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一生見てたい/作りたい女と食べたい女

滋味深くやさしく、しみじみと美味しいものをいただくと、ああこれ、永遠に食べていたい、点滴のようなものでずっと口内に送り込んでいたい、と思うことがあります。

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」はわたしにとってその、ドラマ版と言えます。

料理が大好きだが、ひとり暮らしで少食のため、もっとたくさん作りたいと日頃から感じていた野本さん(比嘉愛未)。同じマンションに住む、豪快な食べっぷりの女性・春日さん(西野恵未)との交流が始まり、2人で料理を作って食べることで関係を深めていく。

公式HP【ストーリー】より

シーズン1では「仲良しのご近所さん」という間柄だったお2人が、どうもお互いに惹かれあっているらしいという展開を感じさせつつあるシーズン2、野本さんと春日さん双方のお隣(つまり2人の間の部屋)に、南雲さんという女性が引っ越してきます。

一昔前のドラマだったならば、このタイミングで登場した南雲さんは、かませ犬、あるいは敵役としての役割をあてがわれたことでしょう。

かませ犬、よく見ましたよね。

例えば、朝ドラヒロインの幼馴染。
子どもの頃からずっとヒロインのことを想っているのに全く相手にされない。
ヒロインの素敵なお相手を引き立て、魅力を際立たせる為だけに登場する人物(ときどきその哀愁から人気が出る)。

あるいは、敵役。

トレンディドラマによく登場した、例えば伝説の「おでん女」のように、これ以上ない最悪のタイミングで現れては2人を翻弄し仲違いさせたり、ときに裏目に出たり、いずれにせよドラマに濃厚なスパイスを投下し、盛り上げる役どころ。

でも南雲さんは
どちらの役回りでもありませんでした。

野本さんの同僚、佐山さんや
SNSで知り合った矢子さんもそう。

否定したり遮ったりバカにしたり自論を展開したりせずに話を聞いて、そっと背中を押してくれたり、一緒に喜んでくれたりするのです。

やさしい。

やさしすぎる。

そこに嫉妬や、やっかみは存在しません。
(少なくとも今のところ)

それぞれ異なった事情で傷付き、種類の違う哀しみを内包しながらも、時間をかけて熟成し、人としての温かみに変えている、やさしい人たち。

引き立て役でも盛り上げ役でもなく
それぞれにストーリーのある
思いやりと人間味に満ちた人たち。

血が繋がっているとかいないとか
家族とか友だちとか付き合いの長さとか
そういう括りだけで判断しなくていい。

一緒に過ごす人は
自分で決めていい。

そう肯定してくれるドラマが
地上波で放送される今の時代に
生きていてよかった。

こういう物語をわたしは、一生見てたい。

そんな風に思わせてくれるドラマです。

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