が落ちていて

外出時に肌をさらすと危険なので

帽子、眼鏡、マスクに手袋が欠かせない

僕は丈夫で安価な軍手を売ろう

きっとみんなに重宝がられるはずだ

人間はまた己の歴史を闇に葬り去ろうと

あらゆる書物を焼き払ってしまった

思想哲学は弾圧され

言論の自由は奪われ

新たな本を書くことも売ることも許されない

しかし僕は必死で貴重な本を守り

現在の人間の様子を

ひそかに書き留めている

いつか家を建てると見せかけて

まちがえて図書館を建ててしまおう

そこでは望めばいつでも誰でも

本を通して過去の人間たちに出会うことができる

利益を得ようなんて思わない

過去の人間と未来の人間のために

できることをするだけだ




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