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老いるという事について考える

母は1年くらい前から、1の事を100くらにして訴える事が多くなった。自分の子供には言いやすいのもあるのだろう。
訴えてくる事に対してなるべく冷静に判断して、一般的に考えられるだろう解決策を提案するようにしている。
言ったその時には、ふんふん、と納得いかないような顔をしながら、そんなもんなの?最近の考え方は・・ってな感じの返事をする。
あー全く納得してないな、とすんごく感じるんだけど、仕方ない。自分の子供が親に大人びた事を言ってもあまり効果がないのは分かってる。
しかし、1度、母が隣近所の人を巻き込んでしまった事件があり、なぜか私が仲裁に入ることになった。
さぁ、困った。どうにもこうにも、両方の言い分を聞かないといけない。
さらにどっちもかなりのお怒りモードなのだった。
どうして私よ。私だって納得いかないわよ、私まで巻き込まれたわよ、きーー!ってそんな事言ってる間もなく、両者の怒りは最後まで沈まぬまま、その事件は無理やり幕を閉じる形になったのだけど。始終、私は両者の怒りを鎮める事に尽力し、怒りの矛先は時々私にも向いていた。この時はしっかりと私も参ってしまったのだけど、記録に残るような紙類をビリビリに破ることで、私の記憶の奥底に眠らせる事に成功した。この紙はきちんと私が保管しておきますので、と伝えた事に嘘八百つくことで腹いせを満たしたの、こっそりと。怒りには怒りしか生まれないのね、やっぱり。
しかし、そんな事件もなんのその、母の1を100にとらえる傾向は留まる事はなく続いている。
娘が身を寄せているので、母が今のところ面倒を見てくれているのだけど、娘の帰りが遅いと私に電話をかけてくるようになった。
「ちょっと!まだ帰ってこーへんねんけど!」
いや、20時半です・・お母さん。うちでは、門限は特にもうけてなかった事を伝えるとますます納得がいかないようだった。心配ゆえなのは分かるけど、うちでの方針をこんこんと伝えると、親のあんたがそう言うならねぇ・・と不満そうに電話を切った。
2回目、3回目と同じ電話が入るようになり、私もとうとう母に大きく言い返してしまうようになった。ちなみに娘は20代半ばの社会人。
今日は記念すべき5回目の電話。ときめくこともなく、それは姉からの電話で始まった。沈んだ声で、母に娘が今日何時に帰ってくるのかどうか教えてやってくれ、と姉は言った。母よ、とうとう姉にまで手を出すようになったのか・・。やれやれと私は娘にラインをした。当然のごとく、娘はお怒りモードの今日は帰らない文字列を返信してきた。オッケーと軽快に返し、母に電話をかけると電話中ではないか。おお、どこにかけてんだ今度は。不安になりかけるとすぐさま母からの電話がなった。母は、娘本人に電話しちゃった、てへぺろなご機嫌だった。心配が解消されたからだろう。
何回目よこれ、もうやめないと娘が嫌がるよ、と伝えたけど自分が不安になる事に耐えられないのだろうから、やめないんじゃないかなぁ。
こういう騒動が大なり小なり、度々起こると親が老いてきている事を嫌でも実感させられる。親が老いるということは、自分も当然老いてきているということだ。体も当然疲れやすくなっているし、思うように俊敏な動きが確実に若い頃より出来なくなっている。
今日は老いるという事をしばらく考えていた。体の老い、脳の老い、そして心や感じ方の老い。全部をマイナスにとらえるのはとっても残念な事だから、特に心まで老いてしまわないように心がけたい。
ミワアキヒロさんがかつてこんなことをテレビで言われていたのを覚えている。「老いるという事は、歳をとるという事だけでなく、若くてもあることなの。それは心がすさみ、人を見下すようになり、醜くなること。心がそうなる事が老いるということ。そうなれば、若くて綺麗な女性でもくそばばあなのよ」確かそういった内容で、なるほどなぁ、そうだよね。と、とっても感心した記憶がある。そう、年齢が若くても心が老いてしまっているとクソばばあだし、クソじじいなのよ。わかるなぁ。
人に迷惑をかけず、人の役に立つ努力をし、清潔さを心がけ、新しいものを怖がらずに受け入れる。自分の弱さを認め、謙虚さを失わない。
そんなふうに歳を重ねることが出来ればとっても素敵な人生じゃないかしら。心の新鮮さは失いたくないものだよね。

そんな母なんだけど、私は母の事を昔から尊敬している。料理がばちくそ上手いし、可愛いお顔をしてて、年齢より若く見られる。掃除もしっかりするし、いつも何かしら体を動かしている性分なのだ。そして、70後半に突入しても現役で仕事を続けている。父が旅立った時は自分も一緒に行くのだと、とことん周囲を困らせたのだけど、今では死ぬまで働くと、堂々と宣言している。
そんな困ったとこもある母に、老いる意味を日々教えてもらっているような気がした。

可愛いお花の刺繡が入ったブラウスが似合うお婆ちゃんになりたい

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